従業員を雇用している個人事業主が行うべき感染症対策

更新日: 2020/06/08 投稿日: 2020/03/29
従業員を雇用している個人事業主が行うべき感染症対策

本記事では、個人事業主を含む中小事業者ができる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について、一般的なものを紹介しています。個人事業であっても、従業員を一人でも雇用しているのであれば感染症の対策を行ったほうがいいでしょう。

INDEX

目次

    中小事業者に求められる感染症対策とは

    2020年3月19日(木)に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が実施されました。現在の状況から分析した結果をまとめた「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、事業者は従業員の感染予防に努めるようにとの記述もあります。

    そこで、本記事では「従業員のために対策をしたいけれど、何から手を付ければいいかわからない」という中小事業者に向けて、「衛生的な環境の維持」「働き方の見直し」という2つの観点から感染症対策を紹介します。

    なお、新型コロナウイルスで影響を受けた個人事業主に対する救済措置については、次のリンク先で随時更新しています。
    >> 新型コロナで影響を受けた個人事業主への主な救済措置まとめ

    季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの比較

    参考までに、例年の季節性インフルエンザに関する情報と、現時点での新型コロナウイルスの情報を表にまとめておきます。下表は、リスクを考えるための大まかな指標としてご覧ください。

    季節性インフルエンザと新型コロナウイルス(投稿時点情報)

    季節性インフルエンザ 新型コロナウイルス
    (COVID-19)
    主な感染経路 接触感染、飛沫感染 接触感染、飛沫感染
    主な症状 発熱、咳、倦怠感など 発熱、咳、倦怠感など
    ワクチン 存在する 現段階では存在しない
    国内感染者数
    ※1,2
    推定1,000万人
    (年間)
    1,693人
    (3月29日時点)
    国内死亡者数
    ※1,2
    約1万人
    (年間)
    52人
    (3月29日時点)
    基本再生産数
    ※3,4
    2~3 1.4~2.5

    ※1 Q10 – 厚生労働省
    ※2 3月29日時点情報 – 厚生労働省
    ※3 流行抑制のための集団免疫率 – 国立感染症研究所
    ※4 Conclusions and Advice – WHO

    疫病における「基本再生産数」とは、感染者1人から何人に二次感染するかの平均値です。2020年1月時点で、WHOがこの数字を「1.4~2.5」と推定しており、これはその後の実情とも離れていません。このウイルスがまったく未知の感染力をもっているというわけではないのです。

    季節性インフルエンザと比較すると、現時点で国内の被害は小さくおさまっていることがわかります。ただ「なんとなく心配」という従業員もいるでしょうから、精神衛生をケアする意味合いでなんらかの対策をとるのがよいでしょう。

    また、新型コロナウイルスへの衛生対策は、風邪やインフルエンザの予防にもつながります。今年の季節性インフルエンザはピークが過ぎたといえますが、今後も感染の発生数は尾を引きます。

    対策方法① 衛生的な環境の維持

    手軽に実施できて、なおかつ高い効果を見込めるのが、オフィスの衛生環境を整えることです。特にコストパフォーマンスが高い対策としては、以下のような措置が考えられます。

    衛生環境を整えるために有効な措置例

    衛生的な環境を維持するための感染症対策例

    新型コロナを含む感染症対策の基本 – 厚生労働省

    はじめは簡単に実施できるものから行っていくといいでしょう。具体的には、「出社・帰社の際は手洗いを行う」「2時間おきに換気を行う」などが挙げられます。なお、対策のために購入したマスク・消毒用アルコール等の費用は、必要経費として計上できます。

    これらの措置は、もちろん新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザや通常の風邪にも有効です。ちなみに、対策を行わず社内に感染が拡大した場合、安全配慮義務を怠ったと判断される恐れがあります(労働契約法第5条)。

    対策方法② 働き方の見直し

    「換気の悪い密閉空間」「人が密集していた」「近距離での会話・発声が行われた」この3つの条件が重なる場で、これまでクラスター感染(集団感染)が確認されています。

    2020年3月9日に行われた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、満員電車もクラスターになりうるとの言及がありました。満員電車のような感染場所を避けるためには、以下のような方法で働き方を変えるという対策方法が考えられます。

    時差出勤制やフレックスタイム制の導入

    通勤ラッシュを避けて公共の交通機関を利用するためには、時差出勤制やフレックスタイム制を導入するという方法があります。導入によって、比較的空いている時間での通勤が見込めます。

