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障害者控除とは?対象者の要件や控除額の段階について

更新日: 2024/07/11
障害者控除とは?対象者の要件や控除額の段階について

障害者控除は、障害者本人や家族の税負担を軽減するための制度です。障害の程度が重いほど、税金が少なくなります。この記事では、家族の範囲・障害の程度・確定申告書の書き方に焦点を当てます。

INDEX

目次

    障害者控除とは

    障害者控除の対象となるのは、以下の要件を両方満たす人だけです。

    • 納税者自身か、納税者と同一生計の配偶者または扶養親族であること
    • その年の12月31日において、所得税法上の「障害者の対象」であること

    控除額は、障害の程度や状況によって異なります。障害者(27万円)・特別障害者(40万円)・同居特別障害者(75万円)です。対象者が複数いるときは、そのぶん控除額も上乗せできます。ただし、同じ障害者について、二重に控除を受けることはできません。

    たとえば夫婦で暮らしていて、妻だけが障害者の場合、この障害者控除を夫の所得税に適用したら、妻の所得税には適用できない、ということです。

    控除額と該当者の具体例

    障害者 特別障害者 同居特別障害者
    控除額27万円 控除額40万円 控除額75万円
    • 身体障害者手帳3~6級
    • 精神障害者手帳2~3級
    • 療育手帳 B or C判定
    • 知的障害者
      (中度、軽度)
    • 身体障害者手帳1、2級
    • 精神障害者手帳1級
    • 療育手帳 A判定
    • 知的障害者(重度)
    特別障害者が「納税者自身 or 納税者の親族※」と同居している

    ※ 納税者と生計を共にする配偶者または扶養親族

    うつ病・ADHDなどの精神障害や、知的障害(=18歳未満の発達の遅れ)も、障害者控除の対象です。また、上記の手帳を持っていなくても、控除の対象になる場合があります。これについては本記事の各項目で詳しく説明します。

    ちなみに、相続税を計算する際にも「障害者控除」という言葉が出てきますが、本記事で扱う「所得税の障害者控除」とは似て非なるものです。

    障害者控除は所得控除の一種

    障害者控除のように、ある要件を満たしたとき、一定金額を所得から差し引くことを、所得控除といいます。つまり、障害者控除は所得控除の一種です。所得控除が増えると、下図のように税金が少なく済みます。

    所得税算出のおおまかな流れ

    「同一生計の配偶者または扶養親族」とは

    「同一生計の配偶者または扶養親族」というのは、平たく言えば「納税者が養っている親族」ということです。親族」は、世間一般で言う「家族」よりも対象範囲が広く、どちらかといえば「親戚」まで含むようなイメージで考えてください。

    同一生計の配偶者(以下のすべてを満たす人)

    • 納税者の配偶者で、その納税者と生計を共にしていること
    • 年収が103万円以下であること(給与所得者の場合)
    • 事業専従者に該当しないこと

    配偶者控除と違い、納税者本人の所得に関係なく、同一生計の配偶者が「障害者控除の対象」なら、控除を適用できます。

    扶養親族(以下のすべてを満たす人)

    • 納税者の親族(配偶者を除く)であること
    • 納税者と生計を共にしていること
    • 年収が103万円以下であること(給与所得者の場合)
    • 事業専従者に該当しないこと

    「扶養親族」を詳しく

    扶養控除と違い、16才未満であっても、扶養親族が「障害者控除の対象」なら、控除を適用できます。

    親族(以下のいずれかに当てはまる人)

    • 6親等以内の血族(納税者自身と血の繋がりがある)
    • 3親等以内の姻族(納税者の配偶者と血の繋がりがある)
    • 配偶者(血族でも姻族でもない)

    「障害者」の基準 ‐ 障害の程度が比較的軽い

    「特別障害者」に比べ、その障害の程度が軽い場合には「障害者(27万円控除)」になります。原則としては、障害者手帳を持っている人が対象になりますが、障害者手帳を持っていなくても控除の対象になる場合があります。

