個人事業主がExcel(エクセル)で帳簿付けをするメリット・デメリットを解説します。会計業務にエクセルを使っても、法律上は問題ありません。ただ、記帳作業や確定申告の効率を考えると、市販の会計ソフトを使うほうがおすすめです。
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目次
エクセルで帳簿付けしてもいい?
すべての個人事業主には帳簿付けの義務があります。青色申告の場合はもちろんですが、白色申告でも例外ではなく、事業の収入や必要経費について記帳しなくてはなりません。
帳簿付けの方法は事業主が自由に決められます。「Excel(エクセル)」や「Googleスプレッドシート」などの表計算ソフトを使っても、法律上は問題ありません。
帳簿付けの主な手段
- 市販の会計ソフトを使う
- エクセルなどの表計算ソフトを使う
- 昔ながらの紙の帳簿を使う
エクセルや紙の帳簿を使う場合は、金額や勘定科目などを1つ1つ自分の手で記入しなければなりません。そのため、会計ソフトと比較すると利便性・正確性は劣ります。
記帳方法に関するアンケート結果
実際、エクセルを使う個人事業主はいまや少数派です。以下のアンケート結果によると、クラウド会計ソフトを使う人が多数を占めています。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
「フリーランス白書2022」
- クラウド会計ソフト(クラウド会計サービス)とは?
- インターネット環境さえあれば、いつでも自分の帳簿にアクセスして閲覧・記帳などができる会計ソフトのこと。すべてのデータがクラウド上で保存・管理されるため、自分で設定してバックアップを取る必要もないとされる。
小規模な個人事業主・フリーランスでも、クラウド会計ソフトを活用するのが当たり前になりつつあります。とくに「やよいの白色申告 オンライン」は、有料の会計ソフトと同等の機能を永年無料で利用できるため、個人事業主からの人気も高いです。
エクセルで会計業務を行うメリット
ここでは、エクセルで会計業務を行うメリットを詳しく解説します。エクセルで帳簿付けを行う個人事業主は減りつつありますが、いちおうメリットも存在します。
- 導入コストがかからない
- カスタマイズ性が高い
- データの互換性が高い
① 導入コストがかからない
会計業務とは別の目的で「もうエクセルを使ってるよ!」という方も多いでしょう。すでにエクセルを導入していれば、そのまま追加費用をかけずに利用できます。一方、市販の会計ソフトはたいてい年間1万円ほどのコストがかかります(「やよいの白色申告 オンライン」無料でも使える)。
② カスタマイズ性が高い
エクセルに使い慣れている人なら、関数や表を上手に組み合わせて、独自の帳簿やレポートを作成できるでしょう。会計ソフトにも分析レポートの作成機能はありますが、完全にオリジナルの表やグラフを作ることはできません。
③ データの互換性が高い
エクセルのデータ形式は広く普及しているので、従業員や税理士とのやり取りで困ることが少ないです。端末を乗り換える際にも、共有フォルダにデータを入れておくことで簡単に共有できます。
エクセルで会計業務を行うデメリット
続いて、エクセルで会計業務を行うデメリットを紹介します。昨今の会計ソフトは利便化が進んでいるので、それと比較するとエクセルはデメリットが目立ちます。
- 帳簿のフォーマットを作る必要がある
- ミスが起こりやすい
- 確定申告の知識が必要
- 引き継ぎが難しい
- 法改正に自分で対応する必要がある
① 帳簿のフォーマットを作る必要がある
エクセルには、はじめから帳簿のフォーマットがインストールされているわけではありません。そのため、ユーザーが自分で帳簿のフォーマットを設計する必要があります。この作業は非常に手間がかかり、特に初心者には難易度が高いです。
たとえば、会計ソフトと同じような使い勝手を実現するには「仕訳帳に入力した内容を他の帳簿にも自動反映する」「減価償却費の計算を自動化する」などの仕組みを自分で作る必要があります。
② ミスが起こりやすい
エクセルでは全てのデータを手入力しないといけないので、どうしても人為的なミスを避けられません。また、関数やマクロを誤って削除して、気付かないうちに正確性が損なわれている可能性もあります。
一方、昨今のクラウド会計ソフトは「自動仕訳」の機能が発達しているので安心です。銀行口座やクレジットカードの取引履歴を自動で取り込んでくれるので、ケアレスミスを最小限にできます。
③ 確定申告の知識が必要
エクセルを活用できるのは、あくまで日々の帳簿付けまでです。年に1回の確定申告では、自力で提出書類を作成する必要があります。その点、会計ソフトなら日々の記帳内容をもとに、確定申告書類の大半を自動作成してくれます。
④ 引き継ぎが難しい
エクセルは関数やマクロを使ってカスタマイズできる反面、従業員や税理士と共有する場合は、その仕組みをすべて伝えなければなりません。結果として、会計業務が属人化しやすくなります。
⑤ 法改正に対応する必要がある
エクセルで会計業務を行う場合、会計・税務に関わる法改正に自力で対応しなくてはなりません。この作業は、とくに会計初心者にはかなり大変です。一方、会計ソフトなら法改正への対応もメーカー側にお任せでOKです。
会計業務はエクセルよりもクラウド会計ソフトがおすすめ!
