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個人事業主の所得控除【一覧表】

更新日: 2024/07/11
個人事業主の所得控除【一覧表】

所得控除について、個人事業主向けにまとめました。多くの所得控除を受ければ、それだけ納める税金を低くできます。ただ、所得控除にはそれぞれ要件が定められています。また、自分で申告しないと適用されないので、漏れがないよう気をつけましょう。

INDEX

目次

    個人事業主の所得控除【一覧】

    所得控除を受けることで、所得税などの納税額を抑えられます。個人事業主が受けられる所得控除は、以下のとおりです。控除の対象や控除額についてざっくりまとめました。

    概要と控除額
    社会保険料控除 国民年金や国民健康保険の保険料を納めた場合の控除
    その年に支払った保険料の全額
    小規模企業共済等
    掛金控除
    小規模企業共済や確定拠出年金の掛金を支払ったときの控除
    その年に支払った保険料の全額
    生命保険料控除 生命保険(民間の保険会社によるもの)などを支払ったときの控除
    最高12万円
    ※生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料 各4万円まで
    地震保険料控除 地震保険料などを支払ったときの控除
    最高5万円
    寡婦控除 夫と離婚や死別をした女性のための控除
    27万円
    ひとり親控除 シングルマザー・シングルファザーのための控除
    35万円
    勤労学生控除 学校に通いながら働いている人のための控除
    27万円
    障害者控除 本人や配偶者、扶養親族が障害者である人のための控除
    一人につき27万円 or 40万円 or 75万円
    配偶者控除 対象となる配偶者がいる場合に受けられる控除
    13万円 or 26万円 or 38万円
    ※配偶者が70歳以上なら16万円 or 32万円 or 48万円
    配偶者特別控除 配偶者控除の対象外でも条件を満たせば特別に受けられる控除
    1万円~38万円
    扶養控除 16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる控除
    一人につき38万円〜63万円(扶養親族の年齢によって異なる)
    基礎控除 多くの人が適用できる控除
    48万円(合計所得2,400万円超の場合を除く)
    雑損控除 災害や盗難によって住宅や家財などに損害を受けたときの控除
    損失額に応じた控除額
    医療費控除 医療費などを一定額以上支払ったときの控除
    その年に支払った医療費などに応じた控除額

    ※特例として「セルフメディケーション税制」がある
    寄附金控除 特定の団体に寄附をしたときの控除(ふるさと納税を含む)
    特定寄附金 - 2,000円 = 寄附金控除額(総所得金額の40%まで)
    青色申告特別控除 青色申告者だけが対象の控除
    10万円 or 55万円 or 65万円
    ※厳密には所得控除ではないが、同様の節税効果がある

    注意したいのは、控除額そのままの金額を税金から差し引くわけではないということです。たとえば、48万円の基礎控除を適用したからといって、税金が48万円まるまる少なくなるわけではありません(詳細は後述)。

    「生計を一にする」配偶者やその他親族の分もOK

    医療費控除社会保険料控除生命保険料控除雑損控除は、生計が同じ家族の分を納税者が支払っている場合、その分を含めて控除額を計算できます。家族のなかで一番所得が多い人が家族分の医療費や保険料を支払っていれば、節税につながるというわけです。

    対象者一人ごとに受けられる「障害者控除」と「扶養控除」

    障害者控除扶養控除は、控除の対象となる家族一人ごとに控除額が決まります。たとえば扶養控除なら、父と18歳の子を養っている場合、それぞれ38万円と58万円の控除が適用されるので、控除額は合計で96万円になります。

    所得控除とは – どうして節税につながるの?

    所得税は、一年間の所得金額をベースに納税額を算出します。しかし同程度の所得でも、一人暮らしの人もいれば、子や親を養っている人もいます。そういった個人・家庭的な負担を軽減するために「所得控除」があります。

    そもそも、所得税の金額は以下のような流れで算出します。

    所得税算出のおおまかな流れ

    所得控除の金額が大きいほど「課税所得」の金額が少なくなります。課税所得が少なければ、そのぶん所得税額も少なくなります。所得(収入 − 経費)が同じくらいでも、下図のような差が生まれるわけです。

    控除額が多い場合と少ない場合の所得税の違い

    ただ、所得控除は申告をし忘れるとその恩恵を受けることができないので、忘れずに申告しましょう。

    所得控除を申告する流れ – 控除額を確定申告書に記入

    所得控除を受けるために、計算した控除額を確定申告書に記入します。確定申告は、原則2月16日~3月15日の間に行います。

    確定申告で提出する「確定申告書」の第一表に、控除額を記入する欄が設けられています。第二表には、控除額の算出に関わる情報(保険料の支払い金額など)を記入します。

    確定申告書 第一表 確定申告書 第二表
    令和年分以降用 確定申告書第一表 所得控除記入欄 令和4年分以降用 確定申告書 第二表 所得控除記入欄

    確定申告書の記入方法

    所得控除は住民税の金額にも影響する

    所得控除は、所得税だけでなく住民税の納税額を計算する際にも適用されます。とはいえ住民税の金額は、確定申告の内容に基づいて納付先の自治体が納税額を算出してくれるので、自分で行う必要はありません。

    所得税と住民税の違い

    所得税(国税) 住民税(地方税)
    税額の計算 自分で計算して申告
    (申告納税方式)
    市区町村が計算して通知
    (賦課課税方式)
    納付時期 原則3月15日までに納付 6月頃に届く通知書に従って納付

