白色申告の個人事業主は「単式簿記(簡易な簿記)」の形式で帳簿づけをします。帳簿のフォーマットに規定はなく、記帳方法も会計ソフト・Excel・手書きなどなんでもOKです。
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目次
白色申告で作成する帳簿について
白色申告でも、収入や必要経費などを記録した帳簿の作成が義務付けられています。記帳方法は「単式簿記」でOK。単式簿記とは、家計簿やお小遣い帳のようなカンタンな記帳方法です。
帳簿の様式や記帳方法は自由
- 会計ソフトを使って記帳する ←オススメ!!
- エクセルなどの表計算ソフトで記帳する
- 紙のノートなどに手書きで記帳する
必要事項が記帳してあれば、帳簿の様式や記帳方法は自由です。会計ソフトを使うと、スムーズに帳簿付けができ、確定申告も自動化しやすいです。白色申告なら、高機能なソフトが無料から利用できます。
帳簿付けから確定申告までの流れ(白色申告の個人事業主)
1年分の帳簿付けが完了したら、12月31日付けで集計し、確定申告書を作成します。帳簿自体は提出しませんが、確定申告が済んだあとも、領収書などと併せて一定の期間保存しておく必要があります。
帳簿や書類の種類に応じて、具体的な保存期間が異なります。すべての書類を年ごとにまとめて、念のため7年間保存しておくと安心です。
帳簿の保存期間と保存方法について詳しく
白色申告で記帳する内容
白色申告者が帳簿づけする内容は、取引における「年月日」「摘要」「収入 or 必要経費」の3項目に大別されます。
上図は、国税庁が公開している単式簿記のテンプレートです。ここからは、この様式に沿って各項目の記帳方法を説明していきます。(このテンプレートと全く同じ形式で帳簿付けをする必要はありません)
白色申告者が記帳すべき項目 – 個人事業主の帳簿付け
年月日 | 取引の発生した日付を記帳する |
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摘要 | 取引の概要や、取引先の名称などを記帳する |
収入 | 事業で得た売上などの金額を記帳する |
必要経費 | 事業を営む上でかかる支出金額を記帳する |
収入は「売上」と「雑収入等」に分けて記帳する
事業の収入は、基本的に「売上」として記帳します(上図①)。ただし、助成金を受け取った場合など、売上と直接関係ない収入は「雑収入等」として帳簿付けします(上図②)。
必要経費は「仕入」と「経費」に分けて記帳する
売上に直接関係する費用は「仕入」として記帳します(上図③)。一般的には、販売するために購入した商品や原材料、またこれらを運ぶための送料などが当てはまります。
仕入以外にかかった、事業を営む上で必要な費用は「経費」として記帳します(上図④)。たとえば、消耗品の購入費用や交通費、事務所の家賃などがこれにあたります。
白色申告の帳簿の付け方
白色申告の帳簿の付け方は、大きく分けて「手書き・エクセル・会計ソフト」の3つあります。法律上はどの方法でも構いませんが、初めて帳簿付けをする個人事業主には、会計ソフトがおすすめです。
手書きの場合
最近では会計ソフトの利用者が多くなってきましたが、手書きで帳簿づけする場合は、市販の簡易帳簿などを利用するのが一般的です。たとえば、商品の売上2万円を手書きで記帳すると、以下のようになります。
このように、日付や取引に関する情報(取引先・商品名・販売個数・取引手段・値段など)を、ひとつずつ書き込みます。1日分の取引金額をまとめて記帳する場合は、合計金額を計算して記入します。
エクセルの場合
エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトでも、白色申告の帳簿付けは可能です。エクセルなら、パソコンに元からインストールされていることが多いので、お金をかけずに売上や経費の集計などができます。
エクセルの場合は、自分でシートを用意しないといけない点がネックです。会計・税務について一定の知識がないと、シートを作るだけでも苦労します。無料でテンプレートを配布しているサイトもありますが、その良し悪しを初心者が判断するのも困難でしょう。
国税庁サイトの該当ページ下方から、白色申告用の帳簿様式をダウンロードすることもできますが、使い勝手はイマイチです。この様式には集計用のシートがないので、結局は自分でシートを作成する必要があります。
国税庁サイトからダウンロードできるエクセルファイルは、手書き用の帳簿様式を、何の工夫もなくそのままエクセル化しただけの簡素なものです。これを使うぐらいなら、無料の会計ソフトを使ったほうが遥かに便利ですし、集計ミスなどの予防にもつながります。
クラウド会計ソフトの場合
白色申告では「1日分の取引金額をまとめて記帳してよい」など、簡易な方法での帳簿付けも認められています。とはいえ手書きは大変なので、 白色申告でも会計ソフトの利用を推奨します。