個人事業主の会計業務には、エクセルよりも会計ソフトを使うのがおすすめです。なかでも、近ごろ主流になりつつある「クラウド会計ソフト」なら、初心者でも直感的に使いこなせます。
クラウド会計ソフトの主な利点
- 確定申告書を自動で作成できる
- 作成した帳簿や書類の保存・管理がラク
- クレカ明細などの自動取り込みが便利
「やよいの白色申告 オンライン」なら、これら3つの機能をすべて無料で利用できます。お試し期間などのしばりもありません。ちなみに「やよいの白色申告 オンライン」には、他にも以下のような利点があります。
- 集計ミスなどが起きにくい
- 自動でバックアップがとれる
- スマホアプリから手軽に記帳できる
- レシートをスマホで撮影して活用できる
- 誤入力のアラートを表示してくれる
- 税理士とのやりとりも簡単
- 毎年の税制改正にも勝手に対応してくれる
- ユーザーサポートで色々質問できる*
* ユーザーサポートは有料プランのみ(初年度5,060円/年~)
エクセルで帳簿を自作する場合、上記のような利便性はありません。すでにエクセルで記帳している個人事業主も「やよいの白色申告 オンライン」のインポート機能を使えば、エクセルから簡単に移行できます。
ここからは、クラウド会計ソフトの特に重要な3つの機能について詳しく解説します。「やよいの白色申告 オンライン」を例に挙げていますが、freeeやマネーフォワードの会計ソフトにも同様の機能があります。
① 確定申告書類を自動作成できる
白色申告の個人事業主は、確定申告で以下の書類を提出します。「やよいの白色申告 オンライン」を利用すれば、これらの書類の大部分を自動的に作成できます。
白色申告の主な提出書類(個人事業主・フリーランス)
- 収支内訳書
- 確定申告書 第一表
- 確定申告書 第二表
帳簿の中身を自動で集計し、これらの書類へ反映してくれるので、記帳さえ済んでいれば売上や経費を改めて集計する必要はありません。画面の案内に従って、住所や社会保険料などの必要事項を入力するだけでOKです。
確定申告書類の作成画面 – やよいの白色申告 オンライン
上記の画面から、必要書類をダウンロードして税務署へ提出すれば、確定申告は完了です。マイナンバーカードを持っていれば、e-Taxでオンライン提出も簡単に行えます(電子申告)。
エクセルでこのような仕組みを実現するのは、かなり困難です。毎年の税制改正や様式変更にも、自力で対応しなくてはなりません。せっかくマクロや関数を駆使してシートを作り込んでも、翌年また作り直す羽目になるでしょう。
② 帳簿などの保存がラク
白色申告の個人事業主には、事業の「収入」や「必要経費」を記帳する法的義務があります。これらの事項を記録した帳簿を「法定帳簿」といいます。通常は、紙媒体で7年間保存する必要があります。
「法定帳簿」の保存・管理
会計ソフトの場合 | プリントアウトせず、クラウド上でデータ保存可能 ※ 事前設定なども不要 |
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Excelの場合 | プリントアウトして、紙媒体で保存するのが基本 |
紙の場合 | 紙のまま保存する |
「やよいの白色申告 オンライン」を使って帳簿付けをすれば、プリントアウトすることなく、そのままクラウド上で保存・管理が可能です。紙と違ってスペースをまったく取りませんし、散逸の心配もありません。
経費のレシートなどの保存・管理
会計ソフトの場合 | スマホで撮影して容易にデータ保存可能 → 紙のレシートをすぐに廃棄できる |
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Excelの場合 | 紙のまま保存するのが一般的 |
紙の場合 | 紙のまま保存するのが一般的 |
必要経費の証拠となる紙のレシートなどは、紙のまま5年保存するのが基本です。スキャナやカメラを使ってデータ保存する方法もありますが、法的な要件がけっこうシビアです(スキャナ保存)。
「やよいの白色申告 オンライン」のユーザーなら、ごく簡単な事前設定のみで「スキャナ保存」を実現できます。「弥生 レシート取込」という専用アプリを無料ダウンロードして、スマホで撮影するだけでOKです。紙のレシートは廃棄して構いません。
③ 明細の自動取り込みが便利
「やよいの白色申告 オンライン」を活用すれば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得して、帳簿へ反映させることもできます。現金取引を行わないようにすれば、帳簿への入力作業はほとんど不要になります。
