副業で稼いだ金額によっては、会社員でも確定申告が必要になります。通常、会社の給料のほかに、20万円を超える所得があれば確定申告が必要と言われています。本記事では、この基準についてわかりやすく説明します。
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目次
確定申告が必要な会社員
ほとんどの会社員は、勤め先が税金関係の手続きを済ませてくれるので、自分で確定申告をする必要がありません。
ただし、たとえ会社員でも、以下のいずれかに当てはまる人には確定申告が義務づけられています。副業をしている会社員は、②と③に該当する可能性が高いです。
確定申告が必要な会社員
- 年間の給与収入が2,000万円超の人
- 「給与所得と退職所得以外の所得」が20万円超の人
- 副業の給与収入と「給与所得と退職所得以外の所得」の合計が20万円超の人
- 同族会社の役員等で、その会社から貸付金の利子などを受け取っている人
- 災害減免法により、源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得にかかる税額が、源泉徴収された金額よりも多くなる人
「所得」とは、おおよそ「収入から必要経費などを差し引いた金額」のことだと考えましょう。たとえば、会社勤めやアルバイトで受け取る給料などを「給与収入」と呼び、そこから所定の金額(給与所得控除)を差し引いた額を「給与所得」と呼びます。
②と③の要件を整理すると、以下のような場合分けができます。本業以外で「給与収入」を得ているかどうかによって、ボーダーラインの考え方が少し異なるのです。
副業で確定申告が必要になるボーダーライン
副業収入が「給与収入」でない場合 | 副業収入が「給与収入」の場合 |
---|---|
「給与所得と退職所得以外の所得」が20万円超 | 「副業の給与収入」と「給与所得と退職所得以外の所得」の合計が20万円超 |
この表現のままでは分かりづらいのではないでしょうか?これから、それぞれが示すものを図示しながら具体的に説明していきます。
副業収入が「給与収入」以外の場合
- アフィリエイト収入がある
- 株や仮想通貨の取引による収入がある
- 自作した商品の販売や、せどり、転売などによる収入がある
- 本業の他に、個人名義の事業活動で得ている収入がある
本業以外で給与収入を得ていない会社員は、「給与所得と退職所得以外の所得」が20万円を超えたら確定申告が必要になります。
たとえば、副業でハンドメイド雑貨の販売をしている会社員は、その売上から原材料費などを差し引いた金額が20万円を超えたら、確定申告が必要です。(ちなみに、このような所得は「雑所得」に該当するケースが多い)
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なお、売上が20万円を超えていても、必要経費の差し引きで「所得」は20万円未満におさまることがあります。その場合、確定申告をする必要はありません。
副業収入が「給与収入」に当たる場合
- 本業の他にアルバイトをしている
- 2つ以上の会社に勤めつつ、さらに執筆業などの個人的な活動もしている
- 本業の他にアルバイトをして、さらに株取引などの収入も得ている
本業以外でも給与収入を得ている会社員は、「副業の給与収入」と「給与所得と退職所得以外の所得」の合計が20万円を超えたら確定申告が必要です。
本業以外の収入が「副業の給与収入」だけなら、単純にその給与収入額が20万円を超えるかどうかで判断できるわけです。副業の勤め先から受け取る源泉徴収票で、「支払金額」の欄を確認しましょう。
ただ、「副業の給与収入」と「給与所得と退職所得以外の所得」をどちらも得ている人は、それらが合計で20万円を超えないかチェックする必要があります。
たとえば、本業の他にアルバイトをして、さらにアフィリエイト収入も得ている場合、副業の給与収入にアフィリエイトによる所得も加えて考えます。このとき、アルバイト収入はそのまま「収入」で、アフィリエイト収入は「所得」で計算する点に要注意です。
確定申告の方法
確定申告とは、簡単に言うと「去年はこれだけ儲かりました」と申告して、納める所得税の金額を確定する手続きです。当年の副業収入がボーダーラインを超えたら、原則として翌年の2月16日~3月15日にこの手続きを行います。
手続きといっても、基本的には「確定申告書」などを税務署に提出するだけです。その後、必要に応じて税金を納めたり、あるいは還付金を受け取ったりします。
ちなみに、2021年分の申告までは、申告内容に応じて「確定申告書A」と「確定申告書B」を使い分けていました。しかし、2022年分からは確定申告書が一本化されているので、A・Bの使い分けを気にする必要はありません。
確定申告書の統合について【令和4年分〜】
住民税の申告は必要?
所得税の確定申告とは別に、じつは住民税の申告という手続きも存在します。通常、確定申告をすれば、住民税の申告をする必要はありません。しかし、確定申告をする必要がない人でも、住民税の申告は必要な場合があります。
本記事では、副業による稼ぎがあってもそれが20万円以下ならば、確定申告の必要がないことを説明してきました。しかし、所得税の確定申告と違って、住民税の申告には「所得〇〇円以下なら申告不要」などという定めがありません。
つまり、原則的な話をすれば、副業の稼ぎが20万円以下であっても、住民税の申告は必要だということです。
確定申告 | 住民税の申告 | ||
---|---|---|---|
本業以外にも収入がある会社員 | 20万円超 | 必要 | 不要 |
20万円以下 | 不要 | 必要 | |
本業以外に収入のない会社員 | 不要 | 不要 |
この原則に従えば、副業による所得や給与収入がたとえば1万円でもあるなら、住民税の申告をすることになります。実際、以下のように明記している自治体もあります。
引用
確定申告の必要はないが、住民税申告の必要があるかた
・給与所得のあるかたで年末調整を受けているが、その他に合計20万円以下の年末調整を受けていない給与や、給与以外の所得があるかた
・給与所得のあるかたで支払者からの給与の報告が区に来なかったかた
・非課税証明書等の発行を受けたいかたや国民健康保険料の軽減措置、国民年金の納付猶予などの手続きをなさるかたで区に収入の資料のないかた
自治体によってアナウンスは異なりますので、詳しくは各自治体のホームページを確認して下さい。
まとめ
所得税の確定申告について、会社員が副業の稼ぎによって申告すべきボーダーラインは「20万円」です。その副業収入が、給与収入であるかどうかによって、下記のとおり扱いが異なります。給与収入とは、どこかに勤めてもらう給料のことです。
副業で確定申告が必要になるボーダーライン
副業収入が「給与収入」でない場合 | 副業収入が「給与収入」の場合 |
---|---|
「給与所得と退職所得以外の所得」が20万円超 | 「副業の給与収入」と「給与所得と退職所得以外の所得」の合計が20万円超 |
当年の副業収入がボーダーラインを超えたら、翌年の2月16日~3月15日に確定申告を行うのが原則です(期日が土日祝日と重なる場合は翌平日)。
ちなみに、ボーダーラインを超えなくても、税金の還付を受けるために任意で申告(還付申告)をすることも可能です。ただ、その場合は少額の副業収入についても申告が必要になります。必ずしも「20万円以下ならゼロと見なす」というわけではないのです。