特に「クラウド会計ソフト」は初心者向けに作られており、スムーズに入力できるのでオススメです。入力画面に沿って入力していくだけで、初心者でもカンタンに帳簿づけができます。
たとえば、クラウド会計ソフトで売上を記帳する場合は、以下のように入力するだけでOKです。(売上は現金で受け取ったものとする)
「やよいの白色申告 オンライン」の操作画面
画面に沿って上から順番に「取引日」「科目」「摘要」「取引先」「金額」を入力していき、登録ボタンをクリックすれば帳簿付け完了です。入力した商品名や取引先名はソフトに記憶されるので、次の登録時からは入力する手間も省けます。
白色申告対応のクラウド会計ソフト
白色申告者向けのクラウド会計ソフトのうち、代表的なものとして「やよいの白色申告 オンライン」があります。こちらは白色申告に特化して作られたソフトで、年会費無料で利用できます(サポート付きプランは有料)。
「やよいの白色申告 オンライン」の帳簿付け画面
また、他の大手クラウド会計ソフト「freee会計」や「マネーフォワード クラウド確定申告」も、白色申告に対応しています。
freee会計 | マネーフォワード クラウド確定申告 |
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帳簿や領収書などは7年間保管しておこう
作成した帳簿は、領収書などと一緒に一定期間保存しておくよう法律で定められています。領収書や請求書などは、帳簿づけした内容の裏付けとなる重要な書類なので、うっかり無くさないように注意しましょう。
帳簿・書類の保存期間(白色申告の個人事業主)
帳簿・書類 | 保存期間 |
---|---|
法定帳簿(収入や必要経費などを記帳した帳簿) | 7年 |
任意帳簿(法定帳簿以外で必要に応じて作成した帳簿) | 5年 |
その他の書類(帳簿の作成に使用した領収書などの書類) |
帳簿や書類は、それぞれ保存期間が異なりますが、すべて年ごとにまとめて7年間保存しておけば安心です。帳簿が手元にない状態で税務調査が入ると、必要以上に税金を取られてしまう可能性もあるので、必ず保存しておきましょう。
帳簿・書類はデータ保存も可能!
帳簿や書類は「紙」で保存しておくのが基本です。しかし、一定の要件を満たせば「データ」の状態で保存しておくことも認められます(電子帳簿保存)。
電子帳簿保存の要件は少しややこしいですが、ひとまず法令対応の進んだ会計ソフトを使っておけば安心です。本記事で紹介した「やよい・freee・マネーフォワード」のクラウド会計ソフトは、どれも電子帳簿保存法への対応を進めています。
電子帳簿保存法の要件について詳しく
帳簿の作成や保存を怠った場合に罰則はある?
白色申告の場合、帳簿を作成しなくても直接的なペナルティはありませんが、税務調査などで「推計課税」を受けるリスクがあります。推計課税とは、帳簿や書類が適切に保存されていない場合に、税務署側の言い値で税額が決まる仕組みのことです。
税務調査は全員が受けるものではなく、申告書類に不審な点が見つかった場合などに実施されます。万が一、税務署から税務調査の連絡が来たら、収入や経費についてしっかり説明できるように準備しましょう。
帳簿や書類を証拠として保存していないと、収入や経費がいくらだったのか確かめようがないので、実額ベースで税額を計算するのは困難です。このような場合、同業者の業績などを参考に、税務署側が税額を推計します(推計課税)。
推計課税では、本来より高い税金が課されるケースも多いです。たとえば、「本当は200万円の経費があるのに、100万円しか認められない」という場合などです。そうならないよう、普段から帳簿書類はきちんと保存しておきましょう。
まとめ – 白色申告の帳簿と申告時期について
白色申告は単式簿記で記帳します。作成した帳簿をもとに毎年の確定申告を行いましょう。確定申告では、その年の1月1日~12月31日に帳簿づけした内容を、翌年2月16日~3月15日に税務署へ申告します(土日祝日の場合は翌平日)。
帳簿付けのポイント【白色申告の個人事業主】
- 2014年以降は、白色申告でも帳簿の作成・保存が義務づけられている
- 「簡易な簿記」が認められていて、記帳方法や様式は自由
- 個々の取引金額が少額であれば、1日分の取引をまとめて記帳しても良い
- 帳簿には、主に「年月日」「摘要」「収入 or 必要経費」などを記録する
- 帳簿や領収書などは、年ごとにまとめて7年間保存しておくと安心
- 電子帳簿保存法の要件を満たせば、帳簿・書類のデータ保存も認められる
従来、帳簿は「手書き」で作成して「紙」で保存しておくのが一般的でした。しかし、これから帳簿付けを始める個人事業主には「クラウド会計ソフト」で記帳して「データ」のまま保存しておくのがおすすめです。
クラウド会計ソフトの利用には、大抵「1,000円/月」程度のコストがかかります。といっても、会計業務にかかる時間や労力を大幅に削減できることを考えれば、決して高い金額ではありません。本業の生産性UPのためにも、利用を検討してみてください。