本ページでは、収支内訳書の「2ページ目」について、詳しい書き方を記入例付きで説明します。収支内訳書は2ページ構成で、必ず両方のページへの記入が必要です。
>> 収支内訳書 1ページ目の書き方についてはこちら
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目次
収支内訳書の書き方【2ページ目】
収支内訳書(一般用)は2ページ構成で、それぞれに以下の内容を記入します。該当する収入や支出が無い部分は、空欄で構いません。
収支内訳書1ページ目 | 収支内訳書2ページ目 |
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なお、この記事では2022年分(令和4年分)の収支内訳書を例に説明しています。
1. 売上(収入)金額の明細
事業で得た売上(報酬など)の内訳を、主な取引先ごとに記入します。取引先の情報と受け取った売上を、金額が大きいものから順番に書き入れましょう。飲食店や小売店といった、不特定多数を顧客とする場合は、売上金額の合計のみ記入すればOKです。
売上先名 | 取引先の会社名(屋号)や個人名 取引先が5つ以上ある場合は、売上が大きい4つを記入する |
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所在地 | 記入した取引先の会社や事務所の住所 |
売上(収入)金額 | 記入した取引先から1年間に受け取った金額の合計 |
上記以外の売上先の計 | 上に記入した4つの取引先以外から受け取った金額の合計 |
計 | 1年間に受け取った売上金額の合計 1ページ目の①と必ず同じ金額になる |
商品やサービスが提供が完了していれば、お金をまだ受け取っていなくても、その金額は「売上(収入)金額」に含めます。つまり「納品は12月だけど報酬の受け取りは1月」という場合の売上も、12月分にカウントしておく必要があるということです。
>> 売上はいつ計上する?実現主義で考える収益の計上基準
2. 仕入金額の明細
「売上(収入)金額の明細」と同じように、主な仕入先の情報と仕入金額を記入します。ウェブデザイン業やコンサルタント業など、そもそも仕入れをしない業種の場合は、まるごと空欄で構いません。
仕入先名 | 仕入れを行った取引先の会社名(屋号)や個人名 取引先が5つ以上ある場合は仕入金額が大きい4つを記入する |
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所在地 | 記入した取引先の会社や事務所の住所 |
仕入金額 | 記入した取引先から1年間に仕入れた商品の合計金額 |
上記以外の仕入先の計 | 上に記入した4つの取引先以外から仕入れた商品の合計金額 |
計 | 1年間に仕入れた商品の合計金額 1ページ目の⑥と必ず同じ金額になる |
3. 減価償却費の計算
この欄では、今回の確定申告で経費計上する「減価償却費」の金額を計算します。減価償却とは、10万円以上の高価な資産の購入費用を、毎年少しずつ経費にしていくこと。そのような資産を持っていない場合、この欄を記入する必要はありません。
減価償却資産の名称等(繰延資産を含む) | 減価償却の対象となる資産の名前 例:パソコン・デスク・冷暖房機器・自動車・倉庫 |
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面積又は数量 | 資産の個数 面積で記入するのは建物などの場合のみ |
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取得年月 | 購入した日付 年号の表記は「20XX年」と「令和XX年」どちらでも |
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取得価額 (償却保証額) |
イ | 購入にかかった費用 定額法の場合、カッコの中は何も記入しない |
償却の基礎になる金額 | ロ | 減価償却費を算出する基準になる金額 定額法の場合は「取得価額(イ)」と同じ金額を記入する |
償却方法 | 「定額法」や「定率法」など、減価償却の方法 個人事業では「定額法」が一般的 |
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耐用年数 | 資産の耐用年数 (主な資産の法定耐用年数表) 新品で購入した資産の場合は法定耐用年数を記入する |
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償却率又は 改定償却率 |
ハ | 耐用年数に応じた償却率 |
本年中の 償却期間 |
ニ | 1年のうちでその資産を使用した月数 例:4月に購入して12月まで使ったら「9」 |
本年分の 普通償却費 |
ホ | (ロ)×(ハ)×(ニ)の金額 |