上図のように、日付・金額・勘定科目などが表示されます。内容を確認して、問題なければそのまま帳簿に登録しましょう。修正も簡単に行えますし、使い込むと精度も上がっていくようです。
データを自動取り込みできるもの(例)
- 銀行などの預貯金口座
- クレジットカード
- 電子マネー
- スマホアプリ「弥生 レシート取込」
- POSレジサービス
- 家計簿アプリなどの外部サービス
※ 一部、対象外となるサービスもあります
モバイルSuicaなどの履歴も自動取り込みできるので、交通費の記帳が格段にラクになります。日付・金額だけでなく、駅の利用区間もしっかり自動取得してくれるので、移動の多い個人事業主やフリーランスにとっては非常に便利です。
スマホアプリ「弥生 レシート取込」で撮影したレシートも、自動取り込みの対象です。画像解析によって、日付・金額・勘定科目などが提案されます。これを活用すれば、現金で支払った経費なども簡単に記帳できます。
会計ソフトを選ぶ際のポイント
会計ソフトを選ぶ際は、価格だけでなく、具体的な機能やサポート体制などを比較することも大切です。会計ソフトの主要な選定ポイントを紹介します。
帳簿付けの機能
帳簿付けは、会計業務の核心部分を担っています。そのため、自分にとって使いやすいデザインを見極めましょう。また、自動仕訳機能の使い勝手も重要です(明細データの自動取得ができるか、その自動取得したデータがスムーズに帳簿に反映されるかなど)。
確定申告書類の作成機能
年に一度の確定申告は、個人事業主にとって非常に重要な作業です。そのため、確定申告書類作成の操作手順がわかりやすいか、確定申告の繁忙期(1月~3月ごろ)に、サポート体制がしっかりとしているかどうかをチェックすることが必要です。
税理士とのデータ共有機能
税理士や会計事務所とスムーズにデータを共有できるかどうかも大きなポイントとなります。提携している税理士や会計事務所に相談し、帳簿への入力・閲覧・共有が簡単に行えるかどうかを確認することで、後々の業務のスムーズさを確保できます。
まとめ
個人事業主やフリーランスは、会計業務も自分で行う必要があります。従来はエクセルが主流でしたが、近年ではクラウド会計ソフトが普及したおかげで、圧倒的にラクに会計業務を行えます。
白色申告の個人事業主・フリーランスは、無料でも使える「やよいの白色申告 オンライン」で帳簿付けするのがおすすめです。エクセルやGoogleスプレッドシートよりも簡単に記帳でき、効率よく正確な帳簿を作成できます。
「やよいの白色申告 オンライン」の主な便利機能
- 確定申告書類の自動作成
- 帳簿などのクラウド保存
- クレカ明細などの自動取り込み
- スマホアプリでの帳簿付け
- 撮影したレシートのスキャナ保存
- レシート画像の解析、自動取り込み
- 誤入力時のアラート表示
- 毎年の税制改正への自動対応
無料プランと有料プランが用意されていますが、どのプランでも帳簿付けや確定申告に必要なすべての機能を利用可能です。有料プランでは、さらにユーザーサポートが受けられます。
「やよいの白色申告 オンライン」の料金プラン
フリープラン | ベーシックプラン | トータルプラン | |
---|---|---|---|
料金(税込) | 無料 | 10,120円/年 初年度は無料 |
18,480円/年 初年度は9,240円 |
すべての機能 | ○ | ○ | ○ |
サービス案内 (ユーザーサポート) |
× | ○ | ○ |
業務ヘルプデスク (ユーザーサポート) |
× | × | ○ |
弥生の個人事業主向け会計ソフトは、2024年5月1日より有料プランの値上げを予定している(やよいの白色申告 オンライン、やよいの青色申告 オンライン、やよいの青色申告)。値上げ率では、セルフプランが約17%の値上げ、それ以外の有料プランは25%の値上げとなる。無料プランについては据え置き。本記事では、すべて値上げ前の価格で記載している。
有料プランは「ベーシックプラン」と「トータルプラン」の2つです。「ベーシックプラン」では、会計ソフトの操作方法などを質問できます。「トータルプラン」では、ソフトに直接関係ないことでも、帳簿付けなどの業務に関して一般的な質問ができます。
帳簿付けに不慣れな初心者であれば「トータルプラン」から始めましょう。初年度は半額で利用できます。わからないことがあっても、どんどん質問して素早く解決できます。9,240円も割引きされるため、料金的にも非常にお得です。