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TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」を解説【比較一覧表】

更新日: 2023/09/01
TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」を解説【比較一覧表】

TKC「FXクラウドシリーズ」は、税理士や公認会計士を通じて導入するクラウド会計ソフトです。税理士の顧問料が別途かかりますが、毎月のチェックを受けられるので、お金をかけてでも信頼性の高い帳簿や決算書を作成したい企業に向いています。

INDEX

目次

    TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」とは?

    TKC FXクラウドシリーズのロゴ

    「FXクラウドシリーズ」は、TKC全国会という組織に加入している税理士や公認会計士を通じてのみ導入できる、ちょっと特殊なクラウド会計ソフトです。市販されていないので、顧問税理士からおすすめされて導入するパターンも多いようです。

    「FXクラウドシリーズ」が適しているケース

    • お世話になっている税理士がTKCに加入している場合
    • 費用が多少かさんでも構わない場合
    • 資金調達を予定していて、金融機関からの信用を得たい場合

    「FXクラウドシリーズ」を利用するには、TKC会員の会計事務所と顧問契約を結び、原則として毎月の「巡回監査」を受ける必要があります。トータルで考えるとけっこう費用がかさむので、起業してすぐに導入するのはハードルが高いかもしれません。

    ただ、会計事務所からのお墨付きが必ずもらえる仕組みなので、信頼性の高い帳簿や決算書が作成できます。もし銀行などに決算書を提出する予定があれば、多少費用がかさんだとしても一考の価値はあります。

    TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」の種類

    「FXクラウドシリーズ」は、事業規模に合わせて以下の3つから最適なソフトを選択できます。一般的な個人事業主・フリーランスは「FXまいスタークラウド」で充分です。中小法人で、部門管理などが必要であれば「FX2クラウド」が適しています。

    TKC FXクラウドシリーズの種類(プラン体系)

    各サービスの費用や機能を、一覧表にまとめました。基本的には顧問税理士からおすすめされたものを選べばOKです。ちなみに、同じような機能は「弥生・freee・マネーフォワード」のクラウド会計ソフトにも搭載されています。記事後半で詳しく比較しているので、そちらも参考にしてみてください。

    FXまいスタークラウド FX2クラウド FX4クラウド
    事業規模の目安 ~年商5000万円 年商5000万円

    年商5億円
    年商5億円

    年商50億円
    初期費用 3万円 5万円 10万円~
    月額料金 1万円弱/月 2万円弱/月 5万円強/月~
    同時接続 1名 2~5名 3名~無制限
    部門管理 × 1階層のみ 複数階層
    税理士費用 必要 必要 必要
    自動仕訳
    電子帳簿保存
    確定申告 税理士に依頼 税理士に依頼 税理士に依頼
    請求書発行 オプション料金
    インボイス対応 SX4クラウド
    インボイス・マネジャー
    給与管理 オプション料金
    ユーザーサポート 電話、メール 電話、メール オプション料金

    ※ 実際の費用は会計事務所によって異なります

    このほか、特殊な会計処理が必要な業種のために、各業種専用のソフトも用意されています。2023年6月、以下の3つが「FXクラウドシリーズ」のラインナップに加わりました。

    • DAIC2クラウド(建設業)
    • MX2クラウド(医業)
    • FX2農業会計クラウド(農業)

    ここからは6種類の「FXクラウドシリーズ」について、機能や特長などを順番に紹介していきます。他社ソフトとの比較が気になる方は、記事後半まで読み飛ばしてOKです。

    FXまいスタークラウド

    TKC FXまいスタークラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 同時接続 部門管理
    3万円* 1万円弱/月* 1名 ×
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    税理士に依頼 電話、メール

    * あくまで目安なので、実際の費用は会計事務所にお問い合わせください

    「FXまいスタークラウド」は、機能を抑えた簡易版のソフトです。同時接続できるのは1名のみで、部門管理の機能もありません。会計・給与・請求業務を効率化したい、という個人事業主・中小法人企業に適しています。

    FX2クラウド

    TKC FX2クラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 同時接続 部門管理
    5万円* 2万円弱/月* 2名まで無料 1階層のみ
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    税理士に依頼 電話、メール

    * あくまで目安なので、実際の費用は会計事務所にお問い合わせください

    「FX2クラウド」は、年商5,000万円以上の中小企業向けです。従業員数が30名を超えている企業や、複数の部門管理が必要な企業にはこのソフトが適しています。複数人での同時接続もできるので、業務を分担してさらなる効率化を図れます。

