2024年12月から、従来の健康保険証が発行されなくなり、「マイナ保険証」への一本化が進みます。マイナ保険証に切り替えた場合と、切り替えなかった場合で、それぞれどうなるのかをわかりやすく解説します。
INDEX
目次
マイナ保険証とは? 従来の健康保険証は廃止!【2024年12月〜】
2024年12月2日から、従来の「健康保険証」は新規発行と再発行ができなくなります。お手持ちの健康保険証は、最長で2025年12月1日まで利用可能です。以降は「マイナ保険証」を使うのが基本となります。
- 「マイナ保険証」とは?
- マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みを「マイナ保険証」という。2021年10月から本格運用が開始。病院や薬局の窓口でマイナ保険証を利用するには、各自マイナポータルなどで登録手続きをしなくてはならない。登録はあくまで任意。
「マイナンバーカードを作らないと、もう病院で診察してもらえないの?」と心配する人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。従来の「健康保険証」が使えなくなっても、新たに配布される「資格確認書」でこれまで通り受診できます。
健康保険証廃止のスケジュールと経過措置
マイナ保険証を持っている人は、病院などにかかる際、マイナンバーカードを持参すればOKです。従来の健康保険証も、カード右上に記載されている有効期限が切れるまでは、基本的にこれまで通り使えます(最長2025年12月1日までの経過措置)。
マイナ保険証の手続きをしていない人には、順次「資格確認書」というカードが発行されます。従来の健康保険証と同じように、病院などの受付で使えるカードです。発行手続きは不要で、保険証の有効期限が切れる前に、対象者へ無料配布されます。
マイナ保険証・健康保険証・資格確認書の違い
マイナ保険証 | 健康保険証 | 資格確認書 | |
---|---|---|---|
券面 (例) |
|||
対象 | 任意で登録した人 | 全員 | マイナ保険証がない人 |
有効期間 | 手続後〜 | 〜2025年12月1日* | 交付後〜最長5年 |
使い方 | 機械で読み取る | 受付に渡す | 受付に渡す |
マイナポータル 連携 |
◯ | △ | ✕ |
* 保険証に記載されている有効期限が2025年12月1日より前の場合は、その日が有効期限。
マイナ保険証を使うには、マイナンバーカードを取得した上で、保険証と紐づけるための登録手続きが必要です。一方、健康保険証や資格確認書は、マイナンバーカードを持っていない人でも使えます。
※ 2024年8月31日時点
マイナンバーカードを持っている人の約80%が、すでにマイナ保険証の登録をしています。ただ、厚生労働省の推計によれば、マイナ保険証を持っている人のうち、実際に活用している人は2割程度にとどまります(2024年8月時点)。
マイナ保険証と健康保険証の違い
マイナ保険証 | 健康保険証 | |
---|---|---|
券面 (例) |
||
対象 | 任意で登録した人 | 全員 |
有効期間 | 手続後〜 | 〜2025年12月1日* |
使い方 | 機械で読み取る | 受付に渡す |
マイナポータル連携 | ◯ | 単独では不可 |
* 保険証に記載されている有効期限が2025年12月1日より前の場合は、その日が有効期限。
病院などへ行く際、手軽に使えるのは「健康保険証」のほうです。窓口で紙のカードを渡すだけなので、スムーズに受け付けができます。マイナ保険証の手続きをした後でも、有効期限内なら健康保険証はこれまで通り使えます。
「マイナ保険証」の登録をすると、マイナポータル連携という便利な機能が使えるようになります。登録さえしていれば、病院などの窓口に「健康保険証」を持参した場合でも、マイナポータル連携は有効となります。
マイナ保険証と資格確認書の違い
マイナ保険証 | 資格確認書 | |
---|---|---|
券面 (例) |
||
対象 | 任意で登録した人 | マイナ保険証がない人 |
有効期間 | 手続後〜 | 交付後〜最長5年 |
使い方 | 機械で読み取る | 受付に渡す |
マイナポータル連携 | ◯ | ✕ |
「マイナ保険証」は、任意で登録手続きをした人だけが利用できます。一方「資格確認書」は、マイナ保険証の登録をしなかった被保険者や、登録を解除した被保険者に配られるカードです。資格確認書は、最長5年間有効です。
「資格確認書」のほうが、窓口での使い勝手は良いです。そのかわり、マイナポータル連携は利用できません。マイナポータルを活用したい人は「マイナ保険証」を使うしかありません(詳細は後述)。
健康保険証と資格確認書の違い
健康保険証 | 資格確認書 | |
---|---|---|
券面 (例) |
||
対象 | 全員 | マイナ保険証がない人 |
有効期間 | 〜2025年12月1日* | 交付後〜最長5年 |
