従来、個人事業主の電子申告には、マイナンバーカードを読み取るための「ICカードリーダー」が必要でした。しかし今は、カードリーダーをスマホで代用したり、そもそもマイナンバーカードすら持っていなくても電子申告する方法があります。
INDEX
目次
ICカードリーダーなしで電子申告できる?
電子申告をするには、そのプロセスで個人認証が不可欠です。「ICカードリーダー」を持っていない個人事業主の場合、電子申告で個人認証する方法には大きく2つの選択肢があります。
「マイナンバーカード」と「マイナンバーカードを読み取れるスマホ」を持っている個人事業主は、スマホでカードリーダーの代用ができます。7以降のiPhoneや、ここ数年以内に発売されたAndroid端末は、基本的にマイナンバーカードの読み取りに対応しています。
マイナンバーカードと対応スマホを揃えられない個人事業主は、そもそもカードを使わない方法を選択しましょう。具体的には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を「ID・パスワード方式」で利用します。(詳しくは記事の後半で解説)
スマホで代用する方法
対応機種のスマホを持っていれば、それでマイナンバーカードを読み取って電子申告ができます。具体的な手順は、下記のどのルートで電子申告をするかによって異なります。
- 会計ソフトからそのまま電子申告をする場合
- 会計ソフトで作った申告書類を「e-Taxソフト(WEB版)」で送信する場合
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から電子申告をする場合
会計ソフトを使っている個人事業主は、会計ソフトからそのまま電子申告をするのが断然ラクです(①)。ただ、会計ソフトの対応状況によっては、②のように「e-Taxソフト(WEB版)」を介さないと電子申告ができない場合もあります。
会計ソフトを使っていない個人事業主は、ウェブ上の「確定申告書等作成コーナー」で申告書類を作って、そのまま電子申告をしましょう(③)。この場合も、スマホでマイナンバーカードを読み取って電子申告ができます。
① 会計ソフトから電子申告をする場合
- 最近では、スマホから電子申告ができる会計ソフトが増えている
- スマホから電子申告をする場合は、スマホでマイナンバーカードを読み取る
- したがって、別途でICカードリーダーを用意する必要はない
たとえば、大手3社が提供するクラウド会計ソフトのうち「freee会計」と「マネーフォワード クラウド確定申告」にはスマホ申告の機能があります。
電子申告への対応状況 – 会計ソフト大手3社の比較
弥生 | freee | マネーフォワード | |
---|---|---|---|
スマホからの 電子申告 |
× | ○ | ○ |
パソコンからの 電子申告 |
○ | ○ | △ 少し面倒 |
スマホから電子申告をする場合は、操作しているスマホでそのままマイナンバーカードを読み取ります。ですから、別途でICカードリーダーを用意する必要はありません。操作手順も、アプリの指示に従っていくだけなのでカンタンです。
【freee・マネーフォワード】スマホで電子申告が可能に!
