税制改正については、何がいつ適用されるのか、混乱してしまう事業主も多いのではないでしょうか。「自営百科」では、これらの情報も適宜わかりやすく整理してお届けしています。今回はその番外編として、そもそもの税制改正のしくみを中心に解説します。
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目次
【スケジュール】税制改正のしくみ
事業主は、日常業務に影響がある税制改正を見極めて、その改正がどのタイミングで適用されるのか正しく知っておく必要があります。
税制改正は、年に一回のペースで、毎年同じようなスケジュールで行われます。大抵、改正項目は数十項目に上ります。下図は、そのスケジュールを簡単に整理したものです。
「要望」は実現しないものも多いので、税の専門家でない限りは「大綱」に注目していれば十分です。大綱に書かれていることは、与党が支持する内容であるため、実際に法制化される可能性が高いと言えます。
法令ができあがっても、すぐに効力が生じるわけではありません。その年の4月1日からであったり、翌年の4月1日であったりと、適用開始のタイミングはバラバラです。所得税に関する税制など、さかのぼって1月1日から適用が開始されることも多いです。
なお、公式情報は財務省「税制改正の概要」ページで取得できます。
財務省のページは、もちろん自営百科の記事を作成する際にも、一次情報として参照しています。ただ、読みやすくはないです。要点がまとまったものを読みたい方は、まずは当メディアの記事をご覧いただくことをおすすめします。
>> 2021年(令和3年)に行う確定申告から適用される改正
税制改正要望 – 夏ごろ
各省庁は、翌年の税制に関する要望を8月ごろまでに、財務省へ提出します。これが「税制改正要望」です。あくまで要望なので、なかには実現しないものも含まれています。主に、税の専門家が注目する情報と言えます。
税制について、常に最新情報を得ておきたい事業主は、税制改正要望にも目を通しておくとよいでしょう。ただし、不確定の情報が多く含まれるので、情報の取捨選択には相応のリテラシーが必要です。
税制改正大綱 – 12月ごろ
12月中旬ごろを目処に、内閣府の税制調査会が、各省庁からの要望を具体化します。与党は、これを「税制改正大綱」の原案として発表します。そして、この原案をもとに、12月末には「税制改正大綱」が閣議決定される習わしです。
税制改正の情報を早めに仕入れておきたい一般の事業主は、12月中旬ごろに「税制改正大綱」が発表されてから、本格的な情報収集を始めるのがおすすめです。それ以前の情報には不確定要素が多く、時間効率があまりよくありません。
大綱そのものは、法令として効力を発揮するものではありません。しかし、改正法案のベースとなる文書です。それに、国会において多数を占める与党内では、すでにコンセンサスが取れているわけですから、法案がそのまま可決される可能性も高いです。
税制改正法案 – 2月ごろ
大綱を踏まえて「税制改正法案」が作成され、1月下旬~2月上旬ごろに国会に提出されます。その後、3月末までには改正法が公布されます。たとえば、2020年1月31日提出の「所得税法等の一部を改正する法律案」は、3月27日に成立、3月31日に公布されました。
国会での審議過程に関心がなければ、法案が国会に提出される2月ごろの段階では、とくに注視する必要はありません。3月末に公布される改正法を確認すれば十分です。
改正法の施行 – 4月ごろ
改正法が公布・施行されたら、そのなかから日常業務に関係あるものとないものとを選り分ける作業が必要です。できるなら、すべての事業主が確認しておくべき情報と言えます。
施行日と適用開始日は違う場合がある
改正法が施行されるタイミングは、4月1日であることが多いです。とはいえ、必ずしも施行日をもって適用開始となるわけではありません。条文の内容次第で、その年の1月1日にさかのぼって適用されたり、翌年以降に適用となったりすることもあります。
このように、適用が始まるタイミングはバラバラです。面倒ですが、自分の事業に影響がある税制改正については、適用開始時期を一つ一つ確認するしかありません。自営百科では、その手間が省けるように、整理された状態で情報をお届けしています。
まとめ – 税制改正の情報収集について
財務省の「税制改正の概要」ページにも、年度ごとの税制改正は掲載されています。しかし、ここでいう年度は、法令が成立する年のことを指します。つまり、その法令が実際にいつから適用されるかは、自分で別途確認しなければならないのです。
そこを補完する意味でも、当メディアでは例えば「2020年の確定申告で適用開始となる税制改正」という切り口で情報をまとめています。
また、財務省や国税庁のウェブサイトは、あらゆる人が読むことを想定しています。その都合で、一般の個人事業主にとって重要な記述と、関係のない記述とが混在しています。難しい用語も多く使われています。
一方、当メディアの記事では、個人事業主にとって重要な情報を凝縮し、噛み砕いた表現でお伝えしています。もちろん、会社員の方に向けた記事もあります。正確性・網羅性を重視するなら行政のウェブサイトを参照し、情報収集の効率性を優先する際にはまず当メディアを参照していただければ幸甚です。