資金繰り対策のなかでも、比較的カンタンかつ低コストで行える「請求書カード払い」について解説します。経費の支払い期日が迫っていて「手元に十分な現金がなく、支払いを待ってもらうのも難しそう」という方にピッタリの解決策です。
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目次
請求書カード払いとは?資金繰りの効果は?
請求書カード払いとは、本来は銀行などを利用して現金で振り込むべき請求書の支払いを、クレジットカードで決済できるサービスです。
振込期日までに現金を用意できない場合や、他の用件のために現金を確保しておきたい場合に支払いを先延ばしにできるので、資金繰りに役立ちます。
請求書カード払いサービスはいくつか種類があり、サービスごとに以下の項目が異なります。
- 手数料
- 支払い延長期間
- 使えるカードブランド(Visa、Mastercardなど)
- 振り込み日数
また、利用する請求書カード払いサービスによりますが、基本的に法人、個人事業主どちらでも利用できます。
請求書カード払いのシステム(仕組み)
請求先の企業に振り込まれるまでの流れは次の通りです。
- 取引先から請求書を受け取る
- 請求書とカード情報を請求書カード払い会社に送付する
- 請求書カード払い会社が立て替えて支払う
- クレジットカードの引き落とし日に、請求書カード払い会社が立て替えた分と手数料の合計が利用者の口座から引き落とされる
取引先への代金の支払いを代行する、支払い代行サービスのひとつです。請求書カード払い会社が立て替えて支払いを行い、その後、クレジットカードの引き落とし日に立て替えてもらっていた分を支払います。
取引先へは支払側の名義で振込されるため、請求書カード払いしたことを知られることはありません。
取引先への振込までの日数はサービス会社によって異なり、最短即日対応できる会社から、長くて5営業日以内が目安です。
あくまで請求書カード払い会社は支払い代行を行っているだけなので、支払額の上限やポイント還元率は、クレジットカード自体の設定によります。
支払いを先送りできる期間
カードの支払いサイクルによって異なりますが、多くの場合30~60日間、支払いを先送りにできます。
つまり請求書に記載されてる支払期日から最大60日間支払いを延長できます。
手数料
サービスによって異なりますが、請求書カード払い会社に支払う手数料は支払額の3~4%程度です。10万円の支払いの場合、手数料は3,000~4,000円程度です。
後日、請求金額と手数料の合計額が利用者の口座から引き落とされます。
他の支払い方法との違い
請求書払いとの違い
請求書払いは、請求側が一定期間の取引をまとめた請求書を発行し、支払い側が指定日までに支払う方法です。多くの場合「月末締め翌月末払い」などで1カ月ごとにまとめて、銀行振り込みで支払います。
請求書カード払いとの大きな違いは、支払いを先延ばしにできるかどうかという点です。請求書払いの場合、支払日が決められているので、支払日を先延ばしにできません。
一方、請求書カード払いだと最大60日間、支払いを先延ばしにできます。また、請求書払いは銀行振り込みを利用するため、決済時間が銀行の取引時間内に限られますが、請求書カード払いは銀行の取引時間内に行う必要がなく、いつでも決済できます。
クレジット払いとの違い
クレジット払いとは、請求書は発行せず、請求側が支払い側にクレジット払いを依頼する方法です。個人が買い物をする際のクレジットカード決済とほぼ同じ仕組みです。
請求側がカード会社と契約している場合のみクレジット払いに対応できますが、実際は導入があまり進んでいません。
一方、請求書カード払いは請求側がカード会社と契約していなくても、クレジットカード決済ができます。
ファクタリングとの違い
ファクタリングは、売掛債権(主に売掛金)をファクタリング会社へ売却して資金調達する方法です。手数料が差し引かれますが、決済日よりも前に売上債権を現金化できます。
請求書カード払いと比較すると、次の通りです。
請求書カード払い | ファクタリング | |
---|---|---|
特徴 | 取引先への支払いを遅らせる手段 | 取引先からの入金を早める手段 |
