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「労災保険の特別加入」対象拡大!デリバリー配達員・ITエンジニアなど

更新日: 2021/12/22 投稿日: 2021/07/13
「労災保険の特別加入」対象拡大!デリバリー配達員・ITエンジニアなど

2021年(令和3年)9月から、フードデリバリーの自転車配達員やITエンジニアの個人事業主も「労災保険の特別加入」ができることになりました。本記事では、現時点で公表されている情報をまとめています。

INDEX

目次

    【おさらい】労災保険の特別加入って?

    「労災保険」とは、通勤中・業務中の災害に備えるための保険制度です。加入していると、仕事が原因で怪我や病気をした際に、所定の給付を受けられます。

    会社員は必ず労災保険に加入しますが、個人事業主は要件を満たさないと加入できません。

    労災保険の扱い – 会社員と個人事業主

    会社員 個人事業主
    加入の可否 必ず加入する 一部の事業主だけ
    任意で「特別加入」ができる
    加入方法 会社が手続きをしてくれる 「特別加入団体」に
    自分で申請する
    保険料 会社が全額負担してくれる 全額自己負担
    (料率は業種によって異なる)

    個人事業主が労災保険に加入できる制度を、労災保険の「特別加入制度」といいます。この対象範囲が拡大され、2021年9月からは「ウーバーイーツの自転車配達員」や「フリーのITエンジニア」も特別加入が可能になります。

    特別加入制度の対象範囲

    特別加入制度の対象者は、下記の4パターンに大別されます。2021年9月からは、このうち「一人親方等」と「特定作業従事者」の範囲が拡大されます。

    中小事業主 一定数以下の労働者を雇用している事業主
    今回の改正では変更なし
    一人親方等 特定の業種(建設業や運輸業など)を営む事業主
    「自転車を使用して行う貨物の運送の事業」が加わる
    特定作業従事者 特定の作業(特定の農作業や介護作業など)を行う事業主
    「情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業」が加わる
    海外派遣者 海外の事業に派遣される事業主
    今回の改正では変更なし
    本記事の説明は「労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」の審議内容に基づいています。現在、厚生労働省はこの審議を踏まえて省令の改正作業を進めていますが、細かな点についてはこれから変更される可能性もあります。

    ちなみに、特別加入制度の対象範囲は「2021年4月」にも拡大されており、その際は「芸能関係作業従事者」や「アニメーション制作作業従事者」が加わりました。本記事では、それ以降に追加が決まった業種について説明しています。

    具体例① フードデリバリーの配達員

    • 従来は、自動車やバイクの配達員しか特別加入ができなかった
    • 改正後は「自転車」の配達員も特別加入が可能になる(任意)
    • 特別加入をするには、まず「特別加入団体」に加入する必要がある
    • 保険料は全額自己負担
    • 保険料率は「1.2%」

    >> 労災保険料の計算方法

    自動車やバイクを使う配達員は、これまでも労災保険における「一人親方等」に該当し、特別加入が可能でした。今回の改正により「自転車を使用して行う貨物の運送の事業」を営む事業主も「一人親方等」と認められるようになります。

    「一人親方等」と認められる主な業種

    • 自転車を使用して行う貨物の運送の事業 ←NEW!
    • 自動車*を使用して行う旅客または貨物の運送の事業
    • 土木工事や建築物の建設、修理、解体などの事業
    • 漁業や林業などの事業

    *「自動車」には、バイクや原付自転車も含まれている

    自転車配達員は、バイク配達業者などと同じ「特別加入団体」に加入することが想定されています。ただ、現時点ではどの団体も詳しい情報を公開していないので、加入希望者は今後の情報をチェックしておきましょう。

    具体例② フリーのITエンジニア

    • 「特定の作業」を行う個人事業主(特定作業従事者)は特別加入の対象
    • 「特定の作業」に「情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業」が加わる
    • これによって、ITエンジニアの特別加入が可能に(任意)
    • 特別加入をするには、まず「特別加入団体」に加入する必要がある
    • 保険料は全額自己負担
    • 保険料率は「0.3%」

    >> 労災保険料の計算方法

    特別加入の対象に加わる「情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業」について、厚労省は下記のような内容を想定しています。

    引用

    ○ 情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む。)の設計、開発(プロジェクト管理を 含む。)、管理、監査若しくはセキュリティ管理その他情報処理システムに係る業務の一体的な企画に係る作業

    ◯ ソフトウェア若しくはウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査、セキュリティ管理若しくはデザインその他ソフト ウェア若しくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業

    特別加入制度の対象範囲の拡大に関する検討事項 – 厚生労働省

    すでに「一般社団法人ITフリーランス支援機構」が、ITエンジニアの「特別加入団体」として名乗りをあげています。とはいえ、まだ準備段階とのことで、具体的な情報は公開されていません。
    >> お知らせ – 一般社団法人ITフリーランス支援機構

    まとめ

    • 今回の改正が施行されるのは「2021年9月1日」から
    • 労災保険の特別加入は、あくまで任意
    • 保険料は全額自己負担になる(料率は業種ごとに異なる)
    • 特別加入の希望者は、まず「特別加入団体」への加入手続きをする
    • 「特別加入団体」の選択肢については、まだ不明確な部分が多い

    特別加入を希望する事業者は、今後どんな「特別加入団体」が名乗りをあげるかチェックしておきましょう。どの団体でも保険料は変わりませんが、入会金や手数料が異なる場合があるので注意が必要です。

    【補足】法整備に関わる民間の動き

    労働組合「ウーバーイーツユニオン」は、配達員の労災保険料を企業側が負担することを求めています。企業が配達員の働きで利益を得ている以上、一般的な会社と同じように「企業側も業務上の危険に関わるコストを負うべき」という主張です。

    現状、特別加入の保険料は全額自己負担ですが、このような動きが今後の制度改正に影響を与える可能性もあります。新しい働き方の増加に伴って、こうした側面も注視しておくとよいでしょう。

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