自営業がとことん分かるメディア

税理士を雇うメリット・デメリットとは?個人事業主向けに徹底解説

更新日: 2025/05/08 PR
税理士を雇うメリット・デメリットとは?個人事業主向けに徹底解説

個人事業主などの小規模事業者向けに、税理士を雇うメリット・デメリットをわかりやすく解説します。記事の後半では、税理士に頼るべきケースや費用相場についても具体的に紹介します。個人事業主のほか、小規模法人の方にも参考にしていただける内容です。

INDEX

目次

    税理士を雇うメリット

    個人事業主が税理士に依頼することで得られる恩恵は数多くあります。ここでは、主なメリットを整理します。

    1. 経理や確定申告の事務負担が軽減される
    2. 正確な経理ができ、確定申告でのミスや漏れをなくせる
    3. 税務の専門知識に基づく節税のアドバイスがもらえる
    4. 税務リスクや税務調査への備えができる
    5. 経営相談や資金調達のサポートが受けられる

    メリット① 経理や確定申告の事務負担が軽減される

    税理士を雇うことで、日々の帳簿付けや毎年の確定申告作業から解放され、本業に集中できるようになります。事業の成長に専念できる環境が整うことは大きな利点と言えるでしょう。

    事業が成長して取引量が増えれば、いずれは自力での帳簿付けや確定申告は難しくなり、税理士に依頼する必要が出てきます。いきなりゼロから税理士を探すのは大変なので、無料相談やスポット依頼を通じて、早めの段階から税理士と関係構築しておくのがおすすめです。

    メリット② 正確な経理ができ、確定申告でのミスや漏れをなくせる

    経理作業に不慣れな場合、ミスや申告漏れのリスクも高まりますが、税理士に任せれば正確な処理が保証されるため安心です​。経理の正確性がアップすることで、より的確な経営判断も可能になります。

    確定申告で税額を本来より少なく申告した場合、うっかりミスであってもペナルティとして追加の税金を取られる恐れがあります。税務署から指摘を受ける前に修正すれば、基本的にはペナルティはかからないので、過去の申告内容も税理士に見てもらうと良いです。

    メリット③ 税務の専門知識に基づく節税のアドバイスがもらえる

    税理士は税務のプロフェッショナルです。複雑な税法や頻繁な制度改正にも対応しており、自力では判断に迷うような場面でも適切なアドバイスが受けられます。

    たとえば「これも経費にできるのか?」「どの特例を使えば節税できるのか?」といった疑問や課題に対しても、税理士なら最適な申告方法を提案してくれます。結果として、税金の払い過ぎを防ぎ、手元に残るお金を最大化するサポートをしてくれます。

    メリット④ 税務リスクや税務調査への備えができる

    税務申告の内容に誤りがあると、後々税務署から指摘や追徴課税を受けるリスクがあります。税理士に依頼すれば申告内容の正確性が担保され、以下のようなリスクを軽減できます。

    税理士を雇えば軽減できるリスク

    追徴課税の対象になる 申告漏れや誤りが発覚すると、本来の税金に加えて追徴課税(過少申告加算税・無申告加算税など)が課される
    延滞税が発生する 納税が遅れた場合、法定利率に応じた延滞税が発生する
    最大7年分の遡及調査 通常は過去3年分、重大な過失や仮装・隠蔽がある場合は最大7年分遡って調査される(国税通則法第70条)
    青色申告取消しのリスク 重大な帳簿不備・虚偽申告があると、青色申告承認が取り消される可能性がある(所得税法第147条)
    重加算税が課される 仮装・隠蔽行為があったと認定されると、重加算税(最大40%)が課される(国税通則法第68条)
    金融機関など第三者への影響 税務署からの指摘記録は直接共有されないが、調査中・結果によって金融機関からの信用調査に影響する場合がある

    また、売上規模が大きくなれば税務調査の可能性も高まりますが、税理士は税務調査への対応の際にも心強い味方となります。

    メリット⑤ 経営相談や資金調達のサポートが受けられる

    税理士は単に経理作業を代行するだけでなく、経営全般の相談役にもなります。たとえば、融資を受ける際の事業計画書や、補助金申請の書類作成について助言をもらえることもあります。

