不動産所得 – 収入の具体例や「事業的規模」の利点など

更新日: 2020/09/23
不動産所得 – 収入の具体例や「事業的規模」の利点など

土地やアパートの貸し付けによって得た所得は「不動産所得」として分類されます。不動産所得がある人は、必ず帳簿を作成しなくてはなりません。本記事では不動産所得の計算方法や、収入・必要経費の具体例、確定申告における提出書類などを紹介しています。

INDEX

目次

    不動産所得とは

    「不動産所得」とは、不動産などの貸し付けによって発生する所得のことです。国税庁は、以下の3種類による所得を不動産所得として挙げています。

    • 土地や建物などの不動産の貸付
    • 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付
    • 船舶や航空機の貸付

    ※ただし、事業所得や譲渡所得に該当するものを除く

    本記事では、多くの人に該当する“建物を貸したときに発生する所得”つまり、賃貸アパートなどを経営するケースを中心に説明していきます。

    不動産等の貸し付けなのに「事業所得」や「譲渡所得」となるケースとは?

    たとえば、アパートの部屋を単に貸すだけなら「不動産所得」ですが、食事もセットで提供するような場合は「事業所得」または「雑所得」に区分されます。また、土地を貸し付ける際に受け取る権利金が、相当に多額である場合は「譲渡所得」となります。

    不動産所得の範囲

    不動産の貸付による所得の区分

    「事業的規模」なら優遇措置あり

    不動産所得において、客観的に見て「事業」と呼べる規模(=事業的規模)で不動産貸し付けを行っている場合、税制面で有利になることが多いです。原則として、事業的規模かどうかを判断する明確な基準はなく、実態を見て自ら判断しなくてはなりません。

    ただ、建物の貸し付けについては「この基準を満たしていれば事業的規模ですよ」という基準(=形式基準)が定められています。以下のいずれかを満たしていれば、よほど特別な事情がない限りは、事業的規模であると判断してOKです。

    事業的規模かの判定基準

    なお、事業的規模だからといって「事業所得」として確定申告するわけではありません。あくまで、不動産所得として扱います。不動産所得は、その所得が事業的規模か否かによって、以下のように税務上の取り扱いが異なります。

    所得金額の計算上の相違点

    事業的規模 それ以外(業務的規模)
    取り壊し・除却などによる資産の損失 全額が必要経費にできる 上限付きで必要経費にできる
    回収不能の賃料
    (貸倒損失)
    回収不能となった年分の必要経費にできる 収入に計上した年分まで遡り、なかったものとして計算をやり直す
    青色専従者給与
    (白色専従者控除)
    経費にできる 経費にできない
    青色申告特別控除 最高65万円 最高10万円

    保有する不動産が増えて、事業的規模となったら「開業届」の提出が必要です。家族に事業を手伝ってもらう人は「専従者給与」の申請なども一緒に済ませるとよいでしょう。通常、家族への給与は経費にできませんが、一定の要件を満たせば経費にできます。

    なお、65万円(または55万円)の「青色申告特別控除」をねらう場合は、青色申告の申請書を出した上で、複式簿記による帳簿づけが必要です。この控除に関しては、ほかにも細かな要件があるので、よく確認しておきましょう。

    所得の計算方法

    不動産所得は「総収入金額」から「必要経費」を差し引いて算出します。

    不動産所得の計算式

    たとえば、賃貸経営によって得た収入(総収入金額)が600万円あるとします。この収入を得るために要した費用(必要経費)が合計して150万円あったら、不動産所得は450万円ということになります。

    帳簿づけは義務

    不動産所得を得ている人は、収入金額や必要経費について帳簿を作成する義務があります。そして、その帳簿を元に確定申告の書類を作成します。なお、契約書やレシートなど取引の証拠となる書類も保存しておく必要があります。

    会社員が副業的に賃貸経営を行っている場合

    会社員の方は勤務先で年末調整を行っているかと思いますが、これでは不動産所得を申告できません。不動産所得が20万円を超える場合は、年末調整後に自分で申告する必要があります。
    >> 副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要?

    収入の具体例

    1~12月の間に得た収入を合計したものが「総収入金額」です。不動産収入の具体例は、以下のとおりです。

    • 貸し付けによる賃貸料(家賃収入など)
    • 名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受領するもの
    • 受け取った敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
    • 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など

    家賃収入は、一般的に「賃貸料」「売上」などの勘定科目で記帳します。このほか、不動産所得に対応している会計ソフトでは「礼金、権利金」「更新料」などの勘定科目が備わっています。

    名義書換料・承諾料とは
    借地上に建物を所有している者が、第三者に借地権付きで建物を譲渡する際に、地主に承諾を得るために支払う費用を「名義書換料(めいぎかきかえりょう)」または「承諾料」という

