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「事業所得」と「雑所得」の違い – 確定申告の扱いで異なる点

更新日: 2022/10/14
「事業所得」と「雑所得」の違い – 確定申告の扱いで異なる点

「事業所得」と「雑所得」のわかりやすい見分け方や、税務上の違いを解説します。取引に関する帳簿書類をきちんと保存している場合は「事業所得」に該当することが多く、税制上の優遇措置が受けやすくなっています。

INDEX

目次

    事業所得・雑所得の見極めポイント

    ごく簡単に言うと、本業で営む個人事業の収入などで、十分に事業性のあるものを「事業所得」と考えます。一方、会社員の副業収入などで、事業性の薄いものは「雑所得」として扱うことが多いです。

    事業所得 雑所得
    「事業所得を生ずべき事業」による所得
    例:農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの所得
    他の所得に含まれない所得
    例:シェアリングエコノミー、著述家以外の人が得る原稿料などによる所得

    ただ、一口に「事業性」と言われても、抽象的でよくわからないと思います。素人でも簡単に見分けられるよう、国税庁は以下のように例示しています(所得税基本通達35-2 および解説)

    わかりやすい見分け方 – 国税庁の例示

    事業所得 雑所得(業務)
    帳簿書類の保存あり 帳簿書類の保存なし

    ※ 社会通念(≒一般常識)に照らして総合的に判定するのが原則です

    きちんと帳簿を付けて、レシートなどの書類と合わせて適切に保存していれば、基本的には「事業所得」に該当すると考えられます。ただし、収入が少なすぎる副業や、赤字がずっと続いている場合は、帳簿があっても「雑所得」になりえます。
    事業所得と雑所得の見極め方について詳しく

    確定申告における扱いの違い

    そもそも、なぜ事業所得と雑所得をしっかり区別する必要があるかと言うと、確定申告での扱いが大きく異なるからです。主には以下のような違いがあります。

    事業所得 雑所得
    損益通算 できる できない
    青色申告の特典 適用できる 適用できない
    帳簿の作成・保存 義務 義務でない
    主な申告書類 決算書 + 確定申告書 確定申告書だけでOK*

    * 前々年の副業収入が1,000万円超の人などは例外

    事業所得は、赤字のときに損益通算をできたり、青色申告の特典を利用できたり、節税につながる制度が多いです。それに対して雑所得は、帳簿づけや申告に手間がかからないぶん、節税面では優遇されません。

    ちなみに、株式の譲渡などによる事業所得・雑所得は「分離課税」の対象となり、特殊な扱いをする必要があるので、本記事での説明からは除外しています。

    ① 損益通算の可否

    事業所得が赤字のときは、その赤字金額を他の所得から差し引くことができます(損益通算)。一方、雑所得の赤字について同様の処理はできません。

    給与所得との損益通算(事業所得と雑所得の違い)

    たとえば、アルバイトをしている個人事業主などは、事業が赤字ならそのぶん給与所得を抑えられます。しかし、副業をしている会社員などは、副業(雑所得)が赤字でも、その金額を給与所得から差し引くことはできません。

    損益通算とは
    一定のルールに従って、ある所得の赤字金額を他の所得から差し引くこと。損益通算できるのは、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得のいずれかが赤字になったときだけ。

    損益通算の具体的な手順などをわかりやすく

    事業所得が赤字の場合は、赤字になった分を他の所得から差し引き、最終的な納税額を減らせるわけです。

    ② 青色申告の特典

    青色申告とは、簡単に言うと「ちょっと面倒だけど特典がある申告方式」です。青色申告を選択すると、事業所得に様々な特典を適用できます。一方、雑所得には特典を適用できません。(というより、そもそも雑所得には青色申告という制度がない)

    青色申告の主な特典

    青色申告特別控除 クリアする要件に応じて、10万・55万・65万の控除が受けられる
    純損失の繰り越し 損益通算をしても控除しきれなかった事業の赤字金額を、翌年以後3年繰り越せる
    少額減価償却資産の特例 30万円未満の備品などについて、減価償却をせずに購入年の必要経費にできる
    青色事業専従者給与 専従者( ≒ 家族従業員)に支払った給与の全額を「専従者給与」として必要経費にできる

    >> 青色申告の特典について詳しく

    事業所得については、青色申告をすることで節税効果が見込めるわけです。ちなみに、事業所得と雑所得の両方を得ていても、青色申告の特典を適用できるのは事業所得に関わる部分だけです。

    ③ 記帳義務の有無

    事業所得を得ている人は、その事業の売上や経費などを帳簿に記録し、保存しておく義務があります(所得税法148条・232条)。そのため、もし税務調査が入れば、帳簿の内容もチェックされます。

    しかし、雑所得に関わる取引については、記帳の義務が定められていません。まったく帳簿をつけていなくても、そのことでペナルティを受けたりしないのです。

    事業所得 雑所得
    青色申告 白色申告
    帳簿の作成・保存が義務
    (細かいルールがある)
    帳簿の作成・保存が義務
    (簡易的でもよい)
    帳簿の作成・保存が義務でない

    >> 帳簿づけってなにをすればいいの?