    税理士にできることの例(経営相談・資金調達サポート)

    • 融資(日本政策金融公庫、民間銀行など)の申請アドバイス
    • 補助金・助成金申請時の必要書類作成支援
    • 資金繰り表の作成・キャッシュフロー改善のアドバイス
    • 金融機関との面談・交渉のサポート(同席または事前アドバイス)
    • 法人設立・法人成りのタイミング相談
    • 事業拡大・新規事業展開時の資金計画アドバイス
    • 税務調査に備えた内部体制(帳簿・管理資料)の整備支援

    正確な帳簿は金融機関からの信頼にもつながるため、税理士のサポートによって資金調達がスムーズになるケースもあります。また、事業拡大や法人化のタイミングの相談など、経営判断に関わるアドバイスを得られるのもメリットです​。

    税理士の多くは行政書士の資格も持っています。税理士資格を取ると、行政書士の試験が免除されるためです。税理士と行政書士のダブルライセンスで活動している税理士を選ぶと、上記のようなサポートが一層得られやすくなります。

    税理士を雇うデメリット

    一方で、税理士に依頼することには以下のようなデメリットもあります。

    1. 金銭コストがかかる
    2. 相性が良い税理士を探すのに手間がかかる
    3. 税務知識が身につきにくい

    デメリット① 金銭コストがかかる

    税理士に仕事を依頼すれば、毎月の顧問料や決算時の申告書作成料を報酬として支払わなくてはいけません。事業規模にもよりますが、報酬金額は年間で数万円から数十万円かかります(詳細は後述)。

    デメリット② 相性が良い税理士を探すのに手間がかかる

    自分にピッタリ合った税理士を探すには、相応の手間や時間がかかります。また、どんなに手間をかけて探しても、相性の悪い税理士に当たってしまうリスクはゼロではありません。

    もちろん、どの税理士に頼んでも一定以上のスキルは担保されています。ただ、税理士によって得意な分野や業界などに個人差があるため、うまくマッチングしないと満足のいくサービスは受けられません。

    また、コミュニケーションの相性も重要です。「何でもガンガン提案してほしい!」という人もいれば、「余計な提案はせず、粛々と業務を進めてほしい」という人もいるでしょう。性格が合わないと、かえってストレスを抱える要因にもなりえます​。

    デメリット③ 税務知識が身につきにくい

    税務のすべてを税理士任せにすると、自分自身のスキルは向上しません。将来的に事業規模が大きくなったときや、税理士との契約を見直す際に、自らの税務に関する経験が少なければ不安を感じるかもしれません。

    とはいえ、普段から税理士としっかりコミュニケーションが取れていれば、大きな問題ではありません。税理士と仕事の話をするなかで、自然と税務知識も身についていきます。この点においても、やはり税理士との相性が重要だということです。

    税理士を雇うべきケース

    以上のメリット・デメリットを踏まえたうえで、「自分の場合、税理士はつけるべきか?」という判断基準について考えてみましょう。

    まず、税理士が必要になりやすい人について解説します。

    1. 年間売上が1,000万円を超える場合
    2. 事業規模が拡大して経理が複雑になっている
    3. 税務知識に不安がある、または経理に時間を割けない
    4. 法人を設立した場合
    5. 業種や取引形態が特殊な場合

    ① 年間売上が1,000万円を超える場合

    年間の売上が1,000万円を超えたら、消費税の申告に備える必要があるため、税理士を雇うのが無難です。消費税に関する法令はかなり複雑で、素人ではなかなか手に負えません。

    消費税の申告義務とは? ‐ 年間売上が1,000万円超の基準

    判定タイミング 原則「2年前(基準期間)」の課税売上高が1,000万円を超えた場合
    対象者 国内で取引などを行う事業者(個人・法人問わず)
    義務 消費税の申告書提出・納付を行う
    申告内容 消費税の納付額or還付額
    原則、年間の課税売上高や課税仕入高に基づいて計算する

    売上1,000万円というラインは、個人事業主でも税理士をつけた方が良い年収ラインの目安と言われます。この規模になると税務調査のリスクも高まるので、プロのサポートがあると安心でしょう。

