小規模企業共済等掛金控除とは?

更新日: 2020/08/28
小規模企業共済等掛金控除とは?

個人事業主向けに「小規模企業共済等掛金控除」についてまとめました。小規模企業共済等掛金控除とは所得控除のひとつで、対象の共済制度や個人型年金の掛金を全額控除できます。本記事では「小規模企業共済」と「iDeCo」を中心に紹介しています。

INDEX

目次

    小規模企業共済等掛金控除とは

    対象の共済制度や個人型年金などの掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」としてその年に支払った全額を所得から差し引けます。控除額が大きいほど課税所得が少なくなり、節税につながります。ちなみに掛金とは、支払う保険料のことです。

    所得税算出のおおまかな流れ

    共済制度や個人型年金は、いわば個人事業主にとっての「退職金制度」。支払う掛金に控除が適用されるので、節税をしながら貯蓄ができるというわけです。

    小規模企業共済等掛金控除の対象

    1. 小規模企業共済法に規定する共済制度の掛金
    2. 確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金
    3. 心身障害者扶養共済制度の掛金

    多くの個人事業主に関係するのは、①に該当する「小規模企業共済」と、②に該当する「個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)」の2つです。

    すべての国民が加入しなくてはならない「国民年金」や、民間の保険会社と契約する年金保険などは、小規模企業共済等掛金控除の対象ではありません。ほかの所得控除の対象です(詳しくは後述)。

    「小規模企業共済」- 個人事業主向けの退職金制度

    独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営する「小規模企業共済」は、個人事業主向けの退職金制度です(基本的に会社員は加入不可)。事業の廃業に備えて、生活資金を貯蓄できます。加入者数は、全国で130万人以上にのぼります。

    積み立てた掛金はたいてい廃業時に引き出しますが、途中解約も可能です。ただし、加入してから20年未満のうちに解約してしまうと元本割れ(受け取れる金額が積み立てた金額よりも少なくなる)をしてしまいます。

    小規模企業共済の積み立てイメージ

    掛金は毎月1,000~70,000円で設定でき、500円単位で増減の変更ができます。掛金を変更できる回数に制限はありません。

    掛金は1年分まで前納OK

    小規模企業共済の掛金は前納もできます。前納した分も控除が適用されるので、今年は利益が大きくなってしまったという年に前納すれば、節税につながります。また、前納すれば支払った分の0.09%に相当する分を「前納減額金」として還付してくれます。

    低金利の貸付制度が利用可能

    小規模企業共済に加入すると、掛金の範囲内で貸付(資金の融資)を受けられます。「一般貸付制度」なら、基本的には積み立てた金額の7~9割を借り入れできます。利率は年1.5%と、ほかの金融機関と比べると低金利です。

    「個人型確定拠出年金(iDeCo)」- 自分で運用する私的年金制度

    確定拠出年金は、個人型と企業型の2種類にわかれます。個人事業主が加入できるのは個人型で、通称「iDeCo(イデコ)」です。20歳以上60歳未満のすべての人が加入でき、加入者数は100万人を突破しています。

    iDeCoは、国民年金基金連合会が運営している私的年金の制度です。投資信託や定期預金などの「運用商品」を自由に組み合わせて運用します。小規模企業共済とは違い、投資の側面があるので、運用方法によってはリスクが高くなります。

    iDeCoは運用によってハイリターンも期待できる

    個人事業主なら、毎月5,000~68,000円で掛金を設定できます(会社員の場合は最高23,000円)。掛金の変更は年1回のみ、1,000円単位です。

    掛金の引き出しは60歳から

    iDeCoの場合、掛金の引き出しは加入者が60歳になるまで行えないのが残念なポイント。ただし、加入者が死亡したり高度障害を患ったりしたときは、例外的に引き出すことができます。

    加入時&運用時に手数料が発生する

    iDeCoは、加入時や運用時に手数料がかかります。申し込みを行う金融機関によって、手数料の金額はまちまちなので、加入時は注意しましょう。ちなみに小規模企業共済なら、手数料はかかりません。

    小規模企業共済とiDeCoの比較

    小規模企業共済と個人確定拠出年金(iDeCo)の特徴を比較しました。将来受け取れるお金を積み立てるという意味では、どちらも似ている制度です。ただ、小規模企業共済は「退職金制度」、iDeCoは「私的年金の制度」の側面が大きいです。

    個人事業主向け比較表

    小規模企業共済 個人型確定拠出年金(iDeCo)
    掛金 1,000~70,000円/月 5,000~68,000円/月
    掛金の変更 500円単位で自由に変更可能 1,000円単位で年1回だけ変更可能
    掛金の
    受取時期
    制限なし 60歳から
    途中解約 可能(20年未満の場合は元本割れ) 基本的に不可能
    対象者
    • 個人事業主など
    • 個人事業主
    • 会社員など
    手数料 なし あり(加入時・運用時など)
    前納制度 あり なし
    貸付制度 あり なし
    運営 独立行政法人
    中小企業基盤整備機構
    国民年金基金連合会

    小規模企業共済の場合、定期預金よりも高い利率で安定して将来に対する貯蓄ができます(定期預金は高くても0.2~0.3%程度のところ、小規模企業共済は基本1%)。また、貸付制度があるなど、事業資金の借入れができるメリットもあります。

    iDeCoの場合、定期預金や投資信託などの様々な選択肢から、自分で運用方法を選ぶことになります。選択肢によっては元本割れのリスクが高くなる分、より多くのリターンを期待できます。

