「弥生」「freee」「マネーフォワード」の大手3社が提供するクラウド会計ソフトで、電子申告に関わる機能を比較します。会計ソフトを選ぶにあたって「電子申告の対応状況を重視したい!」という人は、本記事を参考にしてください。
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本記事は2020年時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については下記の記事をご覧ください。
>> クラウド会計ソフトのe-Tax対応まとめ【2022年版】
INDEX
目次
弥生・freee・マネーフォワードの比較
本記事では、下記のクラウド会計ソフトについて、電子申告に関わる機能を比較します。
* 電子申告関連の機能は同じなので、本記事ではまとめて扱います
それぞれの対応状況をざっくり示すと、下表のとおりです。ここで言う「申告データ」とは、国税庁に送信する確定申告書類のデータのことです。
弥生 | freee | マネーフォワード | |
---|---|---|---|
申告データの 作成画面 |
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![]() |
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パソコン で申告 |
△ Windowsなら簡単 |
○ | △ e-Taxソフトが必須 |
スマホ で申告 |
× | ○ | ○ |
主な対応書類 |
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電子申告に関しては、freeeの対応が最も進んでいます。ひとまずfreeeを選んでおけば、ほとんどの人は問題なく電子申告ができるでしょう。ただ、弥生とマネーフォワードも、利用環境が対応状況にマッチするのであれば、大きな不都合はありません。
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上表のような差が生じるのは、会計ソフトで作った申告データを、そのまま電子申告に活用する場合のみ。会計ソフトで申告データを作り、その内容を「確定申告書等作成コーナー」に転記して電子申告を行うなら、どのソフトを使っても大差はない。
>> 個人事業主が電子申告をする方法まとめ
ここからは、電子申告の手順を「申告データの作成」と「申告データの送信」に大別して、それぞれの重要ポイントを詳しく比較していきます。
比較ポイント① 申告データの作成方法・対応書類
どのソフトでも、日頃からキチンと帳簿づけをしていれば、申告データの作成は難しくありません。ただ、作成画面の仕様や細かな対応状況に若干の差があるので、自分に合ったソフトを確認しておきましょう。
【比較表】申告データの作成
弥生 | freee | マネーフォワード | ||
---|---|---|---|---|
パソコンでの作成 | 可能 | 可能 | 可能 | |
スマホアプリでの作成 | 未対応 | 可能 | 可能 | |
対応 書類 |
収支内訳書 | ○ | ○ | ○ |
青色申告 決算書 |
○* | ○ | ○ | |
確定申告書B (第一表・第二表) |
○ | ○ | ○ | |
第三表 | ○ | ○ | ○ | |
第四表 | ○ | ○ | ○ | |
第五表 | × | × | × |
*「やよいの白色申告 オンライン」は非対応
主な提出書類については、3社ともバッチリ対応しています。第五表は修正申告で使うものなので、多くの人は気にしなくてOKです。
弥生の作成画面
パソコン | スマホアプリ |
---|---|
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未対応 |
※画面は「やよいの青色申告 オンライン」のもの
弥生の作成画面では、個々の入力項目に詳しい説明が配置されていて、初心者でも扱いやすい仕様になっています。ただ、スマホアプリは帳簿づけ機能に特化しており、申告データの作成には対応していません。
freeeの作成画面
パソコン | スマホアプリ |
---|---|
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freeeは、パソコンでもスマホアプリでも、○×アンケートのような形式でデータ作成を進められるのが特徴です。スマホアプリは動作がサクサクで、パソコンでの作業と比べても、操作感に遜色はありません。
マネーフォワードの作成画面
パソコン | スマホアプリ |
---|---|
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マネーフォワードは、弥生・freeeと比べて細かな説明が少なく、スッキリした画面で作成を進められます。ただ、スマホアプリで申告データを作る際は、入力項目ごとにいちいち画面が切り替わるのが地味にわずらわしいです。
比較ポイント② 申告データの送信方法
従来、会計ソフトで作成した申告データは、いったん国税庁が提供する「e-Taxソフト」に取り込んでから送信するものでした。しかし現在は、3社ともe-Taxソフトを介さずにデータを送信する機能を備えています(いずれの場合もマイナンバーカードが必須)。
【比較表】e-Taxソフトを介さない送信方法の対応状況
弥生 | freee | マネーフォワード | |
---|---|---|---|
パソコン | △ Windowsのみ |
○ Windows・Mac |
× 未対応 |
スマホアプリ | × 未対応 |
○ Android・iOS |
○ Android・iOS |