    とはいえ、雑所得の場合でも、収入や必要経費の金額が記載された書類(請求書や領収書など)はとっておきましょう。確定申告の際には、それらをもとに所得金額を算出します。なお、申告後も5年ほど保存しておけば、万が一税務調査が入っても安心です。

    ちなみに、2022年分の確定申告から、前々年の「雑所得(業務)」の収入が年間300万円を超えた人は、領収書などの保存が義務になっています。帳簿を作る必要が無いことは変わりませんが、書類の扱いには注意しましょう。
    雑所得でも領収書の保存が必要に?【2022年1月~】

    ④ 確定申告の提出書類

    事業所得の申告では、主に「確定申告書」と「決算書」を提出します。一方、雑所得は基本的に「確定申告書」だけで申告できます。

    主な提出書類

    事業所得の申告 雑所得の申告
    ・確定申告書
    ・収支内訳書(白色申告者のみ)
    ・青色申告決算書(青色申告者のみ)
    ・確定申告書

    2021年分以前の申告をする際には、申告内容に応じて「確定申告書A」と「確定申告書B」を使い分ける必要があります。「A」は事業所得の申告に対応していません。

    なお、2022年分からは「確定申告書A」が廃止され、申告書の様式が一本化されています。したがって、A・Bの使い分けを気にする必要はありません。
    確定申告書の統合について【令和4年分〜】

    どちらでも変わらないこと

    事業所得でも雑所得でも、以下のポイントは変わりません。

    • 確定申告が必要になるライン
    • 必要経費の考え方
    • 税率
    • 特定の事業にかかる個人事業税

    確定申告が必要になるライン

    たとえば、副業をする会社員は、副業収入が事業所得・雑所得のどちらに該当する場合でも、その所得が20万円を超えたら確定申告が必要です。また、給与所得がない人は、基本的に各種の所得金額が、所得控除の額を超えると確定申告が必要になります。

    必要経費の考え方

    事業所得も雑所得も、基本的に「収入 - 必要経費」で算出することは変わりません。必要経費とは、収入を得るために要した売上原価や販売費などのことで、その範囲も原則としては同じです。(ただし、専従者や青色申告に関するものを除く)

    税率

    事業所得・雑所得どちらの場合でも、所得税や住民税の税率は同じです。株式の譲渡などよる所得には特殊な税率が適用されるケースもありますが(分離課税)、事業所得・雑所得の区別で税率が変わることはありません。

    特定の事業にかかる個人事業税

    個人事業税は、基本的には事業所得者が納める税金です。ただし、厳密に言えば、個人が営む“特定の事業”(法定業種)にかかる税金です。なので、雑所得者であっても、特定の事業を営んでいれば、事業所得者と同様に課税される場合があります(地方税法72条の50)。

    「事業性」とは? 過去の判例など

    そもそも法令上は「事業所得」と「雑所得」を区別する明確な基準はありません。したがって、厳密な判定を行うには社会通念に照らし、個別のケースごとに「事業性」の有無を考える必要があります。

    「事業性」の要素 – 過去の判例・裁決事例から

    営利性・有償性の有無 何らかの対価として収益を得られるか
    継続性・反復性の有無 継続して繰り返し収益を得られるか
    企画遂行性の有無 計画的に収益を得られるよう営まれているか
    人的・物的設備の有無 従業員や機材などが備えられているか
    資金の調達方法 相応のリスクを伴って資金を調達しているか
    精神的・肉体的疲労の程度 精神的・肉体的に相応の労力を投じているか
    その者の職業・生活状況 収入状況などから、事業に合理性が認められるか

    ※ 上記は、有名な判例・裁決事例を参考に、重視されやすい要素を簡単にまとめたものです。

    税務調査により「事業ではない」との処分を受け、それでもなお不服を申し立てる場合には、社会通念に照らして総合的に判定するしかないでしょう。上記の要素のうち、満たしている要素が多いほど「事業性」が認められやすくなる傾向にあります。

    とはいえ、特殊な状況でないかぎり、税務調査は国税庁の通達に沿って行われるはずです。本記事の冒頭で解説したように、帳簿書類の有無によって見分ければ、実務においては概ね問題ないでしょう。

    まとめ

    事業所得雑所得は、主に以下のような点で扱いが異なります。なお、事業所得は青色申告を選択できるため、申告方式によって異なる項目もあります。

    事業所得 雑所得
    青色申告 白色申告
    損益通算
    青色申告の特典
    帳簿作成・保存 義務あり 義務あり(簡易的) 義務なし
    主な申告書類 ・確定申告書
    ・青色申告決算書
    ・確定申告書
    ・収支内訳書
    確定申告書だけ*

    * 前々年の副業収入が1,000万円超の人などは例外

    事業所得には青色申告の特典を適用できるため、雑所得より節税はしやすいです。また、事業所得が赤字の場合は、損益通算により他の所得を抑えられるので、トータルで節税につなげられます。一方、雑所得には会計や申告の手間が少ないというメリットがあります。

    とはいえ、そもそも「事業所得と雑所得のどっちで申告しようかなぁ」と自由に選べるわけではありません。帳簿書類を保存していない場合や、社会通念上の“事業”に当てはまらない場合、「事業所得」とは認められない恐れがあるので注意しましょう。

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