確定申告には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。一定の条件を満たせば、青色申告ができ、さまざまな税制上の特典が受けられます。記事の後半では、最大65万円の青色申告特別控除を受ける条件なども解説しています。
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目次
青色申告ができる所得の条件とは?
青色申告ができるのは「事業所得・不動産所得・山林所得」の3種類のみです。それ以外の所得に関しては、青色申告はできません。まずは、どんな収入がこの3種類に当てはまるのか、わかりやすく説明していきます。
事業所得
事業所得とは、個人が営む事業から生じる所得のことです。個人事業主やフリーランスが稼いだお金は、基本的に事業所得と考えてOKです。国税庁サイトでは、以下の業種が例示されています。
- 農業、漁業
- 製造業
- 卸売業、小売業、サービス業
- その他の事業
上記の例示からもわかるように、業種の制限などはとくにありません。ライター・プログラマー・デザイナーといったフリーランスも、事業所得の区分で確定申告できます。
不動産所得
不動産所得とは、不動産などの貸し付けで生じる所得のことです。マンション経営で家賃収入を得ている場合などが該当します。国税庁サイトでは、以下の3つが挙げられています。
- 土地や建物などの不動産の貸付
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付
- 船舶や航空機の貸付
不動産所得のなかでも、規模が大きいものは「事業的規模」と呼び、小さいものは「業務的規模」と呼びます。どちらも青色申告はできますが、事業的規模のほうがより多くの特典を得られます。
山林所得
山林所得とは、取得から5年超の山林を譲渡することで生じる所得のことです。わかりやすく言うと林業です。ちなみに、取得から5年以内の山林を売った場合は、事業所得や雑所得となります。
青色申告ができない所得もある!
以下の所得については、青色申告の仕組みがありません。たとえば、一般的な会社員が得ているのは、主に「給与所得」や「雑所得」です。こういう所得しかない人は、青色申告ができません。
給与所得 | 勤務先から受け取る給与や賞与による所得 例:会社員やアルバイトの給料・ボーナス・残業手当 |
---|---|
雑所得 | ほかのどの所得にも該当しない所得 例:国民年金・厚生年金、会社員の副業収入、仮想通貨やFXの利益 |
譲渡所得 | 土地・建物・株などの譲渡による所得 例:株の売買による差益、事業用備品の売却益 |
一時所得 | 一時的な所得で、ほかの所得に該当しない所得 例:生命保険の一時金、競馬や競輪の払戻金、福引や懸賞の賞金 |
利子所得 | 銀行預金や公社債の利息などによる所得 例:銀行預金につく利息、保有する国債や社債の利息 |
配当所得 | 法人から受け取る配当金や分配金による所得 例:株の配当金、投資信託の普通分配金 |
退職所得 | 退職などに起因する一時的な所得 例:退職金・退職手当、小規模企業共済やiDeCoの給付金(一括受取) |
サラリーマンの副業は、主に「事業所得」か「雑所得」に該当します。ざっくりいうと、本格的なビジネスなら事業所得で、そこまでの規模でなければ雑所得です。お小遣い稼ぎ程度の副業では、青色申告はできないと考えましょう。
青色申告をするために必要な手続き
青色申告をするには、まず税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。厳しい審査などはなく、申請書を提出すればそのまま承認されるのが通例です。
申請書の提出期限は、青色申告したい年の3月15日が原則です(詳しくは後述)。一度申請すれば、翌年以降の申請は必要ありません。
青色申告承認申請書の提出方法
青色申告承認申請書は、オンライン提出するのがおすすめです。以下のようなツールで、書類作成から提出まで、スマホなどで簡単にできます(ただし、マイナンバーカードが必要)。
- freee開業(無料)
- マネーフォワード クラウド開業届(無料)
- e-Taxソフト
もしマイナンバーカードを持っていなければ、書面でも提出は可能です。記入用紙は、税務署の窓口や国税庁サイトの該当ページで入手できます。
青色申告承認申請書の提出期限
わかりやすくいうと、確定申告書を提出する1年前には、青色申告の事前申請を済ませておく必要があります。ただし、新規開業した年に限り、開業日から2ヶ月以内でもOKです。
「まだ青色申告をする決心がつかない……」という方も、少しでも青色申告したい気持ちがあれば、期限内に事前申請をしておきましょう。「白→青」の変更は上記の期限内にしかできませんが、「青→白」に戻すのはいつでもできます。
青色申告特別控除を受けるための条件
青色申告のメリットのなかでも、一番の目玉は「青色申告特別控除」です。控除額は65万円・55万円・10万円の3段階で、それぞれ条件が異なります。控除額が多いほど節税効果は高いですが、そのぶん条件も厳しくなります。
>> 青色申告特別控除とは?節税できる仕組みや要件などを詳しく!