審査 | なし | あり |
手数料 | 3~4% | 5~30% |
どちらも資金繰りを改善するという目的は同じですが、資金調達の手法としてはまったく別の部類です。請求書カード払いは「取引先への支払いを遅らせる手段」なのに対し、ファクタリングは「取引先からの入金を早める手段」です。
ファクタリングには審査があり、融資に比べて緩いものの売掛先の支払い能力や支払いまでの期日の長さなどが確認されます。
一方請求書カード払いはほとんどの場合、与信審査がなく、クレジットカードを持っていれば、サービスに登録するだけで利用できます。
また手数料は請求書カード払いの方が安い傾向にあります。ファクタリングの手数料は5~30%程度です。
請求書カード払いのメリット
請求書カード払いのメリットは次の通りです。
- 支払いを先延ばしにできる
- 審査や手続きが簡単
- 手数料が少ない
- 取引先がカード決済非対応でも利用可能
- 支払いを一元管理できる
- カード払いのポイントが貯まる
それぞれ詳しく解説します。
支払いを先延ばしにできる
請求書カード払いを利用すれば、最長60日間支払いを先延ばしにできるため、短期的な資金繰りに役立ちます。先延ばしにする金額は、支払いの一部、または全額を選択できます。
長期の資金繰りに困っている場合は、銀行融資を受けるまでの繋ぎとしても有効な方法です。
審査や手続きが簡単
審査がないため融資を受けるよりも簡単でスピーディーに手続きができ、早ければ10分ほどで登録が完了します。手続きや審査で約1カ月ほどかかる銀行審査と比べて、手軽に行える資金繰り対策です。
すぐに利用できるため、成長に伴う急な仕入れ増加や人材確保など、突発的な場合にも適しています。
手数料が少ない
請求書カード払いの手数料の相場は支払額の3~4%程度なので、他の資金繰り対策と比較してコストを抑えることができます。
取引先がカード決済非対応でも利用可能
請求書カード払いは取引先に依存せず、カード決済を自由に利用できます。
サービス会社が取引先へ立て替えて支払いしてくれるサービスなので、カード払い非対応の取引先の場合でも、カード支払いができます。
支払いを一元管理できる
取引先への支払い含め、さまざまな支払い手段をカード払いにまとめることで、資金繰りや書類の管理が簡素化でき、業務効率化に繋がります。
また現金の管理や入出金の手間が省け、現金の盗難・紛失リスクも防げます。
カード払いのポイントが貯まる
請求書カード払いでもクレジットカードごとに設定されているポイントは通常通り還元されるため、効率的にポイントが貯まります。ポイント還元率の高いカードを利用するほど、手数料を相殺することも可能です。
デメリット
デメリットは次の2点です。
- カードの利用限度額を超えた場合は利用できない
- 一時的な資金繰り対策となる
ひとつずつ解説していきます。
カードの利用限度額を超えた場合は利用できない
クレジットカード決済なので、カードの利用限度額を超えた場合は利用できません。請求書カード払いシステムに限度額が設定されていることはほとんどありませんが、クレジットカード自体に設定された限度額が上限となります。
請求書カード払いに設定するカードは、利用限度額が高く設定されているカードを利用することをおすすめします。
一時的な資金繰り対策となる
支払い延長期間は最大60日程度なので、あまり長期間の資金繰り対策とはなりません。長い期間の資金繰りが必要であれば、繋ぎの資金繰り対策として利用し、銀行融資を利用することをおすすめします。
まとめ
請求書カード払いは、取引先の請求書をクレジットカード決済することで、支払いを先延ばしにできるサービスです。
主なメリットは次の3点です。
- 支払いを先延ばしにできる
- 審査や手続きが簡単
- 手数料が少ない
銀行融資やファクタリングといった他の資金繰り対策と比較して、審査がなく、手数料も安いため、利用者が増えてきています。
支払いを先延ばしにできる期間は最大60日のため、短期の資金繰り対策となりますが、長期の資金調達の繋ぎとして活用することも可能です。
請求書カード払いの中でもさまざまなサービスがあり、手数料や支払い延長期間、振り込み日数が異なるため、自社の目的に合ったサービスを選びましょう。