    個人事業主はどちらか片方だけの利用もできますし、両方利用してもOKです。両方の制度を利用する場合、最高1,656,000円(小規模企業共済 70,000円 × 12ヵ月 + iDeCo 68,000円 × 12ヵ月)を小規模企業共済等掛金控除として年間所得から差し引けます。

    小規模企業共済掛金の仕訳例 – 支払った掛金の記帳方法

    小規模企業共済やiDeCoの掛金は、事業に関係のない個人的な支出に該当するので、帳簿づけは行わなくてOKです。ただ、事業用の口座から掛金を振り込んだ場合、帳簿と預金残高の金額を合わせるため、帳簿づけをします。帳簿づけの際、勘定科目は「事業主貸」を使いましょう。

    たとえば、「小規模企業共済の掛金10,000円(5月分)が、事業用の銀行口座から口座振替された」ときは、以下のように仕訳します。

    複式簿記の記帳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月18日 事業主貸 10,000 普通預金 10,000 小規模企業共済
    の掛金(5月分)

    確定申告の際に青色申告65万円・55万円控除をねらう場合は、上記の「複式簿記」で帳簿づけします。「単式簿記」の記帳例は、下記のとおりです。

    単式簿記の記帳例

    日付 事業主貸 摘要
    20XX年5月18日 10,000 小規模企業共済
    の掛金(5月分)

    >> 単式簿記と複式簿記の違い – 簡易な簿記と正規の簿記

    控除の申告 – 確定申告書Bの記入例

    小規模企業共済やiDeCoなどの掛金について控除を受けるには、確定申告で提出する書類に控除額を記入する必要があります。「小規模企業共済等掛金控除」はその年の掛金を全額控除にできるので、支払った金額をそのまま記入します。

    確定申告書Bの記入例

    第一表 第二表
    令和元年分以降用 確定申告書B 第一表「小規模企業共済等掛金控除」 令和元年分以降用 確定申告書B 第二表「小規模企業共済等掛金控除」

    確定申告の書類を提出する際は、一緒に「掛金払込証明書」も添付します。大抵の場合、小規模企業共済は11月頃、iDeCoは10月頃に証明書が郵送されます(納付状況によって発送時期は異なります)。なお、e-Taxで電子申告をするなら証明書の添付は不要です。

    小規模企業共済掛金の「払込証明書」イメージ

    小規模企業共済掛金の払込証明書

    小規模企業共済等掛金控除に該当しないもの

    「小規模企業共済等掛金控除」の対象は、法的に定められています。「共済」の名がついていても、控除の対象とは限りません。たとえば、「JA共済」や「コープ共済」は保険会社が提供する保険と同じ扱いのため、それらの掛金は「生命保険料控除」の対象となります。

    年金保険の種類によって該当する所得控除が異なる

    いわゆる年金保険でも、国が運営している国民年金の保険料は「社会保険料控除」が該当します。民間の保険会社と契約する個人年金の保険料の場合は「生命保険料控除」です。

    所得控除 控除の対象
    小規模企業共済等掛金控除
    • 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
    社会保険料控除
    • 国民年金の保険料
    • 国民年金基金の掛金
    生命保険料控除
    • 個人年金保険の掛金(税制適格特約がセットの場合)

    このなかで加入義務があるのは、社会保険料控除の対象である「国民年金」だけ。それ以外は、個人が任意で加入するものです。

    経営セーフティ共済の掛金は「必要経費」

    取引先の事業者が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐのが目的の「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」。この共済制度の掛金は、所得控除ではなく必要経費に該当します。損害保険料」もしくは「支払保険料」といった勘定科目で仕訳しましょう。

    まとめ – 小規模企業共済等掛金控除

    小規模企業共済等掛金控除とは、対象の共済制度や個人型年金の掛金を対象とする所得控除です。この対象のなかでも、個人事業主に人気なのは「小規模企業共済」と「個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)」の2つです。

    小規模企業共済等掛金控除の重要ポイント

    • その年に支払った掛金の全額を控除できる
    • 小規模企業共済とiDeCoは併用することもできる
    • 「小規模企業共済」の場合、前納した分も控除の対象
    • 事業主のプライベートな支出なので帳簿づけは不要
    • もし帳簿づけする場合には「事業主貸」の勘定科目を使う
    • 控除を申告する際は「掛金払込証明書」を添付する(e-Taxでは添付不要)

    個人事業主は厚生年金に加入できないので、国民年金だけでは老後が不安という方は、小規模企業共済やiDeCoを活用しましょう。

    小規模企業共済とiDeCoの簡単な比較

    小規模企業共済 iDeCo
    • 個人事業主向けの退職金制度
    • 掛金は1,000~70,000円/月
    • 500円単位で変更できる
    • 貸付制度や前納制度を利用可能
    • 加入資格が限定されている
    • 途中で解約可能(20年未満だと元本割れ)
    • 運用方法を自分で設定する私的年金制度
    • 掛金は基本的に5,000~68,000円/月
    • 1,000円単位で年1回だけ変更できる
    • 加入時や運用時に手数料がかかる
    • 誰でも加入できる
    • 途中で解約できない

    どちらにせよ、節税をしながら退職金や年金を用意するイメージの制度なので、現役時代の収入をおさえて将来にまわしたい方にオススメです。