所得税における「親族」は、民法上の親族と同義です。つまり「6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族」です。似た用語に「扶養親族」がありますが、「親族」のほうが広い概念ですから、混同しないようにしましょう。
INDEX
目次
「親族」とは
所得税法上の「親族」は、民法上の「親族」と同一定義であると考えましょう。本記事の後半で、その根拠を順番に説明しています。
なお、血の繋がりがある親戚を「血族」、結婚によって親戚になった人を「姻族」といいます。具体的には、次の図をごらんください。
民法上の親族
引用
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
上記は、民法における「親族」の範囲です。所得税法には、直接このように書かれているわけではありませんし、民法の規定を借用すると明記されているわけでもありません。
ですから「民法上の定義を、所得税法へ勝手に持ち込んで大丈夫なの?」と疑問に思う人もいるでしょう。本記事では、そんな人も納得できるように、国税庁の説明や裁判例を簡単に紹介しておきます。
国税庁の説明
引用
(前略)……この場合の「親族」とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます(民法第725条)。
このように国税庁も、医療費控除における「親族」について、民法上の定義を借用して説明しています。
ただ、上記の質疑応答事例だけでは根拠として弱いと考える人も、ひょっとしたらいるかもしれません。そこで、裁判例にも着目してみましょう。
過去の裁判例
以下は、最高裁判所の判決文からの引用です。
引用
(前略)……所得税法……(中略)……二条一項三四号に規定する親族は、民法上の親族をいうものと解すべき……(後略)」
所得税法の第2条は、各用語を定義するための条文です(2条1項34号は、下記引用の通り「扶養親族」の定義)。ここでいう所得税法上の親族について、最高裁判所が「民法上の親族とイコールだと考えるべき」と明言したわけです。
引用
扶養親族 居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)……(中略)……でその居住者と生計を一にするもの……(中略)……のうち、合計所得金額が四十八万円以下である者をいう。
今後、これを覆すような判例が出ない限りは、「所得税法上の親族=民法上の親族」と考えておいて問題ないでしょう。
まとめ
所得税法において「親族」は、定義されていません。しかし国税庁や最高裁は、民法上の親族と同義であると解釈しています。つまり「6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族」です。
一方「扶養親族」については、所得税法において明確に定義されています。両者の範囲は、以下のように異なります。
親族 | 扶養親族 | |
---|---|---|
配偶者 | 含まれる | 含まれない |
所得要件 | – | 48万円以下 |
「生計を一にする」の要件 | – | あり |
専従者 | 含まれる | 含まれない |
里子など * | 含まれない | 含むこともある |
*「里親に委託された児童」や「養護受託者に委託された老人」のこと
このように、基本的には「親族」のほうが「扶養親族」よりも広い概念です。どちらも、各種控除の要件などで頻出する用語ですから、混同しないよう気をつけましょう。