特別償却費 | ヘ | 震災被害などに関わる特例によって減価償却する金額 本的には何も記入しない |
本年分の 償却費合計 |
ト | (ホ)+(ヘ)の金額 特別償却費が無ければ(ホ)と同じ金額を記入する |
事業専用割合 | チ | 対象の資産を事業用に使った比率(家事按分をする場合) 事業でしか使用していない場合は「100」と記入する |
本年分の 必要経算入額 |
リ | (ト)+(チ)の金額 家事按分をしない場合は(ト)と同じ金額を記入する |
未償却残高 (期末残高) |
ヌ | 購入費用のうち、まだ経費計上していない金額 その年に買った資産なら(イ)から(ト)を引いた金額になる |
摘要 | 減価償却の方法に関する注意書き 中古資産や、特殊な償却方法の場合に記入する |
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計 | 縦列それぞれの合計金額 「本年分の必要経費算入額」の合計は1ページの⑬と一致 |
なお、上記は「定額法」で減価償却をする際の記入方法です。10万~20万円のものを「一括償却資産」として扱う場合は、記入例を参考にしてください。また、個人事業では少ないケースですが「定率法」を選択する場合も記入内容が異なります。
4. 地代家賃の内訳
1ページ目の⑮にある「地代家賃」の詳細を記入します。地代家賃に該当する典型例は、貸事務所や貸店舗の賃借料です。自宅兼事務所の家賃の一部を家事按分で経費に計上する場合も、この欄に詳細を記入しなくてはなりません。
支払先の 住所・氏名 |
物件を所有する大家さんや会社の名前と住所 ※借りている物件の住所を書くのではない |
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賃借物件 | 借りている物件の使いみち 例:自宅兼事務所・事務所・店舗・倉庫・工場 |
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本年中の賃借料 ・権利金等 |
権 更 |
1年間に支払った「権利金」や「契約更新料」の金額 当てはまる方に○をして金額を記入 |
賃 | 1年間に支払った「賃借料(家賃)」の合計額 上の欄に書いた権利金や更新料は、ここに含めない |
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左の賃借料のうち 必要経費算入額 |
権利金や賃借料の合計(権更 + 賃)のうち経費に計上する金額 家事按分をしない場合は、単純に権利金や賃借料の合計 |
「権利金」には、物件を借りる際の保証金や礼金も含まれます。ただし、いずれ返還されるのが前提である敷金は含みません。また、不動産業者に支払う仲介手数料は「支払手数料」などの科目で地代家賃とは別に処理するため、ここに書くのはNGです。
5. 利子割引料の内訳
1ページ目の⑯にある「利子割引料」の詳細を記入します。利子割引料とは、主に事業用に借りたお金の利子を指します。ただし、銀行や消費者金融から借りたお金については内訳を記入しなくてOK。あくまでも、金融機関以外の個人や法人からお金を借りた場合に、この欄を使います。
支払先の 住所・氏名 |
利子などを支払った相手の住所と名前 金融機関以外の個人名や会社名を記入する |
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期末現在の借入金等の金額 | 期末時点(12月31日)で、まだ返済していない残高の金額 借り入れた金額からこれまでの返済額を差し引いた額を記入 |
本年中の利子割引料 | 1年間で支払った利子などの合計金額 |
左のうち必要経費 算入額 |
「本年中の利子割引料」うち、経費に計上する金額 家事按分をしない場合は、左の金額と一致する |
ちなみに利子割引料には、報酬で受け取った「手形」を現金化する際の手数料(割引料)も含まれます。とはいえ、手形を利用する事業者は多くありません。もし、報酬を手形で受け取り、金融機関以外で期日前に現金化することがあれば、その詳細も記入しましょう。
6. 本年中における特殊事情
申告内容について、税務署員に伝えておきたい特殊な事情をここに記入します。特に伝えておきたいことがなければ、空欄のままでもまったく問題ありません。
ただ、売上や経費の金額が例年と比べて急激に増減した年などは「税額をごまかしているのでは?」を疑われやすくなります。そのような場合、以下のように増減の要因を説明しておけば、税務署員からの無用の疑いを多少なりとも防ぐことができます。
特殊事情の例① 自己都合により売上が大幅に減少した場合
特殊事情の例② 一部の経費が大幅に増加した場合
売上や経費の増減による急激な所得の変化は、虚偽の申告を疑われるポイントです。心配な点がある場合は、念のため特殊事情の欄に記入しておくと良いでしょう。