配偶者控除・配偶者特別控除 – 各要件や控除額について

更新日: 2025/07/31 税理士監修
配偶者控除・配偶者特別控除 – 各要件や控除額について

目次

    配偶者控除 or 配偶者特別控除 – 配偶者の稼ぎで異なる

    「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、所得1,000万円以下の既婚者が受けられる所得控除です(細かな要件などは後述)。結婚相手の収入などに応じて、受けられる控除額などが下図のように異なります。

    配偶者の所得と配偶者控除額・配偶者特別控除額

    結論から言うと、配偶者特別控除を満額で受けるには、夫や妻のパート収入を年間160万円以下に抑えてもらう必要があります。配偶者の年収が160万円を超えると、控除額が段階的に減少し、年収201万円を超えると控除が受けられなくなります。

    ちなみに、ここでいう「年収」は、パート代などの給与収入を想定しています。もし、配偶者がパート以外でも収入を得ているなら、それらの収入を総合した「合計所得金額」により上記の判定を行う必要があります(詳細は後述)。

    【おさらい】所得控除とは? 所得税の計算方法

    所得税の金額は、おおよそ以下のような流れで算出します。所得控除が多いほど、税額を抑えられるわけです。

    所得税算出のおおまかな流れ

    所得控除について詳しく

    配偶者控除とは? ‐ 年収123万円以下の配偶者がいる

    「配偶者控除」は、ざっくり言うと、給与収入が年間123万円以下の配偶者と暮らしている場合に受けられる所得控除です。控除額は原則38万円です。

    「配偶者控除」と「配偶者“特別”控除」の違い

    「配偶者特別控除」は、配偶者の給与収入が123万円をオーバーしてしまった場合に受けられる所得控除です。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」を、同時に受けることはできません。

    配偶者控除 配偶者特別控除
    控除額 13万円 or 26万円 or 38万円 1万円~38万円
    配偶者の給与収入 123万円以下
    (所得が58万円以下)
    123万円超~201万円以下
    (所得が58万円超~133万円以下)
    あなたの
    合計所得金額
    1,000万円以下 1,000万円以下

    配偶者の年収が増えると、配偶者控除から配偶者特別控除に切り替わり、控除額が少しづつ減っていきます。この仕組みにより、配偶者のパート収入などが123万円をちょっと超えたとしても、急に控除がなくなることはありません。

    配偶者控除の要件【同一生計・年収123万円など】

    配偶者が以下の4つすべてに当てはまる場合、あなたの所得が1,000万円以下なら、あなたは配偶者控除を受けられます。なお、要件を満たすかどうかは、その年の12月31日の時点で判断します。

    • 民法の規定による配偶者である
    • あなたと生計を一にしている
    • 事業専従者に該当しない
    • 年収が123万円以下である(給与収入のみの場合)

    1. 民法の規定による配偶者であること

    あなたと配偶者が、民法で定められた婚姻関係にあることが条件になります。“内縁関係”や“事実婚”はNGということです。基本的に婚姻届を出していれば問題ありません。

    2. あなたと生計を一にしていること

    あなたと配偶者が同じ財源で生活している状態を指します。必ずしも同居している必要はありません。仕事の都合などで別居している場合でも、生活費を共有していれば「生計を一にしている」と言えます。

    3. 事業専従者に該当しないこと

    配偶者が白色事業専従者として働いている場合や、青色事業専従者として給与(専従者給与)を受け取っている場合、配偶者控除は受けられません。これは、配偶者が「あなた以外の親族が営む個人事業」に従事している場合も同様です。

    事業専従者とは?
    簡単に言うと「親族の個人事業で働く人」のこと。「事業にもっぱら従事していること」という要件があるため、ちょっと手伝っている程度では該当しない。

    4. 年収が123万円以下であること

    配偶者がパートなどで得る給与収入が、年間123万円以下でなくてはなりません(他に収入がない場合)。ちなみに給与収入は、税金や保険料を天引きされる前の金額で判断します。