    FX4クラウド

    TKC FX4クラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 同時接続 部門管理
    10万円~* 5万円強/月~* 3名まで無料
    ※4名から追加料金
    複数階層
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    SX4クラウド
    インボイス・マネジャー
    税理士に依頼 電話、メール

    * あくまで目安なので、実際の費用は会計事務所にお問い合わせください

    「FX4クラウド」は、FX2クラウドをさらにパワーアップさせたソフトで、内部統制への対応が必要な上場企業でも利用できます(年商5億~50億円)。外部連携の機能が強化されており、他社ソフトやエクセルのデータも簡単に取り込めます。

    DAIC2クラウド

    TKC DAIC2クラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 対応業種 建設原価計算
    要問合せ 1万円強/月* 建設業 会計帳簿と連動
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    税理士に依頼 電話、メール

    * あくまで目安なので、実際の費用は会計事務所にお問い合わせください

    「DAIC2クラウド」は、建築や土木などの建設業に特化したクラウド会計ソフトです。取引を入力するときに工事情報を追加するだけで、会計帳簿と同時に「現場別工事台帳」を作成できます。工事ごとの進捗状況や粗利益などもパッと確認できます。

    MX2クラウド

    TKC MX2クラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 対応業種 病院会計準則等
    要問合せ 1万円強/月* 医業
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    税理士に依頼 電話、メール

    * あくまで目安なので、実際の費用は会計事務所にお問い合わせください

    「MX2クラウド」は、病院・診療所・介護老人保健施設・訪問看護等の経営に役立つ、医業に特化したクラウド会計ソフトです。レセコンから一覧表に入力するだけで、窓口収入の仕訳が簡単にできます。

    FX2農業会計クラウド

    TKC FX2農業会計クラウドのロゴ

    初期費用 月額料金 対応業種 農業会計指針
    要問合せ 要問合せ 農業
    電子帳簿保存 インボイス対応 税務申告 ユーザーサポート
    税理士に依頼 電話、メール

    「FX2農業会計クラウド」は、農業用の科目体系に対応したクラウド会計ソフトです(農業の会計に関する指針)。生産品目ごとに部門を設定できるので、品目ごとの利益を明確にできます。JA取引データの取込にも順次対応していくようです。

    TKCの会計ソフトのメリット・デメリット

    TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」のメリット・デメリットをざっと整理しておきます。税理士と一緒に使うのが前提になっているため、他の一般的な会計ソフトとは運用方法などが大きく異なります。

    メリット

    • 会計事務所から細やかなサポートが受けられる
    • 毎月の巡回監査により、信頼性の高い決算書が作れる
    • データ改ざんを疑われる心配がない

    デメリット

    • 会計事務所を通じてしか導入できず、費用がかさむ
    • 巡回監査を受けないまま3ヶ月を超えると、ソフトが使えなくなる
    • 監査を経たデータはロックされ、訂正削除が一切できなくなる

    会計事務所と契約して「巡回監査」を受ける必要があり、それ相応の費用と手間がかかります。そのかわり、信頼性の高い決算書を作成できますし、TKCからは「記帳適時性証明書」も発行されます。ちゃんと監査を受けながら記帳しました、という証明です。

    上記を踏まえて、導入判断の際には「そこまでして厳格な帳簿や決算書が必要か?」という観点で考えるとよいです。とくに個人事業主やフリーランスなどで、「ふつうに確定申告ができればOKだよ」という場合には、ちょっとオーバースペックなソフトです。

    個人事業主や中小規模法人におすすめの会計ソフト

    TKC以外のクラウド会計ソフトにも目を向けてみましょう。個人事業主や小規模企業から高い人気を集めている「弥生・freee・マネーフォワード」について、TKCと比較しやすい形にまとめたので、順番に紹介していきます。

    個人事業主向け ‐ 弥生・freee・マネーフォワード・TKC【比較一覧】

    やよいの青色申告
    オンライン
    freee会計 マネーフォワード
    クラウド確定申告
    TKC FXまいスター
    クラウド
    初期費用 なし なし なし 3万円
    (目安)
    利用料金 9,680円/年~ 12,936円/年~ 10,560円/年~ 10万円前後/年
    (目安)
    基本ユーザー数 1名 1~3名
    (プランによる)
    1名~無制限
    (プランによる)
    1名
    部門管理 × 上位プランのみ 上位プランのみ ×
    税理士費用 任意 任意 任意 必要
    自動仕訳
    電子帳簿保存
    確定申告 税理士に依頼
    請求書発行 ×
    インボイス対応
    給与管理 × ×
    ユーザー
    サポート
    ・電話
    ・メール
    ・チャット
    ・電話
    ・メール
    ・チャット
    ・電話
    ・メール
    ・チャット
    ・電話
    ・メール
    弥生 freee マネーフォワード TKC

