セルフメディケーション税制とは?【控除を受ける流れ】

更新日: 2020/09/08 税理士監修
セルフメディケーション税制とは?【控除を受ける流れ】

「セルフメディケーション税制」は医療費控除の特例です。この制度を適用すると、市販薬の購入金額に応じて控除を受けることができます。ただし、市販薬なら何でもよいわけではなく、レシートに「セルフメディケーション税制の対象商品」のように記載される市販薬に限ります。

INDEX

目次

    セルフメディケーション税制とは

    セルフメディケーション税制は、毎年の健康診断を受けるなど、健康管理をきちんとしている納税者に向けた制度です。市販の「スイッチOTC医薬品」を購入し、実際に負担した金額が年間12,000円を超えたら、その金額に応じた所得控除を受けられます。

    これは医療費控除の特例です。通常の医療費控除と同時には受けられないので、注意しましょう。納税者が、どちらか有利なほうを選択できます。また、2017年(平成29年)1月1日~2021年(令和3年)12月31日の5年分と、期間が限られています。

    セルフメディケーション税制 通常の医療費控除
    健康管理 必要 不要
    対象の医療 スイッチOTC医薬品の購入費 法的に認められた医療全般
    対象の金額 1万2,000円~ 基本10万円~
    控除額の上限 8万8,000円 200万円

    セルフメディケーション税制の対象になる市販薬は「スイッチOTC医薬品」と呼ばれます。識別するのはカンタンで、購入時のレシートや商品パッケージの識別マークを見ればわかります。

    セルフメディケーション税制の対象になる市販薬はマークとレシートで識別できる

    セルフメディケーション税制による所得控除額の計算式

    セルフメディケーション税制の所得控除額の計算式

    つまり、スイッチOTC医薬品の購入金額(自己負担分)が年間1万2,000円を超えていれば、超えた金額に応じて控除を受けられるということです。ちなみにスイッチOTC医薬品には、一般的な内服薬だけでなく湿布薬や点眼薬、禁煙補助剤なども含まれています。

    なお、事故などで生命保険金や損害賠償金を受け取ることがありますが、これに治療費が含まれる場合は「保険金など」に該当します。したがって、その事故が原因で購入したスイッチOTC医薬品の金額から、受け取った治療費の分を差し引いて控除額を計算します。

    控除を受けるまでの流れ

    セルフメディケーションの特例を受けるには、納税者が一定の準備や手続きを行う必要があります。以下の4ステップに分けて説明します。

    1. 健康のために「一定の取組」を行い、その領収書などを保管する
    2. 「スイッチOTC医薬品」を購入したら、そのレシートを整理して保管する
    3. 「セルフメディケーション税制の明細書」を作成する
    4. 必要書類(①と③)を添えて確定申告をする

    その年に「① 健康診断など」を受けて「② スイッチOTC医薬品」のレシートを保管しておきます。①と②は順番が前後しても大丈夫です。翌年になったら、確定申告を行う日までに「③ 明細書」に記入します。その上で、「④ 確定申告」を行えば完了です。

    セルフメディケーション税制で控除を受けるまでの流れ

    ちなみに、翌年に行う③と④の書類作成については、①と②に関する情報を機械的に転記・計算してゆくだけなので、とくに難しいことはありません。

    確定申告期間(翌年3月15日まで)に手続きが間に合わなかったら?

    還付申告(払いすぎた税金を返してもらうための確定申告)については、過去5年分までさかのぼって行えます。したがって、その年の「① 健康診断などの証明書」と、「② 医薬品のレシート」さえあれば、確定申告期間をちょっと過ぎてしまっても対処可能です。

    ① 健康診断などの領収書や結果通知表を保管する

    セルフメディケーション税制を適用するには、毎年の健康診断を受けているなど、「一定の取組」が必要です。以下に示す(1)~(5)のいずれかを実行した上で、その事実を書類で証明できればOKです。領収書や結果通知表は、必ず保管しておきましょう。

    なお、この「一定の取組」は年内であればいつ行っても構いません。そのため、健康診断を受ける前に買ったスイッチOTC医薬品についても、申請すればちゃんと控除を受けられます。

    「一定の取組」に該当するものリスト

    (1) 一般的な健康診査、各種検診、人間ドック

    「医療保険各法等の規定に基づき健康の保持増進のために必要な事業として行われる健康診査または健康増進法第19条の2の規定に基づき健康増進事業として行われる健康診査」

    (2) インフルエンザの予防接種、定期予防接種

    「予防接種法第5条第1項の規定に基づき行われる予防接種またはインフルエンザに関する特定感染症予防指針第2の2の規定により推進することとされる同法第2条第3項第1号に掲げる疾病に係る予防接種」

    (3) 事業主健診(いわゆる定期健康診断、会社の従業員が毎年受けるもの)

    「労働安全衛生法第66条第1項の規定などに基づき行われる健康診断」

    (4) メタボ健診、特定保健指導(動機づけ支援 or 積極的支援)

    「高齢者の医療の確保に関する法律第20条の規定に基づき行われる特定健康診査または同法第24条の規定に基づき行われる特定保健指導」

    (5) 市町村が健康増進事業として行う乳がん、子宮がん検診など

    「健康増進法第19条の2の規定に基づき健康増進事業として行われるがん検診」

    「一定の取組」が必要なのは、控除を受ける納税者本人だけ

    納税者本人が「一定の取組」をしていれば、生計を一にする親族のために購入した市販薬代も、セルフメディケーションの対象になります。その家族が「一定の取組」をしているかどうかは関係ありません。