使い方 | 受付に渡す | 受付に渡す |
マイナポータル 連携 |
単独では不可 | ✕ |
* 保険証に記載されている有効期限が2025年12月1日より前の場合は、その日が有効期限。
従来の健康保険証が廃止となり、マイナ保険証の未登録者に発行されるのが「資格確認書」です。資格確認書に切り替わっても、不便になることは何もありません。従来の健康保険証とまったく同じように使えます。
ちなみに「マイナンバーカードは持っているけど、マイナ保険証の登録はしていない」という方にも、資格確認書が交付されます。
マイナンバーカードに健康保険証を紐づけるメリット
マイナ保険証の登録をすると、主に以下のようなメリットがあります。普段あまり病院にかからない人は、少々メリットを感じにくいかもしれません。
- 高額療養費制度の自動適用(一時支払いが不要)
- 引越しや転職後に発行を待たなくてよい
- 診療情報の一元管理、医療サービスの向上
- お薬手帳アプリとの連携が可能
- 確定申告が簡単になる(医療費控除)
メリット① 高額療養費制度の自動適用
高額療養費制度とは、ざっくりいうと、医療費が高すぎる月は一定額だけ負担すればOKという制度です。この自己負担額は、所得や年齢によって異なります。たとえば、70才未満で、所得210万円〜600万円の個人事業主であれば、だいたい10万円程度の自己負担で済むことが多いです。
高額療養費制度を利用する際は、本来ならちょっと面倒な手続きが必要ですが、マイナ保険証があればこれを大幅に簡略化できます。万が一、高額療養費制度を使う機会があれば、マイナ保険証の登録をしておいたほうが便利です。
マイナ保険証あり | マイナ保険証なし |
---|---|
※ 事前に「限度額適用認定証」を取得する方法もあるが、特殊なケースのため割愛。
マイナ保険証がある場合は、最終的な自己負担額だけを窓口で支払えばOKです。一方、マイナ保険証がない場合は、申請書を提出する手間がかかる上に、基本的には高額療養費の分も立て替えて支払う形になります。
メリット② 引越しや転職後に発行を待たなくてよい
転居して住所が変わったり、転職や脱サラで登録情報に変更があったときも、マイナ保険証であれば新しいカードが届くのを待つ必要はありません。届け出などの手続きはこれまで通り必要ですが、お手持ちのマイナンバーカードをそのまま使用できます。
メリット③ 診療情報の一元管理、医療サービスの向上
マイナ保険証を利用すると、過去のレセプト(診療報酬明細書)の情報を提供できます。レセプトとは、会計のときに領収書と一緒に渡される明細書のことです。患者からわざわざ説明しなくても、過去にどの病院でどんな診療を受けたかなどを、大まかにわかってもらえる仕組みです。
「別の病院で診てもらったことを先生に知られたくない」という人は、カードリーダーの受付画面で、診療情報の提供に「同意しない」を選択すればOKです。同意しなくても、保険適用での診療は問題なく受けられます。
ちなみに、救急車で病院に運ばれたときなどは、患者本人の同意が確認できなくても、医師の判断で過去のレセプトを見てもらえます(2024年12月〜)。このときも、基本的にはマイナ保険証で本人確認をします。
引用救急時医療情報閲覧機能により、病院においては、患者の生命、身体の保護のために必要な場合、 マイナ保険証による本人確認を行うことによって、患者の同意取得が困難な場合でも、レセプト情報に基づく医療情報等が閲覧できるようになります。
救急搬送された患者の場合、マイナンバーカードを携行していないケースも多いですから、将来的にはいわゆる4情報(①氏名 ②生年月日 ③性別 ④住所 または 保険者名称)のみでの本人確認も可能となる見込みです。
メリット④ お薬手帳アプリとの連携が可能
マイナ保険証は、スマホのお薬手帳アプリでも活用できます。処方してもらった薬や、過去の健診・予防接種の情報などを自動取得して、アプリに記録できます。
メリット⑤ 確定申告が簡単になる(医療費控除)
マイナ保険証とe-Taxを紐づけると、確定申告の際に、医療費控除の自動入力などが可能です(マイナポータル連携)。家族のマイナ保険証も、まとめてe-Taxに紐づけられます。
ただし、市販薬の購入履歴や、保険証を使わない自由診療の履歴などは、マイナポータルに反映されません。これらのデータは自分で入力する必要があるので注意しましょう。
マイナ保険証に切り替える際の注意点
マイナ保険証の登録をする際は、以下のような点に注意しましょう。
- マイナ保険証が利用できない医療機関がある
- マイナンバーカードの紛失時に健康保険証が利用できない
- 紛失時の個人情報の漏えいリスクが高い
- 過去に行政のミスにより、情報漏えいした事例がある
注意点① マイナ保険証に対応していない医療機関がある
2023年4月以降、すべての医療機関でマイナ保険証への対応が義務化されたものの、対応が追いついていない医療機関もわずかながら存在します。以下の表は、実際にマイナ保険証が使われている医療機関の割合(参加率)です。
