2024年(令和6年)は定額減税が実施され、対象者は1人につき4万円の減税が受けられます。個人事業主向けに、具体的な手続きのやり方や確定申告書への記入方法をわかりやすく解説します。減税しきれなかった場合の調整給付金についてもまとめています。
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目次
個人事業主が定額減税を受ける方法
2024年の定額減税では、所得税と住民税が減税の対象になります。個人事業主の場合は、所得税のみ手続きが必要です。住民税については、自動的に減税が適用されるため、申請の手続きなどはしなくてOKです。
2024年分の所得税 | 2024年度の住民税 |
---|---|
減税額: 3万円/人 | 減税額: 1万円/人 |
手続きは不要 | |
「対象人数」と「3万円 × 対象人数の額」を記入する | 手続きは不要 |
※ 予定納税の有無にかかわらず、確定申告書への記入が必要
2025年2月17日〜3月17日に行う「2024年分の確定申告」の際、上図の赤枠のように定額減税の金額を記入します。記入する金額は、養っている家族の人数によって異なります。
特に養っている家族がいない個人事業主は、上記の記入例のように、人数の欄を「1」とし、金額欄が「30000」となるよう記入します。
定額減税における家族の数え方
同一生計配偶者 (夫、妻) | 生計を一にする配偶者で、合計所得金額が48万円以下の者 (専従者は除く) |
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扶養親族(子ども、親など) | 生計を一にする親族で、合計所得金額が48万円以下の者 (専従者は除く) |
※ 上記のリンク先記事では、詳しい要件などをわかりやすく解説しています。
たとえば、妻と子供2人が上記の条件を満たしていれば、自分自身も含めて4人分とカウントするので「3万円 × 4人 = 12万円」と記入します。
一緒に住んでいて、パートやアルバイトでの収入がないor少ない(いわゆる103万円の壁を超えていない)親族なら、まず条件を満たすと考えてよいでしょう。別居している親族でも、仕送りなどをしていれば当てはまることが多いです。
「生計を一にする」とは?実務的な判断基準など
確定申告のほかにやることは? 定額減税に関連する手続き
調整給付金の 受け取り |
以下の2点をどちらも満たす場合は手続きが必要 ・調整給付金のお知らせが届いた ・公金受取口座(マイナンバーに紐づく口座)が未登録である |
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予定納税等の 減額申請 |
以下の2点をどちらも満たす場合は手続きができる (減額のタイミングを早めたい方向け) ・予定納税がある ・扶養する家族がいる |
上記の2つに該当しない事業主は、確定申告さえしておけば、きちんと定額減税を受けられます。よって、多くの事業主は、確定申告だけで完結します。ここからは、上記の特殊な手続きについて、やり方などを解説していきます。
【調整給付金】減税しきれないときの手続き
もとの税金が少なくて減税しきれないときは、調整給付金がもらえます。給付額などは、役所が計算してくれるので、自分で計算する必要はありません。役所からお知らせが届いた人だけ、その案内に従って対応すればOKです。
※ 引ききれない金額に1万円未満の端数が出たら切り上げ
調整給付金の対象者には、2024年6月以降、役所からお知らせが届きます(お住まいの自治体によって時期は異なります)。下記の通り、マイナンバーに紐づいた「公金受取口座」の有無によって、給付金の受け取り方が異なります。
公金受取口座がある人 | 公金受取口座がない人 |
---|---|
手続きは不要 (はがきなどで通知が届くだけ) |
「確認書」などを返送する |
※ 公金受取口座がなくても、状況によっては手続き不要となる場合もある
(自治体から他の給付金を受け取っている場合など)
「公金受取口座」を登録済みであれば、基本的に手続きは不要です。一方、公金受取口座が未登録の場合は、役所から「確認書」が届きます。これに必要事項を記入して、身分証のコピーなどを添えて返送すれば、調整給付金が受け取れます。
予定納税がある場合はどうなる?
予定納税をする個人事業主は、以下のようなスケジュールで納税や定額減税の手続きを行います。税務署から予定納税の通知書などが届くので、基本的には案内に従ってそのまま予定納税を行えばOKです。
2024年の予定納税では、1人分(=3万円)の定額減税が自動適用されます。一方、家族分は自動適用にはなりません。任意で「予定納税額の減額申請」という手続きをすれば、予定納税のときに家族全員分の減税を受けることもできます。
減額申請をする場合 | 減額申請をしない場合 | |
---|---|---|
本人分 (3万円) |
予定納税の際に減税 | 予定納税の際に減税 |
家族分* (3万円 × 人数) |
予定納税の際に減税 | 確定申告の際に減税 |
* ここでいう「家族」は、同一生計配偶者や扶養親族を指し、納税者本人は人数に含めない
予定納税の減額申請をしても、本記事の冒頭で示した確定申告での手続きは別途必要です。また、最終的な減税額は変わりません。減税されるタイミングが少し早まるだけなので、無理に減額申請をする必要はないです。
なお、扶養する家族がいない単身者については、そもそも減額申請の必要がありません。通知書に従って予定納税をした上で、確定申告書に定額減税額を記入するだけでOKです。先述のとおり、該当箇所の人数欄に「1」、金額欄が「30000」となるよう記入しましょう。
予定納税額の減額申請のやり方
家族分の減額を早めるために「予定納税額の減額申請」を行う個人事業主は、以下の書類を税務署へ提出しましょう。申請が無事に通ったら、家族分の減額申請が適用された状態の、新しい通知書がもらえます。
※ 国税庁HP「予定納税額の減額申請書」のダウンロード
すべての記入欄を埋める必要はなく、記入例の赤枠で囲った部分だけ記入すればOKです。税務署の窓口に持参・郵送で提出しましょう。e-Taxソフトでも提出できますが、マイナンバーカードなどの準備が必要です(Mac非対応)。
2024年分 予定納税の期限まとめ(減額申請・納付・振替)
減額申請 | 納付期限 | 振替日 | |
---|---|---|---|
1回目 | 終了:7/1(月)〜7/31(水) | 7/1(月)〜9/30(月) | 9/30(月) |
2回目 | 11/1(金)〜11/15(金) | 11/1(金)〜12/2(月) | 12/2(月) |
上記の通り、かなり手間のかかる手続きなので、無理に行う必要はありません。この減額申請をしなくても、確定申告の際には減税を受けられます。最終的な税額で損をすることはありません。
Q&A|定額減税のよくある質問
- 定額減税が受けられないのはどんな人?