    ② 事業規模が拡大して経理が複雑になっている

    経理・申告内容が複雑な場合は、税理士がいた方が効率的です。たとえば、以下のようなケースでは、プロに任せることで経理でのミスを防ぎ、本業に注力しやすい環境を実現できます。

    経理・申告内容が複雑なケースの例

    • 取引数が増え、膨大な数の領収書や請求書がある
    • 従業員を雇い給与計算が発生している
    • 複数の事業・不動産収入など収入源が複数ある

    ③ 税務知識に不安がある、または経理に時間を割けない

    税理士を雇うべきケース ‐ 知識不足を補いつつ時短につなげる

    税務知識への不安が大きい方や、事業が忙しく経理まで手が回らない方は、税理士を雇うメリットが大きいです。「青色申告の仕組みがよくわからない」「帳簿付けが本当に合っているか自信がない」という方は、検討してみましょう。

    税理士に依頼することで精神的な負担も軽減され、経理に取られていた時間をビジネス拡大に使えるようになります。

    ④ 法人を設立した場合

    税理士を雇うべきケース ‐ 法人成りした場合

    法人化する場合、素人だけで税務をこなすのは大きなリスクを伴うため、基本的には税理士をつけることをおすすめします。たとえ小さい会社や一人社長の会社であっても、税理士なしでやっていくのは現実的ではありません。

    個人事業主から法人(会社)になると、税務申告の内容が格段に増える上に、その内容も決算書の作成など、専門性がより高いものとなります​。これらの業務を代表者1人でこなすのは困難ですし、無理にこなそうとすれば本業に支障が出る恐れもあります。

    ⑤ 業種や取引形態が特殊な場合

    税理士を雇うべきケース ‐ 特殊な会計処理が必要な業種など

    インボイス制度への対応が必要な事業者なども含め、特殊な業種形態の方は税理士のサポートがあった方が安心です​。

    医療業、建設業、不動産業、飲食業など業種によっては会計処理や税法上の特例が複雑で、最初から税理士に任せるケースも多くあります。

    税理士を雇わなくても良いケース

    反対に、次のようなケースでは無理に税理士を雇わなくても良いでしょう。

    1. 事業規模が小さい(収入・取引が少ない)
    2. 自身にある程度の会計知識・経験がある
    3. 取引内容がシンプルで経理処理が単純

    ① 事業規模が小さい(収入・取引が少ない)

    取引数が少なければ、会計ソフトを使って十分に対応可能です。副業程度の小さな収入である時期や、開業直後で売上規模が小さいうちは、自力で確定申告をしてもさほど負担にならない場合があります。

    ② 自身にある程度の会計知識・経験がある

    過去に経理職の経験がある、簿記の資格を持っている、あるいは毎年自分で確定申告をしてきて特に問題がない場合は、自身で対応できる可能性が高いでしょう。

    税制改正の情報収集など手間はかかりますが、知識があれば税理士を介さずとも正確に処理できるはずです。

    ③ 取引内容がシンプルで経理処理が単純

    税理士を雇わなくてもよいケース ‐ シンプルな事業の場合

    収入源が一つで経費もほとんど発生しない、現金商売で在庫管理などもない、といった事業構造が単純な業種では、税務処理も比較的容易です​。このような場合、税理士を雇う必要性は高くありません。

    ただし、事業が成長すれば状況は変わるため、将来的に必要になったときすぐ依頼できるよう準備をしておくと安心です​。

    なお、小会社で社長自身が税務に精通している場合などは、法人であっても税理士を雇わないケースがないわけではありません。しかし法人税の申告は個人以上に複雑なため、特殊な事情がない限り税理士をつけることをおすすめします。

    税理士に依頼する費用と料金相場

    税理士を雇う場合にどれくらいの費用がかかるのか、税理士を雇う費用の相場感を押さえておきましょう。契約形態や依頼内容によって料金は大きく異なりますが、一般的な個人事業主を想定した目安を紹介します。

    これから紹介する料金相場は、あくまで目安の金額です。実際の税理士報酬は業種や取引量、依頼内容によって変動します。あくまで参考材料の一つとしてご活用ください。
    申告 記帳 相談 だいたいの相場(年額)
    顧問契約
    (継続依頼)
    約35万円
    約30万円
    約10万円
    スポット依頼 約5万円

