ウーバーイーツ問題から見直そう「アルバイトと個人事業主の違い」

更新日: 2020/05/01 投稿日: 2020/02/15
ウーバーイーツ問題から見直そう「アルバイトと個人事業主の違い」

昨年11月末、ウーバーイーツ(UberEats)などのサービスを提供するUber Japan株式会社は、配達員に対する報酬の引き下げを行い話題となりました。本記事では、この問題と絡めて「アルバイトと個人事業主の違い」について考察します。

INDEX

目次

    ウーバーイーツ問題について

    ウーバーイーツは、Uber Japan株式会社(以下、ウーバー社)が運営する、スマホアプリ等を用いたフードのデリバリーサービスです。アプリから注文すると、配達パートナーが割り当てられ、注文者の元へ料理が効率良く届けられます。

    ウーバーイーツの仕組み

    ウーバーイーツの配達員は「配達パートナー」と呼ばれています。このネーミングには、彼らはウーバー社のアルバイトスタッフ(以下、アルバイト)ではなく「パートナーシップ契約を交わした個人事業主」として扱われている、という意味合いが含まれています。

    ウーバーイーツの報酬引き下げ問題

    ウーバー社は、2019年11月29日、東京地区でウーバーイーツの配達員に対する報酬の引き下げを行いました。報酬の一部項目については60%もの報酬カットが実施され、大きな話題となりました。

    配達パートナーへの事前連絡は、直前の同年11月20日にメールで行われました。その後11月下旬から12月上旬にかけて、配達パートナー向けの説明会も開催されましたが、報酬引き下げの詳細については明かされなかったようです。

    ウーバー社は「一部項目の報酬カットについては事実だが、引き上げを行った項目もあるので、収入に影響を与えることはない」という主旨のコメントをしています。ただ、配達パートナーからは「報酬が減った!」という声が多く、騒動に発展しました。

    ウーバー社は配達パートナーの団体交渉を拒否

    配達パートナーらで結成された労働組合「ウーバーイーツユニオン」は同年12月5日、今回の報酬カットの件に関して、ウーバー社に対して団体交渉を申し入れました。対するウーバー社は「配達パートナーは個人事業主であり、労働組合法における労働者に該当しない」との理由で交渉を拒否しています。

    騒動の背景 – 配達パートナーは「個人事業主」

    配達パートナーが契約上「個人事業主」であることが、この騒動の大きな背景にあります。彼らは労働法に基づく「労働者」とは異なり、ウーバー社から配達業務を請け負う「個人事業主」という扱いなのです。

    労働法とは?
    労働者に適用されるすべての法律の総称。代表的なものに「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」があり、これらは併せて労働三法と呼ぶ。ほかにも「最低賃金法」「労働契約法」など、様々な法律が含まれる。

    雇用主に雇われて働く従業員が「労働者」です。労働者は、労働環境や給与などに問題があった場合は、労働法によって守ってもらえます。

    一方、個人事業主は「自身で事業を営んでいる」という立ち位置です。「労働者」には該当しません。したがって、今回のように取引先に報酬額を引き下げられても、労働法に守ってもらえません。

    アルバイトと個人事業主の大きな違い

    アルバイトと個人事業主でまず大きく異なるのは、仕事をする上での契約形態です。また、個人事業主は労働者ではないので、労働保険の対象外です(一定の要件を満たせば個人事業主でも労災保険に入れるが、ウーバーイーツの配達パートナーは対象外)。

    アルバイト 個人事業主
    契約形態 雇用契約 業務委託契約 など
    労働保険
    (雇用保険・労災保険)
    給付を受けられる 給付を受けられない

    ①「契約形態」の違い

    アルバイトの場合、雇用主と「雇用契約」を交わして勤務します。雇用契約では、雇用主の指揮監督の元で働く対価として、労働時間に応じた「給与」が発生し、従業員に対して支給されることになっています。また雇用契約の場合、給与から源泉徴収が差し引かれます。