    なお通勤手当は、妥当な金額であれば給与収入に含めません(非課税)。たとえば、電車やバスの定期代なら、月15万円以下であれば非課税です。最終的な給与収入の金額は「源泉徴収票」などでチェックしましょう。

    配偶者控除の金額【原則38万円】

    配偶者控除の控除額は、あなたの所得(合計所得金額)に応じて以下のように異なります。合計所得金額」は、あなたが個人事業主であれば、ひとまず事業所得(収入 - 経費)のことだと考えてOKです。

    所得900万円以下 所得950万円以下 所得1,000万円以下
    38万円 26万円 13万円

    ちなみに、現役世代の個人事業主にとってはあまり関係ない話ですが、配偶者が70歳以上の場合、控除額が少し増えて「48万円・32万円・16万円」の3段階になります。

    配偶者特別控除とは? ‐ 年収201万円以下の配偶者がいる

    配偶者の年収が123万円を超え、配偶者控除が適用されない場合は「配偶者“特別”控除」を受けられるかチェックしましょう。配偶者特別控除なら、配偶者はおよそ201万円まで稼いでも控除対象になりえます。(給与収入のみの場合)

    配偶者の給与収入と控除額の関係(配偶者控除・配偶者特別控除)

    配偶者の年収が123万円を超えても、160万円までは満額で控除を受けられます。さらに、配偶者の年収が160万円を超えても、いきなり控除がなくなることはありません。

    配偶者特別控除の要件【同一生計・年収201万円など】

    配偶者が以下の要件をすべて満たす場合、あなたの所得が1,000万円以下なら、あなたは配偶者特別控除を受けられます。

    • 民法の規定による配偶者である
    • あなたと生計を一にしている
    • 事業専従者に該当しない
    • 年収が123万円超~201万円以下(給与収入のみの場合)

    その他の細かな要件:配偶者自身が配偶者特別控除を適用していない等

    なお、4つ目の要件は、正確には「合計所得金額が48万円超~133万円以下」と定められています。しかし、給与収入しか得ていないなら「103万円超~201万円以下」と考えて問題ありません。

    配偶者特別控除の金額【原則38万円~3万円】

    配偶者特別控除の控除額は「配偶者の給与収入」と「あなたの年間所得」に応じて、以下のように異なります。なお、記載している給与収入はあくまで目安です。最終的には所得に換算して考えてください。

    あなたの合計所得金額
    900万円以下 900万円~950万円 950万円~1,000万円
    配偶者の
    給与収入
    123万円~160万円
    (所得58万円~95万円)
    38万円 26万円 13万円
    160万円~165万円
    (所得95万円~100万円)
    36万円 24万円 12万円
    165万円~170万円
    (所得100万円~105万円)
    31万円 21万円 11万円
    170万円~175万円
    (所得105万円~110万円)
    26万円 18万円 9万円
    175万円~180万円
    (所得110万円~115万円)
    21万円 14万円 7万円
    180万円~185万円
    (所得115万円~120万円)
    16万円 11万円 6万円
    185万円~190万円
    (所得120万円~125万円)
    11万円 8万円 4万円
    190万円~197万円
    (所得125万円~130万円)
    6万円 4万円 2万円
    197万円~201万円
    (所得130万円~133万円)
    3万円 2万円 1万円
    201万円超
    (所得133万円超)
    控除なし

    「~」は「超 ~ 以下」

    たとえば、あなたの所得が400万円で、配偶者の給与収入が170万円の場合、配偶者特別控除の控除額は21万円になります。

    配偶者控除・配偶者特別控除の申告方法

    確定申告で配偶者控除・配偶者特別控除を受ける際は、確定申告書の第一表に控除額、第二表に配偶者の情報を記入します。「第二表→第一表」の順に作成するのがスムーズです。

    確定申告書
    第一表
    確定申告書
    第二表
    令和6年分以降用 確定申告書B 第一表「配偶者(特別)控除」 令和6年分以降用 確定申告書B 第二表「配偶者(特別)控除」

    配偶者控除を受ける場合は、第二表の詳細欄で「同一」に○をつけます。一方、配偶者“特別”控除を受ける際は、「同一」に○をつけません。配偶者“特別”控除の対象となる配偶者は、「同一生計配偶者」に該当しないからです。

    「合計所得金額」を確認する方法 ‐ 確定申告書の第一表

    合計所得金額・総所得金額・総所得金額等(確定申告書B)

    あなたの「合計所得金額」は、上図の赤枠部分で確認できます。あなたの合計所得金額が900万円を超えると控除額が減少し、合計所得金額が1,000万円を超えると控除がゼロになります。

    【補足】住民税で配偶者控除を受けるには? 手続きは不要!

