毎年7月~12月は税務調査が増える!?

更新日: 2020/09/30
毎年7月~12月は税務調査が増える!?

税務署では、毎年7月から新しい「事務年度」がスタートします。例年、7月~12月の上期において、税務調査の件数が多くなると言われています。本記事では、これに関連する疑問についてざっくり答えていきます。

INDEX

目次

    税務調査はなぜ7月~12月に増える?

    国税庁は、独自の「事務年度」という単位で年を区切っています。その関係上、7月~12月に、税務調査が多くなるとされています。

    国税庁の「事務年度」は7月から6月まで

    下期の1月~3月ごろまでは、確定申告シーズンです。また、税務署の人事異動は、基本的に7月10日に行われます。それゆえ4~6月ごろも、新しい調査案件に着手しにくい時期なのです。

    もちろん、1月~6月には税務調査を実施しないというルールはありません。実態として、こういう傾向がありそうだ、というだけの話です。税務調査は年中行われるので、つねに最低限の備えはしておきましょう。
    >> 準備を万全にしておきたいとき – 帳簿の保存方法など

    そもそも税務調査とは?

    いわゆる「税務調査」とは、税務署の職員などが訪問し、税金の申告漏れや不正がないか調査することをいいます。通常は、電話などで「事前通知」があります。このとき、調査内容(税目、目的など)が知らされ、日時や場所について話し合うことも可能です。

    なお、ここでいう税務調査というのは、税務署の職員などが持つ「質問検査権」に基づく「実地の調査」のことです(国税通則法74条の2)。ゆえに、国税庁の資料などでは「実地調査」と表記されます。

    「税務調査が入る確率は1.1%」ってホント!?

    国税庁の資料によると、税務調査が行われる割合は1.1%とされています(2017事務年度)。なお、これは“納税の申告を行った個人”における割合です。法人は除外されています。

    2017事務年度の実地調査率は1.1%

    >> 「税務行政の将来像」に関する最近の取組状況(p.21) – 国税庁

    上記にならって、2018事務年度(2018年7月~2019年6月)についても計算してみると、大体同じくらいで、約1.2%になります(2019事務年度については、2020年11月以降に数字が公表されるため、それまでは計算できません)。

    直近(2018年7月~2019年6月)の税務調査件数と割合

    税務調査件数 納税の申告を行った個人 割合
    73,579 6,384,000 1.2%

    参考資料:
    平成30年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(2019年5月) – 国税庁
    平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(2019年11月) – 国税庁

    ただし、上表の「個人」には、事業所得以外で申告している人も含まれています。「個人事業主が税務調査を受けた割合」ではないのです。約638万人の納税申告者のうち、事業所得者は168万人程度しかいないので、1.2%という数字を真に受けてはいけません。

    税務調査の割合は「確率」ではない

    税務署の職員は、調査対象者を無作為に選ぶわけではありません。過去の確定申告書類などを見て、調査する必要があるかを個別に“判断”しています。当然、業種や所得の状況など、個別の事情が大きく影響するということです。

    ちなみに、税務調査を受けた個人のうち、8割以上が申告漏れなどを指摘されています(2018年)。

    税務調査件数 申告漏れなどの指摘件数 割合
    73,579 60,964 82.9%

    参考資料:平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(2019年11月) – 国税庁

    税務署が力を入れて取り組んでいること

    税務調査における「主な取組」として、2018事務年度では、以下の4点が挙げられていました。といっても、とくに目新しいものはなく、ここ数年は基本的に変わっていません。

    • 富裕層に対する調査
    • 海外投資等を行っている個人に対する調査
    • インターネット取引を行っている個人に対する調査
    • 無申告者に対する調査

    インターネット取引は、ネット通販だけを指すのではありません。Uber EatsやAirbnbなど、ネットを利用したシェアリングサービスによる取引も、これに含まれます。Youtuberなど、デジタルコンテンツを扱う事業主も同様です。

    引用

    シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

    (p. 7)平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況 – 国税庁

    インターネット取引の主な例

    • Bitcoinなどの暗号資産(仮想通貨)のネットトレード
    • CAMPFIREやMakuakeなどのクラウドファンディング
    • メルカリやヤフオク、Amazonなどを介したネット通販
    • Youtubeチャンネルやブログサイトのアフィリエイト
    • noteやBASEなどでのデジタルコンテンツ販売
    • Uber EatsやAirbnbなどのシェアリングエコノミー
    • タスカジやココナラなどスキル提供型のマッチングサイト
    • LancersやCrowdWorksなどのクラウドソーシング

    とくに、仮想通貨やクラウドファンディングなどで多額の収入を得ている場合は注意しましょう。一般的に、高所得であるほど調査の余地も多いと考えられます。また、上述の通り、国税庁はいわゆる「富裕層」への調査にも力を入れています。

    「税務調査」と「査察」の違いは?

    2020年6月に、国税庁から「査察の概要」が公開されました。「査察」は、悪質な脱税者を告発し、刑事責任を追及するための調査で、いわゆる「税務調査」とは全く異なります。下表の通り、税務調査に比べて件数も非常に少ないので、気にしなくてOKです。

    2019年度の件数(全国)

    処理件数 所得税の告発件数 総告発件数
    165 17 116

    参考資料:令和元年度 査察の概要(2020年6月) – 国税庁

    また、調査を行う機関も目的も、以下のように異なります。税務調査は、税務署の職員が「質問検査権」という権限によって行う任意調査です。ゆえに、税務調査の対象となる税目や期間、帳簿などについて、きちんと事前通知があります。日時なども交渉可能です。

    税務調査 査察
    方法 任意調査 強制調査
    機関 税務署の個人課税部門 国税局査察部(マルサ)
    目的 申告漏れなどを調査する 悪質な脱税者などを告発する

    ただし、いくら任意といっても、原則として「税務調査に応じない」という選択肢はありません(一般的に「受忍義務」という)。調査を拒んだ場合は、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金と定められています(国税通則法128条)。

    まとめ

    税務調査は「受忍義務」があるとはいえ、任意調査です。きちんと同意に基づいて調査手続が進んでいきます。万が一、申告漏れなどを指摘されたとしても、ミスや見解の相違による申告漏れは、脱税のような犯罪とは異なります。過度に萎縮する必要はありません。

    税務調査の件数や方針について

    • 一般的に、7月~12月は税務調査が多い時期とされている
    • 1月~3月は、確定申告シーズンなので税務調査にまで手が回りにくい
    • 4月~6月は、定期人事異動を控えているので新しい案件に着手されにくい
    • 税務調査を受けた個人の割合は、全体の1.1%(2017事務年度)
    • ただし、税務調査が入りやすいかどうかは、個別の状況により大きく異なる
    • ここ数年、インターネット取引を行う個人は、積極的に調査されている

    未経験の方は、突然ゾロゾロと大勢で押しかけられ、家中あちこちひっくり返された挙げ句、証拠品を無理やり押収されてしまうのでは、と不安になるかもしれません。しかし、査察ならともかく、通常の税務調査でそのような乱暴なことはありません。