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白色申告の事業専従者控除とは?控除額・計算例など

更新日: 2024/07/05
白色申告の事業専従者控除とは?控除額・計算例など

夫婦や親兄弟でビジネスを行う白色申告者は、一緒に働く家族の人数などに応じた控除が受けられます(事業専従者控除)。家族従業員が2人いれば、100万円ぐらいの控除額になることもあるので、上手に活用しましょう。

INDEX

目次

    白色申告の事業専従者控除とは?

    白色申告の事業専従者とは?

    白色申告者に事業を手伝ってくれる親族がいる場合に、その親族が一定の要件を満たしていれば「事業専従者控除」の適用を受けられます。

    事業専従者控除とは?

    概要 白色申告で事業専従者がいる場合に、所定の金額を収入から差し引ける制度
    要件 以下の両方を満たすこと
    ・「事業専従者」に該当する親族がいる
    ・「収支内訳書」と「確定申告書」の該当箇所に必要事項を記載する
    控除額 ・配偶者が事業専従者の場合:最高86万円
    ・配偶者以外の親族が事業専従者の場合:1人につき最高50万円

    要件中の「事業専従者」とは、“家業に専念してくれる家族従業員”くらいのイメージです。”従業員”といっても、実際に給与を支払う必要はありません。白色申告者の親族が、事業専従者の要件さえ満たしていればOKです。
    >> 事業専従者の要件について詳しく

    事業専従者控除を受けるには、確定申告書類に必要事項を記載します。事前の届出などは必要ありません。ただし「配偶者控除」や「扶養控除」と併用はできないので注意しましょう(詳細は後述)。

    事業専従者控除の控除額

    事業専従者控除の控除額は、下記のA・Bのうち、いずれか低い方の金額です。

    A 専従者が配偶者なら86万円、配偶者以外なら専従者1人につき50万円
    B 「事業所得等 ÷(事業専従者の数 + 1)」の金額

    「事業所得等」は、事業専従者控除を適用する前の金額で考えます。収入が事業収入のみの人なら「事業収入 - 必要経費 = 事業所得等」で計算すればOKです(不動産所得や山林所得があれば、その金額も事業所得等に含める)。

    ここからは、事業専従者控除の計算例を紹介していきます。

    計算例① 配偶者のみ

    まず「事業専従者が配偶者のみ」の場合について説明します。先述のとおり、AとBを比較して、低いほうの金額が専従者控除額になります。

    事業所得150万円、専従者が1人(配偶者)の場合

    A 86万円
    B 150万円 ÷ (1 + 1) = 75万円

    この場合は、Bのほうが金額が低いので、75万円の専従者控除を受けることになります。

    計算例② その他の親族のみ

    事業専従者が配偶者以外の親族(両親・子供・いとこなど)のみの場合、控除額の計算は以下のように行います。

    所得300万円、専従者が1人(子供)の場合

    A 50万円
    B 300万円 ÷ (1 + 1) = 150万円

    この場合は、Aの金額のほうが低いので、専従者控除額は50万円です。

    計算例③ 配偶者 & その他の親族

    配偶者が事業専従者で、その他の親族も事業専従者である場合、控除額の計算は以下のように行います。先述の通りAの金額は、配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら50万円です。

    【ケース1】所得450万円、専従者が2人(配偶者・子供)の場合

    A 86万円 + 50万円 = 136万円
    B 450万円 ÷ (2 + 1) = 150万円

    上記のケースでは、専従者控除額は136万円です。

    【ケース2】所得500万円、専従者が4人(配偶者・父・母・子供)の場合

    A 86万円 + (50万円 × 3) = 236万円
    B 500万円 ÷ (4 + 1) = 100万円

    最後のケースでは、100万円が専従者控除額になります。

    事業専従者控除の適用を受けるには?

    白色申告の事業専従者控除を受けるために、事前の届出は必要ありません。確定申告の際に「収支内訳書」と「確定申告書」の該当部分に必要事項を記入するだけでOKです。

    収支内訳書

    収支内訳書のうち、事業専従者控除に関する記入箇所は、1ページ目の以下の部分のみです。

    事業専従者控除の記入箇所(収支内訳書 1ページ目)

    確定申告書

    確定申告書は、第一表と第二表にそれぞれ記入が必要です。この際、申告書に記載するのは「控除額」で、実際に給与として支給した金額ではないので注意しましょう。

    第一表 第二表
    事業専従者控除の記入箇所(確定申告書第一表) 事業専従者控除の記入箇所(確定申告書 第二表)

    なお、事業専従者は「配偶者控除」や「扶養控除」の対象になりません。たとえば、あなたの配偶者が事業専従者の要件を満たす場合でも、状況によっては事業専従者として扱わず、配偶者控除を適用したほうが有利なケースもあります。

    青色申告の「専従者給与」との違い

    白色申告者は、生計を一にする親族に支払った給与を経費にすることはできません。かわりに、その親族が事業専従者の要件を満たす場合は「事業専従者控除」を受けられます。

    一方で青色申告者なら、事前に税務署へ届出を提出しておけば、青色事業専従者に支払った給与を全額「専従者給与」として経費にできます(青色事業専従者給与の特例)。

    専従者控除(白色)と専従者給与(青色)の違い

    白色申告 青色申告
    制度の名称 専従者控除 専従者給与
    上限金額 あり
    (事業専従者1人につき最高86万円)
    なし
    事前の届出 不要 必要

    白色申告から青色申告に切り替える際は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を忘れずに提出しましょう。この提出を忘れると、たとえ青色申告者であっても専従者給与の恩恵を受けられなくなってしまいます。
    >> 青色申告の専従者給与について詳しく

    まとめ

    個人事業主が、生計を一にする親族に支払う給与は、原則として経費に計上できません。そのかわり、白色申告者は一定の要件を満たすことで「事業専従者控除」を受けられます。

    事業専従者控除のポイント

    • 事業専従者のいる白色申告者が受けられる控除
    • 控除額は、専従者が配偶者なら最高86万円、それ以外なら1人につき最高50万円
    • 控除の適用を受けるには、収支内訳書と確定申告書の該当箇所に記入が必要
    • 事前の届出は必要ない

    年間6ヶ月を超えて、フルタイムで家業を手伝ってくれる同居の家族などは、たいていの場合で「事業専従者」として扱うことができます。

    ちなみに、事業専従者は「扶養控除」や「配偶者控除」の対象になりません。状況によっては、要件を満たす親族がいてもあえて事業専従者として扱わず、これらの控除を受ける方が節税になることもあります。

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