個人事業主が「白色申告」を選ぶメリット・デメリットをまとめました。白色申告は、青色申告にくらべて帳簿付けがカンタンで、確定申告での提出書類も少ないです。ただ、青色申告ならではの特典は受けられないので注意しましょう。
青色申告のメリット・デメリット【個人事業主】白色申告との違いは?
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目次
白色申告と青色申告の比較
個人事業主の確定申告は「白色申告」と「青色申告」の2種類に大別できます。白色申告のほうが事務負担が少ないですが、節税の面では青色申告に劣ります。
メリット | デメリット |
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白色申告を選ぶなら、事前申請は不要です。一方、青色申告を選ぶ場合は「次回から青色申告を始めますんでヨロシク!」と、税務署へ事前申請をしておく必要があります。
ひとことで言うと、白色申告のメリットは「カンタン!ラク!」という点に尽きます。とはいえ、近年はクラウド会計ソフトの進化が目覚ましく、うまく活用すれば青色申告もかなりカンタンにできます。
青色申告をカンタンにするクラウド会計ソフト
白色申告のメリット
白色申告のメリットは、主に下記の3つです。
- 帳簿づけがカンタン
- 確定申告の提出書類が少ない
- 事前申請の必要なし
ここからは、3つのメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。
メリット① 帳簿づけがカンタン
白色申告の帳簿付けは「単式簿記」で構いません。家計簿やお小遣い帳と同じ感覚で、事業の「収入」と「必要経費」を記録するだけでOKです。
白色申告の帳簿づけ
白色申告 | 青色申告 (55万円・65万円控除) |
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単式簿記で帳簿をつける → シンプルで簡単! |
複式簿記で帳簿をつける → 初心者にはハードルが高い |
ちなみに青色申告でも、10万円の特別控除で妥協すれば、単式簿記での記帳が認められます。ただ、同じ単式簿記でも、下記のように白色申告のほうがよりカンタンです。
白色申告 | 青色申告 (10万円控除) |
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事業の「収入」と「必要経費」のみ → 記帳する項目が少ない |
現金出納帳や預金出納帳が必要 → 記帳する項目が多い |
さらに、白色申告の場合は「1日分の売上をまとめて一括記帳してもOK」など、ルールがけっこうゆるいです。一方、青色申告(10万円控除)では、1件1件ちゃんと記帳しないといけません。
また、白色申告であれば、ずっと無料で「やよいの白色申告 オンライン」というクラウド会計ソフトを利用できます。これも白色申告者にとっては嬉しいポイントです。
メリット② 確定申告時の提出書類が少ない
個人事業主の確定申告では、主に「決算書」と「確定申告書」を提出します。白色申告と青色申告では「決算書」の種類が異なります。白色申告の場合は「収支内訳書」という、2ページ構成のシンプルな決算書を提出します。
白色申告で提出する書類
白色申告 | 青色申告 (55万円・65万円控除) |
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収支内訳書(全2ページ)を提出する → 収入と必要経費を集計 |
青色申告決算書(全4ページ)を提出する → 損益計算書 + 貸借対照表 |
「収支内訳書」には、帳簿の集計結果などを記入します。白色申告の帳簿はシンプルなので、青色申告と比べると集計の手間は少ないです。無料の会計ソフト「やよいの白色申告 オンライン」を使えば、その集計作業すら自動化できます。
青色申告で提出する「青色申告決算書」は、主に損益計算書と貸借対照表から成ります。事業に関係するお金や資産について、余すところなく記入しなくてはいけません(ただし、10万円控除なら貸借対照表は不要)。
青色申告で提出する書類
会計の知識がない初心者でも、青色申告用のクラウド会計ソフトを使えば、簡単に「帳簿付け〜確定申告書類の作成」ができます。これなら事務作業に忙殺されることなく、節税メリットをゲットできます。
メリット③ 事前申請の必要なし
白色申告の場合は、事前申請が不要です。一方、青色申告をする場合は、定められた期間までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。
白色申告 | 青色申告 |
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事前申請の必要なし → 面倒な手続きが不要! |
事前申請の必要あり → 所定の期限までに申請書を提出 |
ちなみに、青色申告から白色申告へ切り替えるのは、確定申告の当日でも可能です。「複式簿記に挑戦したけど無理だったので、やっぱり白色申告にします!」という人は、確定申告書と一緒に「青色申告の取りやめ届出書」を提出しましょう。
青色申告の申請期限は?
