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【電帳法】クラウド会計ソフト3社の対応状況を比較

更新日: 2021/12/08 投稿日: 2021/12/02
【電帳法】クラウド会計ソフト3社の対応状況を比較

「電子帳簿保存法」の改正によって、2022年1月からは帳簿や書類の電子保存要件が大幅に緩和されます。これに合わせて、大手クラウド会計ソフトメーカーの「弥生・freee・マネーフォワード」は、帳簿・書類の保存機能を続々とアップデートしています。

INDEX

目次

    電子帳簿保存法って? – 基本のおさらい

    「電子帳簿保存法(電帳法)」では、帳簿・書類を電子保存する際の要件が定められています。2022年1月からの改正では、全体的に保存要件が緩和され、一般的な会計ソフトで対応できる範囲が広がります。

    電子帳簿保存法の要件区分(帳簿・書類・電子取引)

    注意点として、改正後も青色申告65万円控除の要件における「電子帳簿保存」のハードルは高いままです(優良な電子帳簿)。また「電子取引の取引情報」については、すべての事業者が電子保存に対応する必要があります。

    保存対象ごとのポイント解説【改正後】

    帳簿
    電子保存は任意
    難易度の異なる2種類の要件がある

    • 電子帳簿で青色65万控除を狙うなら「優良な電子帳簿」の要件が必須
    • 帳簿をペーパーレス化するだけなら「その他の電子帳簿」の要件でOK
    書類
    電子保存は任意
    書類の性質によって電子保存の方法が異なる

    • パソコン等で作った決算関係書類…………………電子データ保存
    • パソコン等で作って、紙で交付した取引書類……電子データ保存
    • 紙で作成 or 紙で受領した取引書類 ………………スキャナ保存
    電子取引
    電子保存が義務に
    主に下記のような書類が該当する

    • メールで交付 or 受領した取引書類
    • クラウドサービスを介して交付 or 受領した取引書類
    • ECサイトからダウンロードした請求書や領収書

    >> 電子帳簿保存法の改正について【2022年1月から】

    最新の情報によると、「電子取引」の電子保存義務化については、2年間の猶予期間が設けられるようです。こちらに関しては、詳細が発表されしだい追ってお伝えします。

    2022年1月以降は、基本的に届け出や申請をしなくても、帳簿や書類の電子保存を始められます。つまり、会計ソフトが電子保存に対応していれば、すぐにでも電子保存を開始できるわけです。

    ここからは、大手クラウド会計ソフトメーカー3社(弥生・freee・マネーフォワード)の対応状況について、現在わかっている範囲でお伝えします。

    弥生

    帳簿 優良な電子帳簿
    インストール型ソフトのみ対応
    その他の電子帳簿
    対応予定
    書類 電子データ保存
    未発表
    スキャナ保存
    対応済み
    電子取引の取引情報
    未発表

    弥生は、インストール型とクラウド型の、両タイプの会計ソフトを提供しています。それぞれで、電帳法への対応状況が若干異なります。

    • インストール型のソフトは、すでに「優良な電子帳簿」の要件を満たせる状態
    • クラウド型のソフトも「その他の電子帳簿」の要件ならクリアできる
    • それ以外は、まだ発表されていない部分が多い

    弥生は、2022年の春に「証憑管理サービス(仮称)」の提供開始を予定しています。これにより、電子帳簿保存法への対応が進められる見込みです。

    弥生「証憑管理サービス」(電子帳簿保存法)

    ただ、今のところ「証憑管理サービス」の具体的な機能は明かされておらず、そもそも個人事業主向けの会計ソフトに実装されるかどうかも不明です。実際、弥生のサポートセンターに問い合せたところ、やはり「詳細は現段階では未定」との回答でした。

    なお「スキャナ保存」については、すでに専用のスマホアプリを使う形で対応済みです。ただ、現行のアプリはあくまで「レシート」の撮影用であって、取引先から受け取った紙の納品書や請求書にも対応できるようになるかは分かりません。

    弥生の会計ソフト(公式)

    freee

    帳簿 優良な電子帳簿
    対応予定
    その他の電子帳簿
    対応予定
    書類 電子データ保存
    対応予定
    スキャナ保存
    対応済み
    電子取引の取引情報
    対応予定
    • 2022年1月以降、ほとんどの電子保存に対応していく予定
    • 「優良な電子帳簿」の対応機能も2022年中に提供開始予定
    • 具体的なリリース日などは不明

    freeeは2022年1月以降に、電子帳簿保存法に対応する複数の新機能をリリースしていく予定です。具体的なスケジュールはまだ発表されていませんが、いずれは下記の帳簿や書類のすべてが電子保存できるようになる見込みです。