    一方で個人事業主は、取引相手と「業務委託契約」などを交わして仕事を請け負います。業務委託契約のもとでは、依頼者側は受注先に対して、一定の業務における成果の対価として「報酬」を支払うのが基本です。成果報酬型であれば、成果がなければ報酬は発生しません。

    ちなみに、仕事内容によっては支払い側の会社が、源泉徴収をする必要があります。しかし、配達パートナーの仕事内容に支払う報酬は、源泉徴収の必要がありません。ですので、ウーバー社は配達員へ報酬を支払う際に、源泉徴収を行いません。

    ②「労働保険」の有無

    労働保険とは「労働者」のための社会保険制度で、「労災保険」と「雇用保険」の総称です。給付対象者は労働者、つまり従業員(正社員やアルバイトスタッフ)です。

    労働保険 業務上のケガや病気で働けなくなった場合に、治療費などを補償することで生活を守ってくれる制度
    雇用保険 失業時に金銭面での再就職支援をしてくれる制度
    ※一定の要件を満たす必要あり

    ウーバーイーツの配達パートナーは労働保険の対象になりませんが、ウーバー社は昨年10月に配達パートナー向けに独自の補償制度を新設しました。

    配達パートナーの確定申告について

    配達パートナーは個人事業主なので、自ら確定申告をして所得税を納付する必要があります。とはいえ、稼ぎが一定金額に満たない場合、確定申告は義務付けられていません。

    専業の配達パートナーであれば、1年間の所得金額の合計が「48万円」以下なら確定申告をする義務はありません。また会社員などが副業で配達パートナーをしている場合、申告が必要となる副業による所得のボーダーラインは「20万円」です。

    専業の場合 副業の場合
    48万円以下 20万円以下

    配達パートナーが必要経費にできるもの

    必要経費とは、ざっくり言うと「事業を営む上で必要な支出」のこと。収入から必要経費などを差し引いて所得を求めるので、必要経費をもれなく記録することで納める税金は少なくなります。
    >> 必要経費とは?確定申告で経費にできるものとできないもの

    配達パートナーの仕事に必要な費用は、たとえば以下のようなものが考えられます。受け取った報酬額から、こういった費用を必要経費として差し引き、所得を算出します。

    • 自転車やバイクの購入費用や駐輪場代
    • 車両のレンタル費用(シェアサイクルなど)
    • 車両のメンテナンス費用やガソリン代
    • 配達エリアまでの交通費
    • 備品の購入費用(スマホホルダー、ヘルメット、防寒具など)
    • スマホの通信料
    • 車両保険の費用

    仕事とプライベートの両方で使っているものは、家事按分することで、費用の一部を必要経費に算入できます。

    必要経費の出費があった際には、必ずレシートや領収証を残しておきましょう。なお、仕事に関する費用でも、勤務中の食事代は経費にできません。ただし、たとえば水分補給用のドリンク購入代などは、常識の範囲内なら経費として認められるでしょう。

    まとめ

    ウーバーイーツの配達パートナーは「自由度の高い働き方」を実現できます。この自由度の高さや就業の気軽さは、ウーバーイーツ独自の大きなメリットと言えます。

    配達パートナーは、ちょっとした時間にすぐ仕事を開始することができます。仕事中に上司から指示を受けることもありません。また、収入は成果報酬制なので、働き方を工夫すれば高い収入を目指せます。

    しかし、配達パートナーは個人事業主としての立ち位置であり、このことによるデメリットも見逃せません。まず個人事業主は「労働者」ではないので、労働環境や給与(報酬)などに問題があったとしても、労働法によって守ってもらえません。さらに、労働保険も適用されないので、配達中の事故に対する備えは自分で行う必要があります。

    また、配達パートナーの仕事に対する報酬は「源泉徴収が必要な報酬・料金等」に当てはまらないので、報酬からは源泉徴収されません。配達パートナーは一定以上の所得を得れば、自分で確定申告をする必要があります。

    今回の騒動はまさに、個人事業主として仕事を請けることのデメリットについて考えさせられる一件でした。