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【個人事業主向け】外部に支払う報酬で源泉徴収が必要なもの

更新日: 2021/07/06
【個人事業主向け】外部に支払う報酬で源泉徴収が必要なもの

個人事業主向けに、外部に支払う報酬等の源泉徴収義務について説明します。従業員を雇っていなければ、源泉徴収を“される”ことはあっても、源泉徴収を“する”ことはほとんどありません。

INDEX

目次

    個人事業主も源泉徴収をする?

    従業員を雇っていないなら、源泉徴収をする機会はまずありません。一方、従業員を雇っていると、従業員に支払う給与はもちろんのこと、外部に支払う報酬等についても源泉徴収の義務が生じます。

    個人事業主の源泉徴収義務(外部への報酬・料金)

    上表の「従業員がいる」には、青色専従者に給与を支払っている事業主も該当します。ただし、白色専従者だけを雇っている場合や、2人以下の家事使用人(お手伝いさんのこと)だけを雇っている場合は該当しません。

    ここからは、個人事業主が「外部の個人に支払う報酬」と「法人に支払う報酬」に分けて、源泉徴収義務の有無を詳しく説明していきます。

    ケース① 外部の個人に支払う報酬

    個人事業主の源泉徴収義務(外部の個人に支払う報酬)

    従業員を雇っていないなら、外部の個人(取引先のフリーランスなど)に支払う報酬について、源泉徴収をする必要はありません。しかし、従業員を雇っている場合は、外部の個人に「源泉徴収の対象となる報酬」を支払う際に、源泉徴収をする義務があります。

    源泉徴収の対象となる報酬等(所得税法204条1項)

    1. 原稿、さし絵、作曲、デザイン、放送謝金、講演料などの報酬
    2. 弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、弁理士などの報酬
    3. 社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬
    4. 野球選手、拳闘家、競馬騎手、モデル、外交員などの報酬
    5. 映画、演劇、ラジオ、テレビの出演・演出・企画などの報酬
    6. キャバレー、ナイトクラブ、バーなどで働くホステス等の報酬
    7. 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金
    8. 広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金

    ※ いずれも法人に支払うものを除く

    個人事業主が支払う報酬としては、①に該当するものが多そうです。①に含まれる報酬については、国税庁ウェブサイトの該当ページで詳しく説明されています。なお、徴収する税額はいずれの場合も「報酬等の10.21%」が基本です。

    従業員を雇っていなければ源泉徴収は不要?

    前述した報酬等が「従業員の給与について源泉徴収をする必要がない人」から支払われる場合、源泉徴収は不要と定められています(所得税法204条2項)。これについて、国税庁は下記のように説明しています。

    引用

    …(前略)…その報酬・料金等の支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないとき又は給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。…(後略)…

    報酬・料金等の源泉徴収義務者 – 国税庁

    ちなみに、上記では「ホステス等に報酬・料金等を支払う場合」だけが除外されていますが、ほとんどの人は気にしなくてよいでしょう。前記した①~⑧のうち、⑥の報酬等に限っては、従業員のいない個人事業主でも源泉徴収が必要とされているのです。

    ケース② 法人(会社など)に支払う報酬

    個人事業主の源泉徴収義務(法人に支払う報酬)

    報酬の支払先が法人(会社など)なら、源泉徴収をする必要はありません。これは、自分に従業員がいてもいなくても同じです。

    法人に対する源泉徴収については、所得税法で下記のように定められています。簡単に言うと「法人に利子・配当・賞金などを支払うときは源泉徴収してね」と定められているわけです。しかし、個人事業主が法人にこれらを支払うことはまずありません。

    引用

    内国法人に対し…(中略)…利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金…(中略)…の支払をする者は、その支払の際、当該利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

    所得税法212-3

    ちなみに、上記はあくまで国内の法人に関する規定です。外国の法人に報酬等を支払う際は、二国間の「租税条約」によって独自のルールが定められている場合もあるので、慎重に判断しなくてはなりません。

    源泉徴収義務がある?ない?【判断に迷うケース】

    源泉徴収義務の基本的な考え方は、ここまで説明してきたとおりです。ただ、下記のようなケースに関しては分かりづらい部分もあるので、個別に解説します。

    1. 青色専従者だけを雇っている場合
    2. 青色専従者の届け出をしたが、実際には給与を支払っていない場合
    3. 過去に従業員を雇っていたが、現在は誰も雇っていない場合

    1. 青色専従者だけを雇っている

    外部の個人への報酬 法人への報酬
    対象の報酬等については
    源泉徴収が必要
    源泉徴収は不要

    青色専従者へ給与を支払う際は、源泉徴収が必要です(白色専従者の給与については源泉徴収が不要)。このように、青色専従者に給与を支払っている個人事業主は、外部の個人に特定の報酬を支払う際も、源泉徴収しなければなりません。

    2. 青色専従者の届出をしたが、実際には給与を支払っていない

    外部の個人への報酬 法人への報酬
    源泉徴収は不要 源泉徴収は不要

    青色専従者給与に関する届出書を提出していても、実際に給与を支払っていなければ、源泉徴収義務は生じません。「過去に届け出をしたけど、今はもう働いてない」というような場合は、外部に対する源泉徴収も不要になります。

    3. 過去に従業員を雇っていたが、現在は誰も雇っていない

    外部の個人への報酬 法人への報酬
    源泉徴収は不要 源泉徴収は不要

    外部の個人に対する源泉徴収義務は、その報酬を「支払うべき日の現況」で判断します(所得税基本通達204-5)。なので、報酬を支払う時点で従業員を雇っていなければ、源泉徴収をする必要はありません。過去に短期のアルバイトを雇っていた場合なども同様です。

    まとめ

    1人で事業を営んでいる個人事業主は、ひとまず源泉徴収をする機会はないと考えてOKです。しかし、従業員や青色専従者を雇っている事業主は、外部の個人に支払う報酬等についても源泉徴収の義務が生じます。

    個人事業主の源泉徴収義務(外部への報酬・料金)

    本記事では簡易的に「従業員がいる・いない」で区別しましたが、雇っているのが白色専従者や「2人以下の家事使用人」だけなら、源泉徴収義務は生じません。源泉徴収義務が生じるのは、従業員や青色専従者に給与を支払っているときだけです。

    【ポイント】従業員がいない場合

    • 外部に支払う報酬について、源泉徴収をすることはほとんどない
    • 源泉徴収が必要なのは、基本的に「ホステスに支払う報酬等」だけ
    • 受け取る報酬について、源泉徴収をされることはある

    【ポイント】従業員がいる場合

    • 外部の個人に特定の報酬を支払う際は、源泉徴収をする必要がある
    • 徴収する税額は「報酬の10.21%」が基本(報酬の種類によって異なる)
    • 受け取る報酬について、源泉徴収をされることもある
    • もちろん、従業員への給与についても源泉徴収義務がある

    なお、本記事で説明した内容は、日本の居住者や国内法人に対する源泉徴収義務に関するものです。もし海外で暮らす個人や外国法人に報酬を支払う際は、ルールが異なる場合もあるので注意してください。