65万円控除の条件
- 事業所得か事業的規模の不動産所得を得ている
- 青色申告の事前申請を済ませている
- 複式簿記で記帳し、領収書等の関係書類を保存する
- 青色申告決算書を提出する(貸借対照表を含む)
- 確定申告期限を守る
- 電子申告 or 優良な電子帳簿の保存
上記の要件をすべてを満たすと、65万円の特別控除が受けられます。難しそうに見えますが、青色申告対応の会計ソフトを利用すれば、これらの要件を初心者でも比較的容易に満たせます。
なお、「電子申告 or 優良な電子帳簿の保存」の要件については、どちらか一方だけを行えばOKです。基本的には電子申告をおすすめします。優良な電子帳簿を選ぶと、事務負担がかなり増えるので、無理に選ばないほうがよいです。
55万円控除の条件
- 事業所得か事業的規模の不動産所得を得ている
- 青色申告の事前申請を済ませている
- 複式簿記で記帳し、領収書等の関係書類を保存する
- 青色申告決算書を提出する(貸借対照表を含む)
- 確定申告期限を守る
上記の要件をすべてを満たすと、55万円の特別控除が受けられます。ただ、これらの条件を満たせるなら、あとは電子申告するだけで控除額が65万円にアップします。せっかくなら65万円のほうを狙いましょう。
10万円控除の条件
10万円の特別控除については、難しい要件はありません。複式簿記での記帳や、貸借対照表の提出も不要ですから、実質的な難易度としては白色申告と大差ないです。
【補足】青色申告に所得金額の条件はある?
結論から言うと、所得金額の条件はなく、収入が少なくても青色申告は可能です。「青色申告は高所得者がするもの」というイメージがあるかもしれませんが、実際はそんなことありません。むしろ、収支がマイナスでも、基本的に青色申告のほうが有利です。
青色申告の主なメリット
青色申告特別控除 | 最大65万円の控除が受けられる |
---|---|
赤字の繰り越し | 赤字を最長3年にわたって繰り越せる |
少額減価償却資産 | 30万円未満の固定資産を単年で経費にできる |
専従者給与 | 家族などに支給した給与を経費にできる |
収支がプラスのときは「青色申告特別控除」が使えますし、マイナスのときは「赤字の繰り越し」が使えます。また、白色申告では経費にできない支出も、青色申告なら経費にできる場合があります(少額減価償却資産や専従者給与)。
ただし、青色申告特別控除に関しては「65万・55万・10万円」の3段階があり、それぞれ難易度が異なります。先述の通り、65万円控除が一番難しいです。所得が少ない事業主は、10万円控除で妥協してもよいでしょう。
小規模な副業では青色申告ができない
会社員の副業のうち、小規模なものについては、基本的に「雑所得」として扱われます。よって、小規模な副業では青色申告ができません。少なくとも、以下のどちらかに当てはまるときは、青色申告はできないと考えましょう。
- 副業の収支が赤字で、改善の取り組みもないとき(3年程度)
- 副業での収入が僅少のとき(3年程度)
ここでいう「僅少(きんしょう)」とは、副業収入が売上ベースで300万円以下、かつ本業の給与収入に対して10%未満である状態です。言い換えると、本業の10%以上の売上が立っていて、かつ黒字なら青色申告できる可能性は十分にあります。
まとめ
「事業所得・不動産所得・山林所得」は、一定の要件を満たせば青色申告ができます。事前申請が必要なので、計画的に手続きを進めましょう。他の所得については、そもそも青色申告ができません。
青色申告をするための条件 – 白色申告との違い
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
所得の種類 | ・事業所得 ・不動産所得 ・山林所得 |
(制限なし) |
事前申請 | 必要 | 不要 |
帳簿付けや書類保存 | 必要 | 必要 |
確定申告の決算書 | 青色申告決算書 (2〜4ページ) |
収支内訳書 (2ページ) |
難易度で言うと、青色申告のほうが若干難しいものの、大きな差はありません。事前の青色申告承認申請は、初めて青色申告するときだけなので、それほど負担ではありません。帳簿書類の保存が必要な点などは、白色申告と青色申告のどちらも共通です。
ただし、65万円・55万円の青色申告特別控除を狙う場合は、上記に加え、複式簿記で記帳するなどの条件をクリアする必要があります。
青色申告特別控除の条件 – 65万円・55万円・10万円
65万円控除 | 55万円控除 | 10万円控除 |
---|---|---|
・青色申告をする ・複式簿記で記帳する ・確定申告期限を守る ・電子申告 or 電子帳簿保存 |
・青色申告をする ・複式簿記で記帳する ・確定申告期限を守る |
・青色申告をする |
※ 上記は、控除額ごとの要件をわかりやすく簡易的にまとめたものです。
青色申告対応の会計ソフトを利用すれば、初心者でも比較的容易に65万円控除の要件をクリアできます。複式簿記に不慣れな人には、自動仕訳などの便利機能があるクラウド会計ソフトがおすすめです。