    ※ 料金はすべて税込表示

    弥生・freee・マネーフォワードのクラウド会計ソフトは、年間1万円程度から利用でき、確定申告書の作成まで完結できます。税理士費用をかけなくても使えるので、開業したばかりの個人事業主やフリーランスでも無理なく導入できます。
    弥生・freee・マネーフォワードの徹底比較 ‐ 個人事業主向け

    TKCの「FXまいスタークラウド」は、利用料金だけでも年間10万円はかかり、さらに初期費用や税理士費用が発生します。費用はかかりますが、税理士が帳簿などを毎月チェックしてくれるので安心感はあります。

    中小法人向け ‐ 弥生・freee・マネーフォワード・TKC【比較一覧】

    弥生会計
    オンライン
    freee会計 マネーフォワード
    クラウド会計
    TKC FX2クラウド
    初期費用 なし なし なし 5万円
    (目安)
    利用料金 28,600円/年~ 26,136円/年~ 39,336円/年~ 20万円前後/年
    (目安)
    基本ユーザー数 3名 3~10名 3名 2名
    部門管理 × 上位プランのみ
    税理士費用 任意 任意 任意 必要
    自動仕訳
    電子帳簿保存
    法人税申告 税理士に依頼 税理士に依頼 税理士に依頼 税理士に依頼
    請求書発行 ×
    インボイス対応
    給与管理 × ×
    ユーザー
    サポート
    ・電話
    ・メール
    ・チャット
    ・電話
    ・メール
    ・チャット
    ・メール
    ・チャット
    ・電話
    ・メール
    弥生 freee マネーフォワード TKC

    ※ 料金はすべて税込表示

    弥生・freee・マネーフォワードのクラウド会計ソフトは、1ヶ月あたり5,000円程度から利用できます。法人税の申告書は税理士に作ってもらうのが一般的ですが、決算時だけのスポット契約で済む場合もあるので、TKCよりも費用を節約しやすいです。
    【一覧】中小法人向けの会計ソフト – クラウド型・インストール型

    TKCの「FX2クラウド」を利用するには、毎月の監査が前提となるため、会計事務所と顧問契約を結ぶ必要があります。資金調達などで信頼性の高い決算書が必要な場合などは役立ちますが、ソフトの利用料金も比較的高いので慎重に検討しましょう。

    まとめ

    TKCのクラウド会計ソフト「FXクラウドシリーズ」は、会計事務所からの監査を受けながら運用することが前提のソフトです。市販はされていないため、TKCに加入している会計事務所を介して導入してもらう必要があります。

    TKCのクラウド会計ソフト「FXクラウドシリーズ」のシステム

    ソフトを導入したら自分たちで記帳を行い、毎月の「巡回監査」で会計事務所のチェックを受けます。税務署に申告書を提出する際や、銀行などに決算書を提出する際も、会計事務所を通じて行います。

    TKC「FXクラウドシリーズ」のメリット・デメリット

    メリット デメリット
    • 会計事務所のサポートが受けられる
    • 信頼性の高い決算書が作れる
    • データ改ざんを疑われる心配がない
    • 費用がかさむ
    • 巡回監査を受けないとソフトが停止する
    • 過去のデータは訂正削除できない

    TKCに向いているのは「しっかりお金と手間をかけて、堅実な会計システムを運用したい」という企業です。逆に、費用を抑えながら会計業務の手間を減らしたい場合は、弥生・freee・マネーフォワードのクラウド会計ソフトをおすすめします。

    弥生・freee・マネーフォワード・TKCの特徴

    弥生 このなかでは最も費用が抑えやすい。機能はやや少なめ。
    freee 最先端の機能を備えており、請求~会計業務を一元化できる。
    マネーフォワード 会計・請求・給与など、バックオフィス機能が幅広く使える。
    TKC 資金調達や経営分析に強い。費用はかなりかかる。

    もし強いこだわりがなければ、弥生・freee・マネーフォワードのどれかを選んでおくのが無難です。TKCは会計事務所との顧問契約が必要ですし、初期費用・月額料金も高いので、小規模な事業者には負担が大きいです。

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