    住民税の計算は、自治体が勝手にやってくれます。確定申告で配偶者控除を受けていれば、住民税でも自動的に配偶者控除が適用されると考えてOKです。配偶者控除と配偶者特別控除の金額は、住民税においては下記のとおりです。

    【住民税の計算】配偶者控除の金額 – 原則33万円

    所得900万円以下 所得950万円以下 所得1,000万円以下
    33万円 22万円 11万円

    配偶者のパート収入などが123万円(=所得58万円)を超えたら、以下の「配偶者特別控除」の表を参照します。細かな金額の違いはあるものの、基本的な仕組みは所得税と同じです。

    【住民税の計算】配偶者特別控除の金額(2026年度~)- 33万円~1万円

    900万円以下 900万円~950万円 950万円~1,000万円
    配偶者の
    給与収入
    123万円~165万円
    (所得58万円~100万円)
    33万円 24万円 12万円
    165万円~170万円
    (所得100万円~105万円)
    31万円 21万円 11万円
    170万円~175万円
    (所得105万円~110万円)
    26万円 18万円 9万円
    175万円~180万円
    (所得110万円~115万円)
    21万円 14万円 7万円
    180万円~185万円
    (所得115万円~120万円)
    16万円 11万円 6万円
    185万円~190万円
    (所得120万円~125万円)
    11万円 8万円 4万円
    190万円~197万円
    (所得125万円~130万円)
    6万円 4万円 2万円
    197万円~201万円
    (所得130万円~133万円)
    3万円 2万円 1万円
    201万円超
    (所得133万円超)
    控除なし

    ※ 上記は、2025年分以降の所得に課税される2026年度以降の住民税の場合

    なお、上記の表は2025年分以降の最新版です。2026年度の住民税からは、上記の表を用います。住民税は、今年の所得に基づいて来年度の税額が決まる仕組みなので、このように1年遅れて反映されます(前年課税)。

    まとめ – 配偶者控除・配偶者特別控除の重要ポイント

    配偶者が以下の要件をすべて満たすとき、あなたは「配偶者控除」か「配偶者特別控除」のどちらかを受けられます。ただし、あなたの所得が年間1,000万円を超えると、どちらも適用されません。

    配偶者控除と配偶者特別控除の要件の違い

    ちなみに収入の要件は、正確には「合計所得金額」を基準に判断します。事業所得や給与所得など、複数の所得を得ている場合は、それらをひっくるめた金額で考えるということです。

    配偶者控除・配偶者特別控除の要件に関する注意点

    • 夫婦間で互いに配偶者控除・配偶者特別控除を受けることはできない
    • “内縁関係”や“事実婚”の場合は配偶者と見なされない
    • 生活の財源が同じなら、別居でも「生計を一にしている」と言える
    • 支給される交通費は基本的に給与収入に含めなくてよい

    配偶者特別控除の控除額は、配偶者の収入増加に伴って、最大38万円から段階的に減っていきます。配偶者の給与収入が123万円を超えたからといって、急に控除がなくなるわけではありません。

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    監修

    税理士法人BlueWorksTax
    税理士・会計士
    俣野 和仁
    事務所を渋谷区に構え、主にフリーランス、一人会社を対象に、時代の流れに沿った新しい税理士の姿を目指し事業を営んでおります。自社開発したアプリを含むITツールの駆使により、お客さまとの初回面談から資料のやり取り、記帳、申告までの業務フローを体系化し、リーズナブルな税務顧問料によるサービスを実現しました。
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