国民健康保険 – 個人事業主の医療保険

更新日: 2020/09/16
国民健康保険 – 個人事業主の医療保険

個人事業主が加入する医療保険は、基本的には「国民健康保険」です。副業をしている事業主は、会社の「健康保険」に加入していることもあります。この記事では、主に個人事業主の国民健康保険(国保)について解説します。

INDEX

目次

    個人事業主が加入する公的医療保険とは

    一般的に「医療保険」と言うと、公的なものと民間のもの、両方を指すことが多いです。
    公的な医療保険については、国籍にかかわらず、日本に住民票があるすべての人に加入義務があります。一方、民間の医療保険は必要に応じて任意で加入するものです。

    公的な医療保険と民間の医療保険の違い

    個人事業主が加入する公的医療保険

    「国民健康保険」は、公的医療保険のなかで最もベーシックなものです。国民健康保険(=国保)には個人事業主だけでなく、特定の組織に属さない住民が加入します。なお、副業などで会社の健康保険に加入している場合、国保には加入しません。

    また、個人事業主は国保の代わりに、業種によっては「国民健康保険組合」に加入できる場合があります。国民健康保険組合(=国保組合)とは、業種ごとに結成された組合が運営する公的な医療保険です。記事後半で、国保組合についてごく簡単に紹介します。

    国民健康保険の給付について

    国保に加入している人は、例えばケガで治療を受ける際に、少ない自己負担で医療が受けられる仕組みになっています。国保は、病気やケガの治療費・出産費用に対して保険の給付を行い、国民の生活を保障するための制度です。

    国民健康保険への加入が必要なケース

    個人事業主は、次のケースでは14日以内に国保への加入手続きをしなければなりません。もし未加入期間に病院にかかると、治療費が全額自己負担となってしまいます。ただ、あとで国保加入手続きをして、さらに別途申請をして審査に通れば、3ヶ月後ぐらいに7割分の現金給付を受けられます。

    1. 脱サラしたとき
    2. 扶養から外れたとき
    3. 引っ越したとき

    国保加入の手続方法

    加入時は、役所の窓口などに足を運んで手続きをするのが基本です。手続きで必要なのは「マイナンバーがわかるもの」「免許証などの本人確認書類」「印鑑」に加えて、以下のものが必要な場合があります。

    ① 脱サラしたとき 健康保険資格喪失証明書
    ② 扶養から外れたとき 被扶養者資格喪失証明書
    ③ 転入したとき 転出証明書

    手続きに必要な書類などは、市町村によって少しずつ異なります。

    ケース① 脱サラしたとき

    会社の健康保険に入っていた人が脱サラしたら、退職日の翌日から14日以内に国保への加入手続きが必要です。(ケース②で述べますが、家族の扶養に入れるときは国保に加入する必要はありません)

    あるいは、退職日の翌日から20日以内に会社に申請すれば、国保の代わりに「任意継続」を選択できます。これによって2年間だけ、会社の健康保険に加入し続けることができます。ただし保険料は、会社と折半ではなく全額自己負担になります。

    退職後の保険料の負担割合の変化

    国保の場合は「家族を被扶養者として保険料を節約する」ということができません。そのため、家族がいる人は任意継続をした方が保険料が少なく済む場合が多いです。ただし、住んでいる地域や所得によっては、国保のほうが保険料が少ないケースもあります。

    なお、任意継続は「国保に切り替えたいから」などの理由では、途中で解除できません。原則として、2年間は任意継続の状態が続くということです。ただし、期日までに保険料を納付しなかったときは、自動的に任意継続の資格を失います。

    ケース② 扶養から外れたとき

    家族の健康保険に被扶養者として入っていた事業主が、所得の増加や住所変更などによって扶養から外れた場合、国保への加入手続きが必要になります。この手続きは、被扶養者でなくなった日を1日目として、14日以内に行わなければなりません。

    健康保険(会社員が加入する公的医療保険)の被扶養者の範囲

    以下の要件から外れた人は基本的に被扶養者として認定されないので、国保への加入手続きが必要になります。

    この要件を外れると健康保険の被扶養者ではなくなる

    健康保険における被扶養者の要件【同居・別居】

    上図での「自分の年収」というのは「事業収入から売上原価などを差し引いた金額」のことを指します。とはいえ、これは概算で構いません。なぜなら「売上原価など」の定義があいまいで、厳密な規定が存在しないからです。

    いずれにせよ、被扶養者の資格調査が毎年行われます。最終的に扶養認定の判断を下すのは、保険者(健保を運営する協会や組合のこと)だということです。したがって、不安なことがあれば保険者または会社に直接問い合わせるのが確実です。

    ケース③ 引っ越したとき

    別の市町村に引っ越すときは、基本的には旧住所の国保から脱退します。転出日を1日目として、14日以内に脱退の手続きが必要です。なお、平成30年度以降、国保の運営は都道府県が担っているので、都道府県内での引っ越しなら手続き不要とする自治体もあります。

    引っ越しでの国保脱退・加入・変更手続きの期限【他の市町村・同じ市町村】

    引っ越しが終わったら、新住所の自治体が運営する国保へ加入し直します。この手続きは、転入日から14日以内に行います。ちなみに転入時は転出時と異なり、同じ市町村内での引っ越しでも国保の手続きが必須です。

    国民健康保険の保険料について

    国民健康保険料の支払額は、所得が高い人ほど多くなります。保険料の計算方法は各市町村ごとに異なり、家族構成や固定資産税額が関係する場合もあります。ただ、自分で計算する必要はなく、届いた納付書に従って納付すればよいです。口座振替も選べます。