    顧問契約(丸投げで依頼する場合)

    税理士と顧問契約を結んで「丸投げ依頼」をする場合は、年間売上高に応じて税理士費用が概ね決まるのが一般的です。丸投げ依頼では、確定申告書の作成に加え、日々の経理も含めた「申告・記帳・相談」のすべてを税理士に依頼します。

    年間売上高 費用相場(年額)
    1,000万円〜 約20万円
    500万~1,000万円 約15万円
    〜500万円 約10万円

    ※「〜」は、超〜以下

    個人事業主が税理士に丸投げした場合の費用相場は、年間売上500万円以下なら約10万円ほどです。売上500万〜1,000万円以下なら約15万円、売上1,000万円超で20万円程度が目安です(実際の料金は、仕訳数などの様々な要因で変動します)。

    自分では経理をほとんど行わずプロに任せる分、スポット依頼よりも費用は高くなりますが、その分本業に専念できるという大きな利点があります。

    顧問契約(相談や記帳サポートのみ)

    税理士と顧問契約を結び、月次や四半期ごとに継続して経理・税務のサポートを受けるケースです。顧問料は記帳代行の有無によって大きく異なります。

    依頼内容 費用相場(月額)
    相談のみ 約1万円前後
    相談+記帳代行 約3万円前後

    記帳は自分で行いチェックや相談だけ依頼する場合は月額1万円前後、記帳代行も含めて任せる場合は月額3万円前後が一つの相場と言われます。

    顧問契約では、日々の相談や節税アドバイスも含め継続支援が受けられますが、定期的な費用負担が発生します​。なお、記帳代行なしの顧問契約でも、決算書・申告書作成を依頼できる場合があります(料金は別途かかります)​。

    スポット依頼(確定申告のみ依頼)

    個人事業主が税理士に「スポット依頼」で確定申告書作成を依頼する費用相場は、おおむね「3万円〜5万円」程度です​。ここでいうスポット依頼とは、日々の帳簿付けは自分で行い、年に1度の確定申告書の作成だけを税理士に依頼することをいいます。

    比較的シンプルな業務だけ依頼するため、費用を抑えつつ最低限のサポートを受けたい場合に適した契約形態です。

    ただし、税理士の立場から見ると、単発の報酬しかもらえないわりに業務量が多く、納期がシビアな仕事だと言えます。そのため、申告期間が間近に迫ってから慌ててスポット依頼ができる税理士を探しても、なかなか見つからないことも多いです。

    まとめ ‐ 税理士のメリット・デメリット

    税理士を雇うメリットとデメリットを、最後にもう一度わかりやすくまとめておきましょう。税理士に依頼することで、お金はかかりますが、税務の悩みが減って本業に集中しやすい環境が作れます。

    メリット デメリット
    ① 経理などの事務負担が軽減される

    ② 確定申告でのミスや漏れをなくせる

    ③ 節税のアドバイスがもらえる

    ④ 税務調査などの備えができる

    ⑤ 経営や資金調達の相談ができる

    ① 金銭コストがかかる

    ② 税理士を探すのに手間がかかる

    ③ 税務知識が身につきにくい

    税理士に依頼すべきか判断するポイントは「自分の事業規模や経理負担を考えて、費用に見合うメリットがあるか?」です。したがって、個人事業主や小さい会社の経営者にとって、税理士をつけるかどうかは状況によって異なります。

    売上規模が大きくなってきたり、経理に割く時間が勿体無いと感じたりしているなら、税理士に依頼することで得られるメリットは大きいでしょう。一方、まだ事業規模が小さく経理も簡単であれば、ひとまず自力でやってみるのも一つの手です。

    重要なのは、状況の変化に応じて柔軟に判断することです。「税理士がいないと困る」と感じたときに、すぐに相談できる税理士の知り合いがいれば心強いでしょう。いますぐ税理士を雇う段階にはなくても、無料相談やスポット依頼などを通じて税理士とつながりを作っておくのはありです。

    \ この記事をSNSでシェアする /
    PICKUP POSTS
    ピックアップ記事
    マネーフォワード クラウド確定申告
    NEW POSTS
    に関する新着記事
    自営業の専門メディア 自営百科
    最新情報はSNSアカウントで