- 高所得者(合計所得金額が1,805万円超)は、定額減税の対象外です。
低所得者(住民税の所得割が課税されていない世帯で、かつ所得税額もない人)についても、定額減税は基本的に受けられません。そのかわり、10万円の「低所得者支援給付金」の対象となっています。
- 共働きのため、妻が「同一生計配偶者」に該当しません。妻は定額減税を受けられないのですか?
- いいえ。あなたと妻がどちらも定額減税の要件を満たしていれば、夫婦でそれぞれ定額減税を受ける形になります。世帯全体として見れば、トータルの減税額で損をすることはありません。
- 10才の息子がいるのですが、彼は「扶養親族」に該当しますか?
- はい、該当します。16才未満の子は、扶養控除の対象にはなりませんが、定額減税ではそのような制限はありません。生計を一にし、合計所得金額が48万円以下であれば、16才未満の子も「扶養親族」です。
- 定額減税により「ふるさと納税」の限度額が下がりますか?
- いいえ。定額減税で2024年度の住民税額が減っても、それが原因でふるさと納税の限度額が下がることはありません。
- 定額減税により「住宅ローン控除」で損をすることはありますか?
- いいえ。税額を計算する順序としては、まず住宅ローン控除が適用され、その後で定額減税が適用されます。したがって、定額減税による影響はありません。
定額減税についても、控除しきれない場合には「調整給付金」が受け取れるので基本的には問題ありません。
- 2024年内に子どもが生まれた場合は定額減税の額は変わりますか?
- はい。所得税において、その子ども1人につき3万円が追加で控除されます。住民税については、2023年の状況に基づいて計算されるため、減税額に変動はありません。
- 調整給付金をもらったら課税対象になりますか?
- いいえ、調整給付金は非課税です。確定申告の際に所得に含める必要はありません。差し押さえの対象にもなりません。(物価高騰対策給付金に係る差押禁止等に関する法律 3条、4条)
- 調整給付金の金額は、何を根拠に計算されているのですか?
- 調整給付金は「2024年分の推計所得税額」に基づいて、自治体が算定します。2025年にならないと、2024年分の所得税額は確定できないので、2023年分の所得税額が参考にされています。
- もし調整給付金が少なすぎたらどうなるのですか?
- 2025年になって所得税額が確定し、調整給付金が少なすぎた場合には、不足分が追加で給付されます。
- もし調整給付金が多すぎたら、あとで返さないといけないのですか?
- いいえ。2025年になって所得税額が確定し、調整給付金が多すぎたことが判明しても、その差額を返納する必要はありません。
まとめ
個人事業主が「2024年の定額減税」を受ける際の重要ポイントを、以下にまとめました。役所から調整給付金のお知らせが届いた人は、書類を返送しなくてはいけない場合があるので注意しましょう。
- 基本的には「2024年分の確定申告」だけキッチリやればよい
- もし役所から「調整給付金」の手紙が届いたら、返送などの対応をする
- 予定納税については「減額申請」ができる場合もある(オススメはしない)
個人事業主が定額減税を受ける際は、確定申告書に対象人数と所得税の減税額を記入します。住民税に関しては、自動的に減税が適用されるので、何も手続きしなくてOKです。
2024年分の所得税 | 2024年度の住民税 |
---|---|
減税額: 3万円/人 | 減税額: 1万円/人 |
手続きは不要 | |
「3万円 × 対象人数」の額を記入する | 手続きは不要 |
予定納税をする・しないにかかわらず、確定申告は必要です。2024年分(令和6年分)の確定申告書には、定額減税の対象人数と金額を書く欄があるので、記入漏れがないよう注意しましょう。
「調整給付金」の受け取り方
もとの税金が少なく、1人につき4万円の減税をしきれなかった場合は、その差額相当の「調整給付金」を受け取れます。マイナンバーに紐づいた「公金受取口座」がある人は、手続きは不要で受け取れます。
公金受取口座あり | 公金受取口座なし |
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手続きは不要 (はがきなどで通知が届くだけ) |
「確認書」などを返送する |
※ 公金受取口座がなくても、状況によっては手続き不要となる場合もある
(自治体から他の給付金を受け取っている場合など)
「予定納税額の減額申請」はオススメしない
予定納税の通知書には、家族分の定額減税が反映されていません。家族全員分の定額減税を予定納税に反映させるには「予定納税額の減額申請」という手続きが必要です。
ただ、この手続きをしたところで、定額減税の適用されるタイミングが2〜3ヶ月早まるだけです。最終的な税負担は変わりません。手間がかかるわりにメリットが薄いので、キャッシュに困っていなければ、無理にやらないほうがよいです。