    以下のいずれかに当てはまる人が障害者控除の対象になります。

    障害者控除の対象となる人の範囲と具体例

    • 児童相談所などにより、知的障害者と判定された人
      → 療育手帳 B or C判定相当の人
    • 精神保健福祉法の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
      → 精神障害者保健福祉手帳 2~3級の人
    • 身体障害者福祉法の規定により、交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
      → 身体障害者手帳 3~6級の人
    • 満65歳以上で、障害の程度が、前項の「知的障害者」「身体障害者」に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人
      → 「障害者控除対象者認定書」を交付された人
    • 戦傷病者特別援護法の規定により、戦傷病者手帳の交付を受けている人
      → 戦傷者手帳 第4~第6項症の人

    児童相談所などで、知的障害者と判定された人

    知的障害者(18才未満の発達の遅れ)の場合、児童相談所の判定結果や医師の診断書さえあれば、障害者控除を受けることができます。手帳がなくても大丈夫です。

    地方自治体から交付される療育手帳(東京都は「愛の手帳」など、自治体により名称が異なる)を持っている場合は、これを根拠として障害者控除を適用することもできます。等級で言えば、BまたはC判定(名称は自治体により異なる)です。

    満65歳以上で、市町村長等の認定を受けている人

    障害者手帳は、社会復帰を目的として交付されるので、高齢者は交付を受けられないことがあります。その救済措置として、65才以上の高齢者は、各市町村の役所で「障害者控除対象者認定」の申請が可能です。承認されれば、手帳なしで障害者控除を受けられます。

    よくある誤解として、「要介護認定さえ受けていればOK」というものがあります。しかし、要介護認定は、あくまで介護保険法に基づいて行われるもので、所得税法上の障害者とは別物です。「障害者控除対象者認定」の申請を行なってください。

    身体障害者手帳等を申請中の場合

    身体障害者手帳と戦傷者手帳については、「まだ交付を受けていない(=これから受ける)人」も、障害者控除の対象になる場合があります。以下の条件を両方満たせばOKです。

    • 手帳の交付を申請中である人、または交付を受けるための医師の診断書を持っている人
    • その年の12月31日、もしくは判定すべき時の現況において、明らかにこれらの手帳に記載される人、またはその交付を受けられる程度の障害があると認められる人

    「特別障害者」の基準 ‐ 障害の程度が比較的重い

    障害の程度が重い家族は「特別障害者(40万円控除)」として扱われます。こちらも原則として、障害者手帳を持っている人が対象ですが、寝たきりで要介護だったり、成年被後見人であったりすると、特別障害者とみなせることがあります。

    以下のいずれかに当てはまる人が障害者控除の対象になります。

    特別障害者として控除対象となる人の範囲と具体例

    • 精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある人
      → 成年被後見人(「後見登記事項証明書」で証明できる)
    • 児童相談所などにより、重度の知的障害者と判定された人
      → 療育手帳 A判定相当の人
    • 精神保険福祉法の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていて、障害等級が1級と記載されている人
    • 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されていて、障害の程度が1級か2級と記載されている人
    • 満65歳以上で、障害の程度が、前項の「精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある人」「重度の知的障害者」「1級または2級の身体障害者」に準ずるものであり、特別障害者に準ずるものとして市町村長などの認定を受けている人
      → 「障害者控除対象者認定書」を特別障害者の区分で交付された人
    • 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人で、障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人
    • 被爆者援護法の規定により、厚生労働大臣の認定を受けている人
      →「原爆症認定書」を交付された人(「被爆者手帳」ではNG)
    • 12月31日の現況で、引き続き6ヶ月以上にわたって、身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(自ら排便をすることができないなど)人

    「同居特別障害者」の基準 ‐ 特別障害者と同居している

    「特別障害者」が、納税者自身か、同一生計の配偶者か扶養親族との同居を常としている場合、「同居特別障害者」として75万円の障害者控除を受けることができます。

    元々同居していた人が病院に1年以上の長期間入院する場合も、病気の治療のための入院である限り、その入院期間中も「同居」とみなされます。ただし、老人ホームなどに入所して住所変更する場合は、「別居」として扱われます。