② e-Taxソフトを介して電子申告をする場合
- 会計ソフトによっては「e-Taxソフト(WEB版)」を介さないと電子申告できない
- 「e-Taxソフト(WEB版)」はPC用だが、カードの読み取りにはスマホを使える
- したがって、別途でICカードリーダーを用意する必要はない
「会計ソフトで確定申告書類を作ったけど、ソフトからそのまま電子申告をする機能は無いっぽい」という場合は「e-Taxソフト(WEB版)」を利用しましょう。作成した書類のデータをいったん「e-Taxソフト(WEB版)」に取り込んで、国税庁に送信できます。
会計ソフトとe-Taxソフト(WEB版)で電子申告をする流れ
※会計ソフトが「e-Taxソフト(WEB版)」にも未対応の場合は不可
「e-Taxソフト(WEB版)」を利用する際にはマイナンバーカードの読み取りが必要ですが、ICカードリーダーは必須ではありません。「2次元バーコード認証」という方法で、スマホを使ってマイナンバーカードを読み取れます。
2次元バーコード認証(QRコード認証)の手順
- PCで「e-Taxソフト(WEB版)」にアクセスして、QRコードを表示する
- QRコードを「マイナポータル」というスマホアプリで読み取る
- スマホをマイナンバーカードにかざして、情報を読み取る
この手順を踏むと、パソコンから「e-Taxソフト(WEB版)」にログインできます。あとは、会計ソフトで作成した確定申告書類のデータを取り込んで、国税庁に送信しましょう。
③ 確定申告書等作成コーナーで電子申告をする場合
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、申告書類の作成&電子申告ができる
- PCとスマホのどちらからでも利用可能
- カードの読み取りにもスマホを使えるので、ICカードリーダーは不要
2022年1月から、パソコン版の「確定申告書等作成コーナー」でも「2次元バーコード認証(QRコード認証)」が可能になります。つまり、QRコードを使ってPCとスマホを連携させ、そのスマホでマイナンバーカードを読み取れるようになるということです。
確定申告書等作成コーナーの「QRコード認証」について詳しく
ちなみに「確定申告書等作成コーナー」では、そもそもマイナンバーカードを使わずに電子申告をする方法もあります(ID・パスワード方式)。「スマホの操作とかよく分からんのよ!」という人にはコチラの方法がオススメなので、以下の説明をご覧ください。
そもそもマイナンバーカードを使わない方法
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、申告書類の作成&電子申告ができる
- 「ID・パスワード方式」で利用する場合は、マイナンバーカードが不要
- したがって、もちろんICカードリーダーを用意する必要もない
確定申告書等作成コーナーから電子申告をする際には、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つの利用方式があります。「ID・パスワード方式」で利用する場合、マイナンバーカードは使いません。
確定申告書等作成コーナーの利用方式(電子申告をする場合)
マイナンバーカード方式 | マイナンバーカードを使ってオンラインの個人認証をする マイナンバーカードとカードリーダー(対応スマホ)が必要 |
---|---|
ID・パスワード方式 | 事前発行したIDとパスワードでオンラインの個人認証をする マイナンバーカードもカードリーダーも不要! |
「ID・パスワード方式」では、マイナンバーカードの代わりに、税務署で発行したIDとパスワードを使って個人認証をします。事前の手続きに出向く手間がかかりますが、手続き自体は早ければ5分程度で終わります。
「ID・パスワード方式」で電子申告をする流れ
現在、マイナンバーカードを使わずに電子申告する方法は、この「ID・パスワード方式」だけです。「マイナンバーカードはあるけど、ICカードリーダーや対応スマホがない」という場合、ID・パスワード方式でしか電子申告はできません。
まとめ
ICカードリーダーを持っていない個人事業主も、電子申告をあきらめる必要はありません。下表のように、どのツールから電子申告をする際も、ICカードリーダーを使わないで済む方法があります。
電子申告に必要なもの
マイナンバーカード | ICカードリーダー | ||
---|---|---|---|
会計ソフト | 必要 | スマホで概ね代用可能 (会計ソフトによって異なる) |
|
e-Taxソフト (WEB版) |
必要 | スマホで代用可能 | |
確定申告書等 作成コーナー |
マイナカード方式 | 必要 | スマホで代用可能 |
ID・パスワード方式 | 不要 | 不要 |
>> マイナンバーカードに対応したスマートフォン一覧 – 公的個人認証サービス
たとえ「ICカードリーダー」がなくても、マイナンバーカードと「マイナンバーカードを読み取れるスマホ」があれば、複数の方法で電子申告が可能です。会計ソフトからそのまま電子申告ができる場合も多いので、申告業務の手間をかなり省けるでしょう。
また「そもそもマイナンバーカード作ってないよ…」という個人事業主も、確定申告書等作成コーナーを「ID・パスワード方式」で利用すれば電子申告ができます。事前手続きが少し面倒ですが、いちど済ませれば次回以降は手続き不要でスムーズに使えます。