病院 | 医科診療所 | 歯科診療所 | 薬局 | |
---|---|---|---|---|
東京 | 97.3% | 86.4% | 81.5% | 95.8% |
全国 | 98.6% | 90.8% | 87.4% | 96.2% |
厚生労働省 ‐ 都道府県別導入状況(2024年8月25日時点)
47都道府県のなかで、トータルの参加率では東京都がワーストです(2024年8月時点)。初めてかかるクリニックや歯医者では、念のため従来の健康保険証も携帯したほうがよいでしょう。
病院側がマイナ保険証に対応しておらず、健康保険証の有効期限も切れてしまっている場合は、以下のどちらかの方法で保険診療が受けられます。マイナンバーカードに加えて、被保険者の資格情報を証明できるものを見せればOKです。
マイナポータルの画面 | 資格情報のお知らせ |
---|---|
※ どちらの場合も、必ずマイナンバーカードとセットで提示する
マイナポータルの資格情報ページをスマホに表示できる場合は、その画面を受付の人に見せれば受診できます。あるいは、2024年の春頃から送付されている「資格情報のお知らせ」という紙でもOKです。
マイナ保険証に対応している医療機関であっても、まれに機械の不具合などでマイナ保険証が使えないケースもあるようです。心配であれば、マイナンバーカードに加えて、つねに上記のどちらかを用意しておくのが無難です。
注意点② マイナンバーカードを紛失したら再発行が大変
マイナンバーカードの再発行には、2〜3ヶ月程度かかる場合があり、もし紛失したらその間はマイナ保険証が利用できません。将来的に、再発行までの期間は10日程度まで短縮される予定のようですが、現時点では実現できていません(2024年10月時点)。
注意点③ 紛失時の個人情報の漏洩リスクが高い
マイナンバーカードは、従来の健康保険証よりも、紛失した際の個人情報漏えいのリスクが高いです。マイナンバーカードには、氏名・生年月日のほか、住所・個人番号(マイナンバー)・顔写真まで載っているため、慎重に扱う必要があります。
とはいえ、個人番号だけでは、細かな個人情報まで調べることはできません。マイナンバーに紐づいた情報にアクセスするには、暗証番号か顔認証が必要です。不正にアクセスすると、カードに内蔵されているICチップが自動で壊れる仕組みとなっています。
注意点④ 過去に行政のミスにより、情報漏えいした事例がある
行政の入力ミスにより、別人の情報がマイナ保険証に登録されてしまったことが、以前テレビなどでもニュースになりました。複数の自治体で同様のミスが相次ぎましたが、現在は確認作業が完了しており、別人の情報が紐づいている心配は今のところないとのことです。
「そうはいっても、またミスするんじゃないの?」と心配な方は、無理に登録しなくても問題ありません。健康保険証の有効期限が切れても、代わりに「資格確認書」が交付されるので、これまでと何ら変わることなく保険診療を受けられます。
マイナ保険証の登録方法をわかりやすく解説
マイナ保険証の登録方法は、以下の3つです。病院などを受診する当日でも、未登録のマイナンバーカードを持参すれば、その場で登録手続きができます。
① 医療機関・薬局 | ② マイナポータル | ③ セブン銀行のATM |
---|---|---|
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ※顔認証が使えるため 暗証番号は不要 |
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ・暗証番号 ・対応機種のスマホ* ・マイナポータル(アプリ) |
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ・暗証番号 |
* マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホ(iPhoneなら7以降)
いずれの方法も、本人の操作のみで手続きは完結します。所要時間は、どの方法も大差ありません。カードと暗証番号を用意して市役所の窓口などに行けば、職員に手伝ってもらうことも可能です(自治体により対応が異なる場合があります)。
登録方法① 医療機関や薬局のカードリーダーを使う
病院などの受付窓口には、だいたいマイナンバーカードを読み取る機械が置いてあります。この機械にカードをセットして、画面の指示通りに操作すればOKです。カードをクリアケースなどに入れている場合は、取り外してからセットします。
登録方法② マイナポータルにアクセスする
対応機種のスマホに「マイナポータル」のアプリをダウンロードします。アプリのログイン画面で4ケタの暗証番号を入力し、マイナンバーカードをかざせばログイン完了です。保険証のボタンをタップして、画面の案内に従って登録すればOKです。
登録方法③ セブン銀行のATMを使う