この対応状況にマッチしない場合(Macユーザーが弥生で電子申告する場合など)は、国税庁のe-Taxソフト等を使うことになります。国税庁のソフトは使い勝手が良くないので、会計ソフトからデータ送信をする場合と比べると面倒です。
弥生の送信方法(e-Taxソフトを介さない場合)
弥生では、同メーカーが提供する「確定申告e-Taxモジュール」を使ってデータ送信を行うのがラクです(無料)。ただ、現状「確定申告e-Taxモジュール」はWindows版しかないので、Macでは代わりに国税庁の「e-Taxソフト(WEB版)」を使うことになります。
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2021年分の確定申告からは、Macでも「確定申告e-Taxオンライン」を使って、ソフトからそのまま電子申告ができるようになる見込みです。
>>【弥生】Macからの電子申告への対応状況について
freeeの送信方法(e-Taxソフトを介さない場合)
freeeは、各種のOSに対応した「電子申告アプリ」を無料で提供しています。これによって、パソコンでもスマホでも、スムーズに申告データの送信が可能です。freeeのユーザーなら、国税庁のe-Taxソフト等を使う機会はほとんどないでしょう。
マネーフォワードの送信方法(e-Taxソフトを介さない場合)
マネーフォワードには、機能豊富なスマホアプリ版(追加料金不要)があり、そちらにのみ申告データの送信機能が付いています。データ作成はパソコンでもできますが、送信はスマホから行うわけです。なお、国税庁の「e-Taxソフト(WEB版)」を使えば、パソコンからの送信も可能です。
【補足】第三者作成書類の提出省略について
一部の控除証明書など(第三者作成書類)については、「電子申告なら提出を省略してOK」という制度があります。しかし、市販の会計ソフトの申告データで電子申告をする場合は、ソフトによって省略できる書類が異なります。
【比較表】第三者作成書類の省略可否(主な例)
弥生 | freee | マネーフォワード | |
---|---|---|---|
社会保険料控除の証明書 | × | ○ | ○ |
生命保険料控除の証明書 | × | ○ | ○ |
地震保険料料控除の証明書 | × | ○ | ○ |
寄附金控除の証明書 (ふるさと納税の受領証) |
× | ○ | ○ |
小規模企業共済等掛金控除の証明書 | × | ○ | ○ |
住宅ローン控除の証明書 | × | × | × |
基本的に、ここでバツがついている書類は、電子申告をしたあとで郵送提出しなくてはなりません。そのままにしておくと、あとから提示を求められるなどして、結局手間が増えてしまう可能性もあります。
弥生の対応状況
弥生の公式サイトには、下記のような記述があります。現状では書類の提出省略に対応していないので、前述した「確定申告e-Taxモジュール」で申告データを送信する場合は、控除の証明書類をあとから郵送することがほぼ必須です。
引用
第三者作成書類の内容を入力して送信することにより税務署への提出を省略できるものがあります。…(中略)…ただし『やよいの青色申告(白色申告) オンライン』では省略して送信することに対応していないため、確定申告e-Taxモジュールにてe-Taxによる申告を行う場合は、申告後に、該当する第三者作成書類を別途郵送していただけますようお願いします。
freeeの対応状況
※表示される書類は申告内容によって異なる
freeeでは、申告データを作成していくと、最後の確認画面で上図のように表示されます。省略に未対応の書類もありますが、その場合の対処方法は公式サイトのFAQで詳しく説明されています。
マネーフォワードの対応状況
マネーフォワードでは、申告データを送信する際に上図のように表示されます。ただ、公式のヘルプページで、郵送すべき書類を「e-Taxソフト(WEB版)」で確認する方法が紹介されているので、最終的にはそれに従って確認しておくのが安心でしょう。
まとめ
現状、電子申告への対応が最も進んでいるのはfreeeです。ただ、各社の対応状況と自分の使い方がマッチする場合には、弥生・マネーフォワードでも大きなデメリットはありません。
申告データの「作成」に関して注目すべきポイント
「できるだけスマホで作業をしたい」「第三表を提出したい」などという具体的な要望がある人は、下表を参照して、それにかなうソフトを選んでみてください。申告データの作成にかかる手間や難易度は、3社ともさほど変わりません。
弥生 | freee | マネーフォワード | ||
---|---|---|---|---|
作成 画面 |
パソコン | ![]() |
![]() |
![]() |
スマホ アプリ |
未対応 | ![]() |
![]() |
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作成できる 主な書類 |
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申告データの「送信」に関して注目すべきポイント
3社とも、国税庁の「e-Taxソフト」などを介さず、申告データを会計ソフトからそのまま送信する機能を備えています。ただ、利用環境によっては、その機能を活かせない場合もあるので注意が必要です。
弥生 | freee | マネーフォワード | ||
---|---|---|---|---|
そのまま送信 | パソコン | △ Windowsのみ |
○ | × 未対応 |
スマホ | × 未対応 |
○ | ○ | |
e-Taxソフト(WEB版) で送信 |
○ | △ 非推奨* |
○ | |
e-Taxソフトで送信 | △ 非推奨* |
○ | ○ |
*各社の公式情報による
先述のとおり、第三者作成書類の提出省略に関する対応状況も、各社で異なります。「〇〇控除の証明書だけ郵送での提出が必要」というケースもあるので、気になる人はあらかじめ確認しておきましょう。