    経費の具体例

    不動産収入を得るための「必要経費」について、よくある具体例を以下にまとめました。賃貸経営などを行う上で必要な支出であることが大前提です。経営に無関係な支出は、当然ながら必要経費に計上できません。

    具体例 勘定科目
    • 所有物件の固定資産税や都市計画税
    • 個人事業税
    • 物件を取得したときの不動産取得税や登録免許税
    租税公課
    • 物件の火災保険や地震保険の保険料
    損害保険料
    • 壁紙の交換など原状回復にかかる費用
    • エレベーターなど設備の保守・点検にかかる費用
    修繕費
    • 資産(賃貸物件など)の減価償却費
    減価償却費
    • 金融機関から融資を受けた際の借入金の支払利息
    借入金利子
    • 借地に物件を建設している場合の賃貸料
    地代家賃
    • 従業員に支払う給料(事業専従者の給与は含まない)
    給料賃金
    • 不動産管理会社などに支払う委託料
    外注管理費

    もちろん上記にない費用でも、経営する上で支出したものは必要経費に計上できます。たとえば「通信費」や「消耗品費」などが挙げられます。
    >> 必要経費の一覧表

    不動産経営で気をつけたいのが「修繕費」の扱いです。修繕費は「資本的支出」との区別が難しい勘定科目です。資本的支出と判断されるものは、減価償却が必要です。以下のどちらかに当てはまれば「修繕費」として計上して問題ありません。

    • 20万円未満である
    • 3年以内の周期で修繕する必要がある

    >> 修繕費の判断基準について詳しく

    減価償却とは

    建物などの固定資産を取得した際は、その費用を何年かに分けて毎年少しずつ経費に計上します。これを減価償却といいます。経費に計上する際に使う勘定科目が「減価償却費」です。

    確定申告で提出する書類

    不動産所得は、確定申告によって税額を計算し、納税します。確定申告で提出する書類は下記のとおりです。書類を作成する際は「不動産売買契約書」など、所得にかかわる書類を一通り準備しておくとスムーズです。

    確定申告で提出する主な書類

    個人事業主が確定申告で提出する書類

    ① 決算書

    白色申告か青色申告かによって提出する決算書は異なります。また、決算書はそれぞれ「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」の3種類あります。不動産所得については、「不動産所得用」を使いましょう。

    収支内訳書(白色申告の場合) 青色申告決算書(青色申告の場合)
    収支内訳書(不動産所得用) 青色申告決算書(不動産所得用)

    ② 確定申告書

    確定申告書は「申告書A」と「申告書B」がありますが、不動産所得の申告で使うのは「申告書B」です。「申告書A」には、不動産所得の欄が設けられていないので使用できません。

    ③ 添付書類

    各種控除を受けるための証明書は「添付書類台紙」に貼り付けて提出します。書類によっては、添付ではなく窓口で提示するだけで済むものもあります。

    不動産所得が赤字になったら? – 損益通算

    不動産所得が赤字になったら「損益通算」ができます。たとえば、アパートの賃貸経営を行いつつ、飲食店の経営も行っていたとします。不動産所得は100万円の赤字、事業所得は500万円の黒字となった場合、損益通算をすると合計所得金額は400万円となります。

    不動産所得は赤字のときにほかの所得と相殺できる

    損益通算の対象外となるもの

    不動産所得を計算する上での損失でも、次のような所得は損益通算することができません。

    • 生活上必要のない資産(別荘など)の貸し付けにかかるもの
    • 土地(土地に存する権利を含む)を取得するために要した負債の利子
    • 一定の組合契約に基づいた事業から生じたもののうち、特定組合員にかかるもの

    まとめ

    アパート経営などによる家賃収入は、その経営にかかった必要経費を差し引いて「不動産所得」の金額を求めます。収入や経費は、帳簿に記帳することが義務付けられています。

    不動産所得の概要

    該当する所得 ・土地や建物などの不動産の貸付による所得
    ・地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付による所得
    ・船舶や航空機の貸付による所得
    具体例 ・貸し付けによる賃貸料収入(家賃収入など)
    ・名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受領するもの
    ・敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
    ・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など
    課税方法 総合課税
    所得の計算方法 総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額
    申告 自分で確定申告をする

    不動産所得は、その規模が事業的といえるかどうかで、所得金額の計算上の取り扱いが異なります。事業的規模の場合、税制面でいくつかの優遇を受けられます。建物の貸し付けについては、以下の「形式基準」が定められています。

    事業的規模の基準(形式基準)

    貸家 アパートやマンション
    おおむね5棟以上 おおむね10室以上

    事業的規模であれば、青色申告特別控除が最高で65万円受けられるなどのメリットを享受できます。不動産経営の規模が大きくなって形式基準を満たしたら「開業届」を提出しましょう。