所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。個人事業主の場合は、事業で得た所得(収入 − 経費)が課税の対象になります。税額は、所得から所得控除などを差し引いた金額に、税率をかけて算出します。
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目次
所得税とは?
個人事業主の場合、1年間の事業で得た利益などに所得税が課せられます。毎年の確定申告で納税額を計算し、事業主が自分で申告・納付を行います。このとき、納税額はおおよそ以下のような流れで算出します。
「課税所得」は、1年間の収入から必要経費や所得控除を差し引いた、いわば純粋な儲けのようなものだと考えましょう。経費が多かった年などは、課税所得がマイナスになり、所得税の納付が不要になる場合もあります。
所得税の計算式
もう少し具体的に説明すると、所得税の納税額は以下のような計算式で算出します。
- (収入 − 必要経費 − 所得控除) × 税率 − 税額控除 = 納税額
収入から差し引ける「所得控除」の額は、人によって異なります。所得控除には下記のような種類があり、それぞれ受けるための要件が異なるためです。
控除を受けられる目安 | |
---|---|
基礎控除 | すべての事業主が受けられる |
配偶者控除 | パート収入が103万円以下の配偶者がいる場合 |
扶養控除 | アルバイト収入が103万円以下の子供などと生活している場合 |
社会保険料控除 | 自分や家族の国民年金や国民健康保険を支払った場合 |
寄附金控除 | 「ふるさと納税」をしたり、一定の寄附金を支払った場合 |
なお、計算式の後半にある「税額控除」は所得控除と異なり、算出した所得税額から直接差し引きます。住宅ローンを支払う際や、株式の配当金を受け取った際など、限られたケースでのみ適用されます。
税率は課税所得の金額によって異なる
所得税の税率は、課税所得(収入 − 経費 − 所得控除)の金額によって、以下のように異なります。
課税所得の金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
ここで言う「控除額」は、前述した所得控除や税額控除とはまったく別モノです。計算の手間を省くために設定されているだけの数字なので、とにかく該当する金額を税額から差し引いてしまってOKです。
計算例① 所得税の計算方法
以下のような個人事業主を例に、所得税額を実際に計算してみます。
-
・収入:500万円
・必要経費:100万円
・所得控除:108万円(基礎控除48万円 + その他の控除60万円)
・税額控除:なし
このとき課税所得は292万円なので、前述の税率表にあてはめると、所得税率は10%、計算上の控除額は97,500円です。よって、計算式は以下のようになります。
- (500万円 – 100万円 – 108万円) × 10% – 97,500円* = 194,500円
* 計算上の控除額
この例の場合、所得税額は194,500円になります。ちなみに、2037年まではここに「復興特別所得税」も加わるので、実際の納税額は若干アップします。
計算例② 復興特別所得税の計算方法
2037年分までは、「復興特別所得税」も所得税と一緒に納めなくてはなりません。「復興特別所得税」は、東日本大震災の復興に向けた財源確保のために設けられた税金で、先ほどの所得税額に2.1%をかけて税額を求めます。
前述した計算例の場合だと、所得税額が194,500円なので「復興特別所得税」は以下のように計算します。なお、1円未満の端数は切り捨てます。
- 194,500円 × 2.1% = 4,084円
つまり、所得税と「復興特別所得税」を合わせた金額は、198,584円となります。ただし、納付の際には100円未満の端数を切り捨てるので、実際の納税金額は198,500円です。
所得税の納付期限
所得税の納付期限は、その年の確定申告期限と同じ「原則3月15日」です。確定申告で税額が決定したら、すぐに納付を行いましょう。ただし、振替納税を選択した場合は振替日が4月中旬になり、納付を1ヶ月程度遅らせることができます。
ちなみに、期限に遅れても納付はできますが、「延滞税」などが加算される場合があります。
所得税が15万円以上なら「予定納税」が必要な場合も
前年分の所得税額が15万円以上だった事業主は、当年分の所得税の一部を「前払い」する必要があります。これを予定納税と呼び、通知が届いた事業主は、7月と11月に「予定額」の3分の1をそれぞれ納付します。
所得税の納付方法
所得税の納付方法には、主に以下のような選択肢があり、事業主が自由に選択できます。
窓口納付 | 銀行や税務署の窓口で納付書を使って現金で納める 事前の手続きは不要 |
---|---|
スマホアプリ納付 | 専用のwebサイトからスマホ決済アプリで納める 事前の手続きは不要 |
クレジットカード納付 | 専用のwebサイトからカード決済で納める 事前の手続きは不要 |
振替納税 | 指定した口座からの振替で納める 「振替依頼書」を納期限までに税務署等へ提出する |
コンビニ納付 | コンビニのレジで納める 事前に専用の納付書を発行する |
電子納税 | e-Taxで納付情報を登録して、振替などで納める 事前にe-Taxの開始手続きを行う |
あらかじめ、振替納付の申請を済ませておくのがオススメです。クレジットカード納付は、事前準備も不要で手軽ですが、手数料がやや高めに設定されています。
>> 主な税金の納付方法まとめ – 所得税や住民税はどう納付する?
納付時の仕訳例
所得税は、事業の経費にはできません。事業用の口座などから納付した場合は、「事業主貸」として処理しておきましょう。
事業用口座から振替納付した場合の仕訳例
事業用の口座から10万円の所得税を振替納付した場合、複式簿記では以下のように仕訳します。なお、仕訳の日付は振替日にしましょう。振替日は毎年4月の中旬あたりで、国税庁が日程を発表しています。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月21日 | 事業主貸 100,000 | 預金 100,000 | 所得税納付 |
所得が48万円以下なら納付は不要?
所得税の確定申告ではすべての事業主に「基礎控除」が適用され、所得(収入-経費)から基本的に48万円が差し引かれます。そのため、所得が48万円以下の場合は課税所得がゼロになります。
課税所得がゼロの場合、もちろん所得税額もゼロとなるため、所得税の納付は不要です。ただ、正確な所得を申告していないと、保険料の支払いなどで損をしてしまう場合があります。所得が少なくても、確定申告は済ませておきましょう。
まとめ – 所得税の重要ポイント
個人事業主の場合、事業で得た利益などに所得税が課せられます。納税額は確定申告で決定し、確定申告期限までに納付を行います。
所得税の重要ポイント
- 納付期限は原則3月15日(土日祝日の場合は翌平日)
- 計算式は「(収入 − 必要経費 − 所得控除) × 税率 − 税額控除」
- 2037年分までは復興特別所得税も合わせて納付する
- 前年の所得が15万円以上なら予定納税が必要な場合もある
- 納付した税額を仕訳する際は「事業主貸」として処理する
所得税にはいくつかの納付方法があり、事前の申請などを済ませていれば自由に選択することができます。主な納付方法は以下の通りです。
納付方法 | 事前の申請 | |
---|---|---|
窓口納付 | 銀行や税務署の窓口で納付書を使って納付 | 不要 |
スマホアプリ納付 | 専用サイトからPay払いアプリで納付 | |
クレジットカード納付 | 専用サイトからクレジットカードで納付 | |
振替納税 | 指定した口座からの振替で納付 | 必要 |
コンビニ納付 | 専用の納付書を使ってコンビニで納付 | |
電子納税 | e-Taxで納付情報を登録して納付 |
なお、青色申告の方式で確定申告を行うと、多くの場合で所得税を節税することができます。所得税の納付が必要になったら、検討することをおすすめします。