セブン銀行のATMで、メインメニューからマイナ保険証の登録画面へと進みます。あとは画面の案内にしたがって操作すれば登録完了です。顔認証はできないので、4ケタの暗証番号が必要です。
【補足】そもそもマイナンバーカードを持っていない場合
マイナンバーカードを手に入れる方法は、以下の4通りに大別できます。当然ながら、マイナンバーカードを持っていないと、マイナ保険証の登録もできません。
① オンライン申請 | 役所まで受け取りに行く & 本人確認 |
---|---|
② 証明写真機から申請 | |
③ 郵送で申請 | |
④ 役所の窓口で申請 & 本人確認 | 自宅等に郵送*される |
*「本人限定受取郵便」で、受取時は配達員に本人確認書類を提示する
カードの申請をするには、自分のマイナンバーなどが記載されている「交付申請書」という書類が必要です。この書類は全員に郵送されているはずですが、もし失くしてしまっていても、公式サイトからダウンロードできます。
ただし、交付申請書をオンラインでダウンロードする際は、自分のマイナンバーを入力しないといけません。手元に交付申請書がなく、マイナンバーもわからない方は「④ 役所の窓口で申請」するのがおすすめです。
マイナンバーカードを作成する流れ – 4つの申請方法を分かりやすく
マイナ保険証の使い方 ‐ 受付窓口・マイナポータル
マイナ保険証の登録が完了したら、病院などの受付窓口で健康保険証として利用できます。そのほか、マイナポータルでのデータ連携も使えるようになります。これらの使い方を、順番にわかりやすく解説していきます。
医療機関・薬局の受付窓口で健康保険証として使う
病院などの受付窓口に置いてあるカードリーダーを使います。マイナンバーカードを取り出して、クリアカバーを外し、この機械にカードをセットします。あとは、画面の指示通りに操作すればOKです。
顔認証と暗証番号のどちらもうまくいかないときは、受付の人に頼めば、目視で本人確認してもらうことも可能です(目視モードでの認証)。
お薬手帳との連携 ‐ マイナポータル
アプリによって操作方法は異なりますが、だいたい「マイナ連携」のようなボタンがホーム画面などに表示されています。このボタンをタップすれば、ガイドがスタートします(上図は「EPARKお薬手帳」の場合)。
お使いのスマホが、マイナンバーカードの読み取りに対応していない場合、上記の機能は利用できません。とはいえ、近年の機種(iPhoneであれば7以降)なら、多くのスマホが読み取りに対応しています。
医療費の情報などを確定申告に活用 ‐ マイナポータル
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスして、マイナポータル連携の事前準備をします。「連携する」を選択して進むと、マイナポータルの画面へ遷移するので、そのままガイドに沿って操作すればOKです。
なお、freeeやマネーフォワードの会計ソフトでも、マイナポータル連携で医療費データを取得できます。その場合も、上記と同様、マイナポータル画面から操作をします。
まとめ
- 2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行と再交付ができない
- 経過措置として、上記の日から最大1年間は従来の保険証も使える
- 今後は、基本的に「マイナ保険証」を使うことになる
2024年12月からは、マイナンバーカードを健康保険証として利用するのが基本となります(マイナ保険証)。まだカードを作っていない人は、とりあえず作っておきましょう。
保険証の有効期限が切れたら「マイナ保険証」か「資格確認書」のどちらかが必要です。「資格確認書」は、マイナ保険証の登録をしていない人へ自動的に送付され、従来の保険証と同じように病院などの窓口で使えます。
ちなみに、各自治体が運営する「国民健康保険」に加入している個人事業主の場合は、3月31日や9月30日で保険証の有効期限が切れることが多いようです(自治体によって異なります)。
マイナンバーカードを保険証として使えるようにする方法
① 医療機関・薬局 | ② マイナポータル | ③ セブン銀行のATM |
---|---|---|
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ※顔認証が使えるため 暗証番号は不要 |
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ・暗証番号 ・対応機種のスマホ* ・マイナポータル(アプリ) |
【用意するもの】 ・マイナンバーカード ・暗証番号 |
どの方法も本人のみで登録手続きができ、通常は数分ほどで終わります。受診するついでに病院で済ませるのが一番ラクでしょう。カードと暗証番号を市役所などに持っていけば、職員に登録を手伝ってもらうことも可能です。
ただし、役所での登録手続きについては、日程や場所などが指定されている場合もあるので、事前に市区町村のホームページなどで確認してから行きましょう。