    住民税の場合も所得税と同様に、控除額が大きいほど節税につながります。ただ控除額の上限は、所得税よりも低く見積もられていることがほとんどです。

    所得税と住民税の控除額を比較【一覧】

    納付する住民税を計算するときの税率は、自治体によって異なりますが基本的には一律10%です。それと同様に、住民税の控除額もだいたいの地域で同じ金額が設定されています。所得税の控除額とまったく同じものもあれば、低く設定されているものもあります。

    住民税の計算において、所得税の場合と同じ控除額が適用されるのは「雑損控除」「医療費控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「青色申告特別控除」の5つです。

    控除額が同じ所得控除

    所得税 住民税
    社会保険料控除 その年に支払った保険料の全額
    小規模企業共済等掛金控除 その年に支払った保険料の全額
    雑損控除 損失額に応じた控除額
    医療費控除 その年に支払った医療費などに応じた控除額
    青色申告特別控除 10万円 or 55万円 or 65万円

    上記5つ以外の所得控除は、所得税を計算する場合よりも控除額が低めです。ものによっては、住民税では半分程度の控除しか適用されないものもあります。

    控除額が異なる所得控除

    所得税 住民税
    生命保険料控除 最高12万円 最高7万円
    地震保険料控除 最高5万円 最高25,000円
    寡婦控除 27万円 26万円
    勤労学生控除 27万円 26万円
    障害者控除 27万円 or 40万円 or 75万円 26万円
    配偶者控除 13万円 or 26万円 or 38万円 11万円 or 22万円 or 33万円
    配偶者特別控除 1万~38万円 1万~33万円
    扶養控除 原則38万円 原則33万円
    基礎控除 最高48万円 最高43万円
    寄附金控除 特定寄附金 - 2,000円 = 控除額
    (総所得金額の40%まで)
    特定寄附金 - 2,000円 = 控除額
    (総所得金額の30%まで)

    「基礎控除」と「青色申告特別控除」は国保の保険料にも適用

    個人事業主が加入する「国民健康保険」(以下「国保」)の保険料を計算する際にも、控除は活躍します。該当するのは「基礎控除」と「青色申告特別控除」の2つのみ。以下の金額が控除されます。

    国民健康保険での控除額

    控除額
    基礎控除 最高43万円
    青色申告特別控除 10万円 or 55万円 or 65万円

    国保の保険料は、住んでいる地域ごとに異なります。個人事業主の場合は保険料を全額負担しなくてはならないので、負担を軽減してくれる控除はありがたいです。
    >> 国保の詳細

    ちなみに、その年に支払った国保の保険料は「社会保険料控除」の対象です。そちらの申告も忘れずに行いましょう。

    近年追加された特例&2020年の税制改正について

    所得控除の要件や上限額は、社会情勢などを反映して基本的に毎年更新されます。今まであった控除が廃止されて新しいものに切り替わったり、対象外だった控除が受けられるようになったり……。常に新しい情報を取り入れて、控除を最大限利用しましょう。

    「セルフメディケーション税制」が2018年に設置

    医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が2018年に設けられました。基本的に医療費控除は年間10万円以上の医療費を支払っていないと控除を受けられません。しかし、セルフメディケーション税制なら一般の市販薬を12,000円以上支払っている場合でも申告できます。

    「基礎控除」「青色申告特別控除」などは2020年分から要件が変更

    所得控除のなかでも、「基礎控除」「青色申告特別控除」は2020年分(令和2年分)から控除額などの要件が大きく変更されました。

    これまですべての納税者に適用された「基礎控除」は、合計所得によって控除額が減少、もしくは控除を受けられなくなりました。「青色申告特別控除」は、申告方法などの要件が変わり、10万円・55万円・65万円のうちどれかが適用されることになりました。
    >> 基礎控除の変更点(2021年に行う確定申告から)
    >> 青色申告特別控除の変更点(2021年に行う確定申告から)

    2019年分まで 2020年分から
    基礎控除 一律38万円 最高48万円
    ※所得金額によって異なる
    青色申告特別控除 10万円 or 65万円 10万円 or 55万円 or 65万円
    ※電子申告などの要件が追加

    ほかにも、2020年分から「障害者控除」「扶養控除」の対象者に関する要件が見直されるなど、ひんぱんに税制改正が行われています。

    所得控除のまとめ

    所得控除は、納税者の家庭環境や生活状況などのプライベートに関わる部分を考慮して、税金をおさえてくれる制度です。個人事業主が受けられる控除は、最大15種です。

    所得控除の重要ポイント

    • 控除額が大きいほど、納める税金が少なくなる
    • 控除額そのままの金額が税金から差し引かれるわけではない
    • 医療費や保険料などは生計を一にする家族の分も支払っていれば控除の対象になる
    • 「基礎控除」「社会保険料控除」は納税者のほとんどが控除の対象
    • 「障害者控除」「扶養控除」は対象者一人ごとに控除が適用される
    • 所得控除を受けるには、控除額などを確定申告書に記入する

    事業主自身の社会保険や生命保険などのプライベートな保険料は「所得控除」の対象です。「必要経費」として収入から差し引くことはできません。ただし、自宅兼事務所に対する保険の場合などは家事按分して一部を所得控除に、一部を必要経費にできます。

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