    健康診断の費用はセルフメディケーション税制の控除対象外

    健康診断などの「領収書」や「結果通知表」を確定申告書に添付するのは、「わたしは健康管理をちゃんとしてますよ」ということを、国に対して証明するのが目的です。そのため、健康診断などの費用は控除の計算には含めません。

    ②「スイッチOTC医薬品」のレシートを保管する

    「スイッチOTC医薬品」とは、一般のドラッグストアにある市販薬(=OTC医薬品)のうち、もともとは医師による処方が必要だった医薬品のことです。過去に医療用医薬品だったものをOTC医薬品に転用(スイッチ)したため、このような名称になっています。

    多くの場合、商品パッケージに識別マークが印刷されています。また、お店の人に聞けば教えてくれるので、いちいち自分で調べる必要はありません。

    セルフメディケーション税制 識別マーク

    「スイッチOTC医薬品」購入時のレシート

    さらに、スイッチOTC医薬品を購入すると、レシートに以下のように記載されます。

    OTC医薬品のレシート記載事項

    通常の医療費控除と同様、納税者と生計を一にする親族の分も対象です。そのため、レシートは家族の分も毎回とっておくようにしましょう。

    これらをもとに、年末か翌年の年始に1年間の合計金額を集計して「セルフメディケーション税制の明細書」を作成します。また、レシートは念のため5年間保管しておきましょう。

    ③「セルフメディケーション税制の明細書」を作成する

    確定申告時に「セルフメディケーション税制の明細書」を添付しなければなりません。この紙に「一定の取組」の内容や、スイッチOTC医薬品の内訳、年間購入金額を記入します。ここで計算した金額を確定申告書に転記するので、この明細書を先に作成しましょう。

    セルフメディケーション税制の明細書 記入項目

    確定申告前にまとめて行う作業になりますが、健康診断の結果通知表や、薬のレシートなどをきちんと整理していれば、スムーズに進むはずです。「医薬品の名称」や「支払った金額」などは、購入した薬局ごとにまとめて記入しても構いません。

    ④ 確定申告書に記入し、必要書類とともに提出する

    確定申告書には大別すると「確定申告書A」と「確定申告書B」の2種類がありますが、会社員でも個人事業主でも、確定申告書Bで申告しておけば問題ありません。いずれも記入する内容は同じなので、ここでは確定申告書Bを例に解説します。

    第一表 第二表
    令和元年分以降用 確定申告書B 医療費控除の記入欄 令和元年分以降用 確定申告書B(第二表)医療費控除の記入欄

    セルフメディケーション税制の特例を受ける場合、第一表は以下のように記入します。

    記入項目 記入する内容
    区分 セルフメディケーションの特例を受けるので「1」と記入する
    セルフメディケーション税制による控除額を右詰めで記入する
    (スイッチOTC医薬品の購入費 - 保険金など -12,000円)

    第二表は以下のように記入します。

    記入項目 記入する内容
    支払医療費等 年間に支払ったスイッチOTC医薬品の購入費の合計金額を記入する
    保険金などで補填される金額 保険金などで補填した金額を記入する(損害賠償金など)
    特例適用条文等 記入の必要なし(セルフメディケーション税制の特例とは無関係)

    なお、セルフメディケーションを選択して確定申告を済ませた年については、後で「修正申告」や「更正の請求」を行っても、通常の医療費控除には変更できません。

    まとめ ‐ セルフメディケーション税制のポイント

    セルフメディケーション税制は、「年間の医療費が10万円は超えないが、常用している市販薬がある」という人にはありがたい制度です。一緒に暮らす家族の分も対象なので、レシートをまとめて保管しておくとよいでしょう。

    セルフメディケーション税制の重要ポイント

    • 通常の医療費控除と同時には受けられない (有利な方を自分で選択する)
    • 控除を受けられるのは、健康のために「一定の取組」を実施している納税者だけ
    • 控除対象となるのは「スイッチOTC医薬品」を購入した金額
    • 実際に負担した金額のうち、12,000円を超えた部分が控除額になる
    • 「一定の取組」の証明書として、健康診断の結果通知表などを添付する
    • 「セルフメディケーション税制の明細書」を、レシートなどをもとに自分で作成する
    • 確定申告書に必要事項を記入し、証明書と明細書を添付して提出する

    セルフメディケーション税制の対象になるのは、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる市販薬のみです。病院での診療費や、医師から処方された薬は対象外です。

    セルフメディケーション税制対象マークとレシート

    大抵の「スイッチOTC医薬品」には、上図のように識別マークがついています。識別マークがついていなくても、レシートに「セルフメディケーション税制の対象商品」として記載があれば控除の対象になります。

    監修

    柴田会計事務所
    税理士
    柴田 裕士
    1983年生まれ、千葉県出身。高校卒業後にプロレスラーを目指し大阪プロレスに入門するが怪我によりプロレスラーになるのを断念した後、税理士試験を通過し税理士となった異色の経歴を持つ。現在は東京都板橋区にて10人規模の税理士事務所を経営している。