    電子帳簿保存法の対応範囲(freee会計)

    freee会計の公式サイトより

    なお「優良な電子帳簿」に対応する機能についても、2022年中にリリース予定とのことです。個人事業主向けのクラウド会計ソフトで「優良な電子帳簿」への対応を発表しているのは、今のところfreeeだけです。

    freee会計(公式)

    マネーフォワード

    帳簿 優良な電子帳簿
    未発表
    その他の電子帳簿
    対応予定
    書類 電子データ保存
    対応予定
    スキャナ保存
    対応済み
    電子取引の取引情報
    対応済み
    • 2021年中に、電子帳簿保存法に対応する新機能を順次リリースする予定
    • これにより、ほとんどの電子保存に対応できるようになる見込み
    • ただし「優良な電子帳簿」への対応については、まだ発表されていない

    マネーフォワードは複数のクラウドサービスをセットで提供しており、それらの機能を組み合わせて電子保存に対応していく予定です。「マネーフォワード クラウド確定申告」のユーザーなら、他のソフトも追加料金なしで利用できます。

    電子帳簿保存法への対応(マネーフォワードクラウド)

    マネーフォワードの公式サイトより

    実務上は、会計ソフトの「クラウド確定申告」から書類等をアップして「クラウドBox」で保管する、という手順が主になりそうです。「クラウドBox」はすでに提供されており、これから他ソフトとの連携機能が追加されていく予定です。

    なお「優良な電子帳簿」への対応については、まだ発表されていません。サポートセンターに問い合せても、具体的な回答は得られませんでした。

    マネーフォワード クラウド確定申告(公式)

    まとめ – 大手3社の対応【比較一覧表】

    2022年1月から適用される「電子帳簿保存法(電帳法)」の改正に、クラウド会計ソフトの3社は下記のように対応していく見込みです。現時点では、やはりITベンチャー系の「freee」と「マネーフォワード」が素早く対応している印象です。

    電子帳簿保存法への対応【クラウド会計ソフト大手3社の比較】

    弥生 freee マネーフォワード
    帳簿 優良な電子帳簿
    (青色65万控除)

    インストール型は対応

    対応予定

    未発表
    その他の電子帳簿
    対応予定

    対応予定

    対応予定
    書類 電子データ保存
    未発表

    対応予定

    対応予定
    スキャナ保存
    対応済み

    対応済み

    対応済み
    電子取引の取引情報
    (2022年1月から義務化)

    未発表

    対応予定

    対応済み

    現状では未発表の部分が多い「弥生」も、2022年の春に新サービスのリリースを予定しています。それまでに、詳しい情報が順次発表されていく見込みです。下記のようなポイントを踏まえつつ、各社の続報をチェックしていきましょう。

    Q. 対応状況で特に重要なのはどの部分?
    「帳簿の電子保存に対応しているか?」は必ずチェックしましょう。帳簿に関しては、会計ソフトでそのまま保存しておくのが断然ラクです。会計ソフトが帳簿の電子保存に対応していない場合、何らかの別ソフトにデータをエクスポートするか、紙で保管しておくなどの対応が必要になります。
    Q.「優良な電子帳簿」にも対応しているほうがいい?
    必ずしも、わざわざ「優良な電子帳簿」の要件に対応している会計ソフトを選ぶ必要はありません。青色申告65万円控除の要件は「電子帳簿保存」ではなく「電子申告」を実施することでもクリアできます。
    Q. 会計ソフトが「書類」の電子保存に対応していない場合は?
    パソコン等で作成した書類の保存(電子データ保存)については、要件がさほど厳しくないので、OSに標準で備わっているファイル管理機能でも対応できます。一方、紙で作成 or 受領した書類の保存(スキャナ保存)については、改正後も会計ソフト等を利用するのが無難です。
    Q. 会計ソフトが「電子取引の取引情報」の電子保存に対応していない場合は?
    電子取引の取引情報は、OSに標準で備わっているファイル管理機能(エクスプローラーやFinderなど)でも電子保存に対応できます。ただ、その場合は「事務処理規程」を作ったり、ファイル名を工夫したりする必要があるので、はじめから対応している会計ソフトを使うほうがラクではあります。
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