税務調査は、例年7月ごろから増えると言われています。調査官と話すときのNGワードや注意点を知っておくことで、重加算税のリスクを減らせます。万一の税務調査に向けて、準備・対策しておきましょう。
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目次
そもそも税務調査とは?
税務調査とは、税務署の職員などが事務所を訪問し、申告ミスや脱税がないかチェックしに来ることです。通常は過去3年~5年分が調査対象となります。調査の結果は、以下の3パターンに大別できます。
税務調査の結果 ‐ 3パターンに大別
概要 | 主なペナルティ | |
---|---|---|
是認 (ぜにん) | おおむね正しく申告できていた場合 | なし |
申告漏れ | うっかり申告ミスしていた場合 | 過少申告加算税税率5%~15% |
所得隠し 脱税 |
わざと嘘の申告などをした場合 | 重加算税税率35%~45% |
※「所得隠し」のなかでも、とくに悪質なものを「脱税」という
“わざと”収入を少なく申告したり、経費を水増ししたりすると、「重加算税」という非常に重いペナルティが課されます。事業主としては、単なる“うっかり”ミスなら、安易に重加算税を受け入れるべきではありません。
一方、調査官の立場からすると、所得隠しや脱税を発見して「重加算税」を課すことは、最も重要な仕事の一つです。ときに誘導尋問的な質問が行われることもあるようなので、事業主は慎重に回答しましょう。
>> 申告漏れのペナルティは?過少申告加算税と重加算税の違い
税務調査で重加算税を課されるケース
重加算税を課されるのは、所得隠しや脱税のために「仮装・隠蔽」をしたときだけです。「仮装(かそう)」とはニセの事実をでっち上げることを言い、「隠蔽(いんぺい)」とは真実を隠すことを言います。具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 税務調査で嘘をついた
- 帳簿やレシートを捨てた・隠した・偽造した
- 二重帳簿(ダミーの帳簿)を作成した
申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
税務調査では「嘘」や「隠す」のような言葉は、軽率に使わないほうがよいです(いわゆるNGワード)。逆に、調査官の立場からすると、事業主にこういうNGワードを言わせれば重加算税を課しやすくなります。
税務調査で注意したいNGワード・質問
税務調査で不備などが見つかると、重加算税につながる「NGワード」で問い質されることがあります。やましいところがなければ、否定すべき点はしっかり否定しましょう。
たとえば、確かに保存していたはずの領収書が出てこなかったとき、「捨てたんですか?」と聞かれたら「いえ、紛失しました」のように答えるイメージです。ここで「はい」と答えてしまうと、意図的に破棄したと見なされ、重加算税のリスクが高まります。
重加算税に関わるNGワードと言い換え(一例)
NGワード | 言い換え |
---|---|
捨てた、破棄、処分 | なくした、紛失、行方不明 |
意図的に、意図して、故意に | 意図せず、誤解して、知らずに |
隠す、隠匿 | 書き忘れ、出し忘れ |
嘘、改ざん、捏造、虚偽記載、架空 | 書き間違え、言い間違え、記憶違い |
(売上などの)除外 | 計上漏れ |
仮装隠蔽 | 誤り、ミス |
事実と異なると知りながら~ | 当時は事実だと認識していたが~ |
不正の目的で~ | 不正の目的はなく、誤って~ |
※ あくまで一般論であり、個別の状況に対応するものではありません
具体的には、以下のような質問が想定されます。NGワードに誘導するかのような、誘導尋問的な質問をされることもあるため、慎重に回答しましょう。なお、記憶があやふやで正確に答えられない場合は「調べて後日回答します」と言えばOKです。
誘導されないよう注意したい質問(一例)
直接的にNGワードを言わせる質問 |
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矛盾が生じやすくなる質問 |
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※ あくまで一般論であり、個別の実例を紹介するものではありません
「100%」や「絶対」などと口にすると、ろくなことになりません。あとで例外が一つでも見つかると、矛盾する証言をしたことになるからです。「概ね」や「ほぼ」のような言い換えをしましょう。さらにしつこく追及されたら「後日回答」でOKです。
このほか、何気ないあいづちにも注意が必要です。「はい、そうです」のように断定せず、「はい、現時点ではそう考えます」のように、あとで矛盾点を指摘されてもリカバリーしやすい言動を心がけましょう。