    時差出勤制 一日の就業時間は変えず、始業と終業の時刻を変更する働き方
    フレックスタイム制 一日の就業時間を労働者に委ねる働き方
    (月や週単位で就業時間が定められている)

    テレワークの導入

    テレワークとは、インターネットなどを活用することで時間や場所にとらわれることなく、柔軟に働く勤労形態のことです。「在宅ワーク」のイメージが強いかもしれませんが、ほかにも「モバイルワーク」「サテライトオフィスワーク」などがあります。

    概要 主な就業場所
    在宅ワーク 自宅を就業場所とする働き方。週1~2日の頻度で実施するケースが一般的 ・自宅
    モバイル
    ワーク
    カフェや移動中の交通機関などを就業場所とする働き方。外出が多くても、隙間時間や待機時間に業務が行える ・カフェ
    ・電車や新幹線内
    ・空港のラウンジ
    サテライトオフィスワーク 本拠地のオフィスから離れたところで就業する働き方 ・本拠地以外の自社オフィス
    ・シェアオフィス
    ・コワーキングスペース

    満員電車を避けるという目的では、在宅かサテライトオフィスが有効です。今なら、テレワークを新規導入する中小事業者を支援する制度が設けられています。2020年2月17日~5月31日の間に対象の取り組みを行い、テレワークを実施した労働者が一人以上いれば、助成金を受け取れます。
    >> 新型コロナ感染症対策のためのテレワークコース – 厚生労働省

    すでに導入済みの場合、上限回数や対象範囲の拡大を

    フレックスタイム制やテレワークなどをすでに導入している場合は、その上限回数や対象者などを拡大する方向で見直しするとよいでしょう。これらの導入は、感染症の対策としてだけでなく、従業員のセルフマネジメント促進につながる効果も期待できます。

    従業員に感染の疑いが見られたら

    厚生労働省は、感染した可能性を考慮すべき症状として、以下のように公示しています。どちらかに該当する従業員がいたら「帰国者・接触者相談センター」に電話させることも検討しましょう。そもそも、一般的に感染症の恐れがある場合には、安全が確認できるまでは休ませるのが無難です。

    以下の場合には、最寄りの保健所等にある「帰国者・接触者相談センター」に電話で相談しましょう。

    1. 風邪の症状や37.5度以上の熱が4日以上続く
    2. 強いだるさや息苦しさがある
      >> 新型コロナ感染症についてのよくあるお問い合わせ – 厚生労働省

    なお、重症化しやすい高齢者や基礎疾患を有している人、妊娠をしている人は上記のような症状が2日程度続いたら相談するようにとも記載されています。ちなみに「高齢者」の年齢ですが、今回のケースにおいては65歳を過ぎたらあてはまると考えてよいでしょう。

    そもそも厚生労働省は、発熱などの風邪症状がある場合には仕事・学校を休むよう呼びかけています。また、経団連に対して「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り組みについて」の要請をしています。

    • 労働者が発熱などの風邪の症状が見られる際に、休みやすい環境の整備
    • 労働者が安心して休むことができるよう収入に配慮した病気休暇制度の整備
    • 感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進
       などの取り組みへの協力を経済団体に要請します

    職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り組み – 厚生労働省

    従業員に感染の症状が見られても慌てることのないよう、従業員が安心して休暇を取得できる体制を整えておくことが重要です。また、欠勤中の給与などについても、あらかじめきちんと説明しておくと後々にトラブルを回避できます。

    コロハラに注意

    近頃、コロハラ(コロナ・ハラスメント)という言葉が登場し始めました。これは、感染を疑ってあからさまに避けたり、「会社を辞めろ」「感染したら評価を下げる」「休日は外出するな」といった圧力をかけたりする行為を指します。

    状況によってはパワハラ(パワー・ハラスメント)に該当することもあります。ハラスメントの予防・防止のためにも、感染症の対策方針について従業員と話し合っておくといいでしょう。

    感染症の対策ポイント

    最後に、感染症の対策ポイントをおさらいしておきます。

    感染症の対策方法ポイント

    • 手洗いや換気を徹底するなどして、事業所の衛生環境を整える
    • 可能であれば、満員電車を避けて通勤できる制度を導入する
    • すでにテレワークなどを導入しているのであれば、上限回数や対象者を拡大する
    • 感染の疑いが見られる従業員が安心して休める環境を整備する

    手洗いの徹底や消毒用アルコールの設置、定期的な換気などは、業種に関わらず手軽に実施できる対策方法です。一方、時差出勤制やテレワークなどの導入は、業種によっては難しいこともあるかと思います。無理せず手の届く範囲で実施していきましょう。