    同居 別居
    住所が同じ
    例)病院に長期入院し、退院後は再び同居する予定のとき
    住所が異なる
    例)老人ホームに入所するとき

    「同居」の範囲 – 国税庁

    ちなみに、納税者本人が同居特別障害者として扱われることはありません。

    確定申告書類の記入方法 ‐ 確定申告書

    確定申告の際に、「確定申告書」の第一表に控除額を、第二表に障害者控除の対象になる人の氏名や障害者・特別障害者の種別を記入します。たとえば、納税者の実父が同居特別障害者(75万円控除)で、配偶者の実姉が障害者(27万円控除)のときは、以下のように記入してください。

    第一表 第二表
    令和4年分以降用 確定申告書第一表「障害者控除」 令和5年分以降用 確定申告書 第二表「障害者控除」

    第一表の「勤労学生、障害者控除」の欄に、障害者控除の金額を記入します。今回の例では、障害者1名(27万円)と、同居特別障害者1名(75万円)なので、これを合計した金額として102万円と記入しています。

    もし勤労学生控除(27万円)も同時に適用できる場合は、これも足した金額にします。なお、この記入例では、勤労学生控除を適用していません。
    >> 勤労学生控除 – 個人事業を営む学生向け
    >> 勤労学生控除 – アルバイトをしている学生向け

    第二表は、納税者自身が障害者控除の対象である場合は「本人に関する事項(⑰〜⑳)」の欄に記入します。障害者と特別障害者のどちらかに丸をつけます。

    配偶者や扶養親族に関する情報は「配偶者や親族に関する事項(⑳〜㉓)」の欄に記載します。氏名などを記入したら、障害者欄の該当するほうに丸をつけます。

    ちなみに、所得税の障害者控除を適用して確定申告をしていれば、住民税についても、自動的に控除が適用されます。自分で申告や計算をする必要はありませんが、住民税の場合、障害者(26万円)・特別障害者(30万円)・同居特別障害者(56万円)です。

    確定申告書の添付書類 ‐ 基本的に不要

    基本的に障害者控除の場合、確定申告書の提出にあたって、特別に書類を添付する必要はありません。国税庁は、添付書類を以下のように示しており、障害者手帳や各種証明書については、何も記載がありません。

    国外に住んでいる親族について障害者控除を適用するときだけ、「親族関係書類」と「送金関係書類」を添付する必要があります。

    国外に住んでいる親族についての障害者控除の添付書類

    まとめ – 障害者控除の重要ポイント

    障害者控除を受けるには、納税者自身か親族の誰かが、障害者手帳を持っていることが基本的な前提です。ただし、お住まいの自治体で「障害者控除対象者認定書」を取得するなど、要件を満たせば、手帳なしで控除が適用できる場合もあります。

    障害者控除のポイント

    • 障害者(27万円)、特別障害者(40万円)、同居特別障害者(75万円)
    • 納税者自身が障害者の場合、控除の対象になる
    • 同一生計の配偶者や扶養親族が障害者の場合も、控除の対象になる
    • うつ病やADHDなどの精神障害でも、条件を満たせば控除の対象になる
    • 確定申告の際、障害者手帳などは添付しなくてよい

    寝たきりの人については、要介護認定を受けているだけでは、控除が受けられないので、必ず市町村の役所に申請をしてください。

    障害者手帳なしで控除が受けられるケース

    • 後見人制度にもとづいた成年被後見人がいる場合
    • 知的障害者の判定や診断を受けている場合
    • 障害者控除対象者認定証明書を持っている場合

    身体障害者手帳などについては、その年の12月31日の時点で、「手帳の申請は済んでいるが、まだ交付を受けていない」「医師の診断書はもらっていて、いつでも申請可能だが、まだ申請していない」という人も、障害者控除を適用できます。

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