白色申告のデメリット
白色申告のデメリットとしては、主に下記の4つが挙げられます。
- 10万円 or 55万円 or 65万円の特別控除なし
- 赤字を繰り越せない
- 専従者の給与を経費にできない
- 少額減価償却資産の特例を受けられない
ここからは、4つのデメリットをそれぞれ解説していきます。
デメリット① 10万円 or 55万円 or 65万円の特別控除なし
白色申告者は「青色申告特別控除」を受けられません。個人事業主にとっては数少ない節税手段の一つなので、これを受けられないのは大きなデメリットです。
白色申告 | 青色申告 |
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特別控除なし → 税金が軽減されない |
10万円・55万円・65万円 いずれかの特別控除を受けられる → 節税につながる |
「青色申告特別控除」は、クリアする要件の難度に応じて「10万円・55万円・65万円」のいずれかを事業の所得から差し引ける制度です。
青色申告特別控除とは、簡単に言うと「控除額のぶんだけ収入を少なく計算していいですよ」という制度です。赤字の年については、控除を適用しなくても収入が経費と相殺されるので、青色申告特別控除があってもなくても変わりません。
デメリット② 赤字を繰り越せない
その年に損失(赤字)が出たとしても、白色申告では基本的に赤字を繰り越せません。一方、青色申告ならその損失額を翌年以降に繰り越すことができます。
白色申告 | 青色申告 |
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基本的には赤字を繰り越せない → 翌年が黒字でも節税できない |
赤字を繰り越せる(最長3年) → 翌年以降、黒字であれば節税できる |
赤字が出た年の損失を繰り越せる場合、マイナスになった分を翌年に計上できます。つまり、翌年に利益が出れば相殺することができ、税金を少なくすることができます。
- 白色申告でも「印税・原稿料・作曲料などの変動所得を得ている」といった要件を満たせば、赤字を繰り越すことができる。ただ、この要件にあてはまる個人事業主は少ないため、基本的には「白色申告だと赤字は繰り越せない」と考えてよい。
デメリット③ 専従者の給与を経費にできない
青色申告者では、事業専従者に支払った給与が必要経費(青色事業専従者給与)として認められます。一方、白色申告では必要経費とは認められませんが、上限つきで「事業専従者控除」を受けられます。
白色申告 | 青色申告 |
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専従者の給与を経費にできない → ただし「事業専従者控除」がある |
専従者の給与を経費にできる* →「青色事業専従者給与」 |
* 事前の申請が必要
白色でも「事業専従者控除」として確定申告のときに控除を受けることができます。こちらは、事前の申請などは不要です。確定申告の際に提出する収支内訳書の該当する欄に、必要な情報を記入するだけでOKです。
デメリット④ 少額減価償却資産の特例を受けられない
固定資産(10万円以上のパソコンなど)を取得したら減価償却をします。このとき、白色申告者は「少額減価償却資産の特例」を利用できません。
白色申告 | 青色申告 |
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少額減価償却資産の特例を受けられない → 取得価額を一括で経費にできない |
少額減価償却資産の特例を受けられる → 30万円未満なら一括で経費にできる |
青色申告では、この特例を利用して、固定資産の取得費用が30万円未満なら一括で経費にできます。通常の減価償却に比べて、記帳の手間も少ないです。
少額減価償却資産の特例について詳しく
まとめ – 白色申告のメリットとデメリット
白色申告では「帳簿付け」や「確定申告書類の作成」にかかる手間が、青色申告に比べて少ないです。簿記に不慣れな方や、面倒な手続きを避けたい個人事業主は、白色での確定申告を検討しましょう。
- 細かく帳簿をつけることが面倒、もしくは苦手
- 事業による収入がそこまで多くない
- ちょっとくらい税金で損しても構わない
ただ、以下のメリット・デメリットをよく吟味してから決めましょう。とくに近年は、会計ソフトの進歩などによって、白色申告のメリットが相対的に小さくなっています。
メリット | デメリット |
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青色申告でも、クラウド会計ソフトを使えば帳簿付けや申告書作成をかなりラクに済ませられます。青色申告特別控除などの特典で節税もできるので、まさに「いいトコ取り」を実現できるわけです。
他方、「まだ節税するほど儲かってないよ〜」という個人事業主は、白色申告でも構いません。ずっと無料で使える会計ソフト「やよいの白色申告 オンライン」で、業務のさらなる効率化を図りましょう。