    保険料は所得の10%ぐらい

    支払う保険料の年間金額は、平均的な地域であれば所得のおよそ10%です。ただ、地域差があり、所得の7~14%程度の範囲で開きがあります。つまり、所得などの条件が同じ人でも、一番安い地域と高い地域とでは2倍近く保険料に差が出るということです。

    ただし、40~64才の人は介護保険の分も加算されるため、さらに平均で所得の3%程度、支払金額が多くなると考えてください。しかしこれも地域差がありますので、正確な金額を知りたければ各市町村の情報を確認する必要があります。

    保険料の主な納付方法

    自主納付 口座振替
    納付書を使って支払う 納付書は使わない
    • 銀行、コンビニ、役所の窓口
    • インターネットバンキング
    銀行口座から自動引き落とし
    (事前登録が必要)

    納付書が届くタイミングや回数など、細かい部分は市町村ごとに定められています。納付期限は納付書に必ず記載されているので、その期限内に支払えばOKです。大抵は、最初の納付書が6月ごろに届き、分割10回払いだとすると、翌年3月まで毎月支払います。

    なお、支払った保険料は事業の必要経費にはできませんが、「社会保険料控除」として所得から控除することができます。税額の計算上、控除によって課税所得が減れば、それに応じて税金が少なく済みます。

    国民健康保険の主な給付について

    国民健康保険の給付として最もメジャーなのは「病院で保険適用の治療を受けたら自己負担が3割で済む」というものです。そのほかにも国保による給付のかたちがあり、例えば下記のようなケースで給付を受けることができます。

    • 高額療養費
    • 出産育児一時金

    高額療養費

    病院で治療を受け、1ヶ月の自己負担額の合計が一定額を超えたら、後日その超えた金額だけ保険金を受け取れます。これを「高額療養費」といいます。つまり、上限金額までしか事実上は負担せずに済むということです。ちなみに受け取りは、早くても受診日から3ヶ月後です。

    高額療養費の上限額の違い

    この上限金額は、その人の年齢や所得によって決まります。どの自治体でも上限金額は共通で、所得が低い人ほど上限金額も低いです。

    出産育児一時金

    「出産育児一時金」は、出産の際に1児につき42万円が支給される制度です。中規模以上の病院であれば、大抵は出産育児一時金の請求と受け取りの両方を代行してくれます(直接支払制度)。その場合、退院時に42万円が差し引かれた金額を負担することになります。

    また、小規模な診療所などでも、妊婦が出産育児一時金を請求をする際、受け取りに関しては病院に委任できる場合があります。これにより、窓口での負担金額が軽減されます(受取代理制度)。もちろん、あえて自分で受け取るという選択をすることも可能です。

    自分で請求・受取り 直接支払制度 受取代理制度
    請求から受取りまで自分で行う(1児につき42万円) 病院に請求と受取りの両方を代行してもらう 請求は自分で行い、受取りは病院が代行する
    一旦は自己負担になる 退院時の支払いが、1児につき42万円安くなる

    なお、この出産育児一時金は、夫と妻とで二重には支給されません。

    国民健康保険組合の種類

    国民健康保険組合(=国保組合)は、特定の業種の人だけが加入でき、国民健康保険(=国保)に比べて保険料が少ない場合があります。また、国保と違って「傷病手当金」という、働けないときの給付金が受け取れる国保組合もあります。

    国保組合の具体例

    国保組合の例 業種など
    文芸美術 国民健康保険組合 文芸、美術及び著作活動
    建設連合 国民健康保険組合 建設業(土木工事業、建築工事業など)
    東京食品販売 国民健康保険組合 食品業
    京都料理飲食業 国民健康保険組合 料理飲食業
    大阪府整容 国民健康保険組合 理容業、美容業
    兵庫県食品 国民健康保険組合 食品の製造、販売、喫茶・飲食旅館の運営

    国保組合に加入するには、多くの場合、以下の要件を満たす必要があります。もちろん加入する国保組合の種類によって要件は異なるので、あくまで参考程度です。

    ◎ 特定の業種であること(必須)
    ○ 特定の職業団体に所属していること
    ○ 特定の地域に住民票があること

    特定の職業団体というのは、国保組合とは別の団体のことです。たとえば文芸美術国保組合の場合、日本ネットクリエイター協会や日本デジタルライターズ協会のような職業団体に所属している人でなければ加入できません。

    まとめ – 国保の重要ポイント

    個人事業主は、基本的には国民健康保険に加入する必要があります。加入しなくてよいのは、以下のようなケースです。

    個人事業主が国保に加入しなくてよいケース

    • 脱サラ後、以前の会社の健康保険を任意継続中である(2年間)
    • 家族の健康保険などに被扶養者として加入している
    • 国民健康保険組合に加入している
    • 海外移住などによって日本に住民票がない

    国保は各都道府県が運営し、市町村が窓口を担当します。加入・脱退の手続きは、市町村の役所などで行ってください。手続きに必要な書類や、加入後の保険料などは市町村ごとに異なります。

    給付の種類について

    主な給付の種類 概要
    療養の給付 3割程度の自己負担で一定の医療を受けられる
    高額療養費 自己負担が一定額を超えた場合、超過分の金額が支給される
    出産育児一時金 加入者が出産した際、1児につき42万円が支給される

    病院に国保の保険証を持っていけば、3割の自己負担で医療が受けられます。その他にも、高額療養費制度や出産育児一時金制度など、現金の給付が受けられることもあります。基本的には申請が必要なので、忘れずに申請をしましょう。