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インボイス制度で免税事業者はどうなる?【免税事業者のインボイス特集②】

更新日: 2020/11/15 投稿日: 2020/11/10
インボイス制度で免税事業者はどうなる?【免税事業者のインボイス特集②】

2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。「免税事業者が不利になる」と懸念されているこの制度ですが、本記事では具体的に免税事業者にどのような影響があるのか、3つのパターンに分けて解説していきます。

前回の記事はこちら↓
>> インボイス制度とは?5分でわかる要点【免税事業者のインボイス特集①】

INDEX

目次

    インボイス制度についておさらい

    2019年10月に消費税の軽減税率が導入された影響で、2023年10月から「インボイス制度」がスタートします。インボイス制度において「課税事業者」が仕入税額控除を受けるには、原則「適格請求書(=インボイス)」の保存が必要となります。

    一見、免税事業者には無関係のようにも思えますが、そうではありません。「免税事業者」には適格請求書を発行する資格がないのです。それゆえ、課税事業者の顧客が離れていってしまう恐れがあります。

    仕入税額控除とは?

    仕入税額控除とは、簡単に言うと、課税事業者が消費税を納める際に受けられる控除です。税務署へ納付する消費税は、以下のように算出するのが基本です。

    納める消費税の計算式

    適格請求書について

    適格請求書の最大の特徴は、「登録番号」の記載が義務付けられている点です。この「登録番号」を取得できるのは、税務署で「適格請求書発行事業者」の登録を受けた課税事業者のみです。つまり、免税事業者は適格請求書を発行できないということです。

    免税事業者は適格請求書を発行できませんから、課税事業者が免税事業者にお金を払う場合、そのときの消費税は仕入税額控除の対象になりません。これが理由で、課税事業者が免税事業者との取引を敬遠する恐れがあります。もし他の課税事業者と同じ取引をできるなら、仕入税額控除の対象になるほうを選ぶのが経済的です。

     主な顧客が「課税事業者」の場合【影響度 大】

    主な顧客が課税事業者である場合には、免税事業者であってもインボイス制度から間接的な影響を受けると考えられます。

    この場合は先述のとおり、免税事業者が課税事業者から取引を敬遠されることが考えられます。こうならないために、自ら課税事業者になることを検討したり、一定の値引きを自主的に行うなどの対応策が必要になるでしょう。

    課税事業者にしてみれば、「適格請求書」を交付してもらえないと仕入税額控除を受けられないので、そのぶん仕入れの負担が増えるわけです。それゆえ免税事業者としては、課税事業者である顧客をつなぎとめる方法を検討しなければなりません。

     主な顧客が「免税事業者」の場合

    主な顧客が免税事業者の場合、インボイス制度の導入による影響は少ないので、免税事業者のままでも支障はありません。たとえば、免税事業者のデザイナーが、同じく免税事業者であるウェブサイト制作者にイラストを販売する場合などがこれにあたります。

    免税事業者は消費税を申告・納税しなくてよいので、仕入税額控除は関係ありません。ですから、顧客が免税事業者であれば、適格請求書を発行できなくても問題ないというわけです。

    ただし、以前は免税事業者であった顧客が、インボイス制度の導入とともに課税事業者になる可能性もあります。制度導入までの間に取引相手と十分にコミュニケーションをとり、自らも課税事業者になるべきかどうか、よく考えておきましょう。

     主な顧客が「一般消費者」の場合

    飲食店や美容室などを営む免税事業者は、一般消費者が主な顧客のはずです。この場合も、インボイス制度の影響はほとんど受けないでしょう。一般消費者の多くは、消費税を負担する最終消費者であって、申告・納税が必要な事業者ではないからです。

    ただし、一般消費者のなかに課税事業者が含まれることも考えなくてはなりません。接待利用のお客さんが多く来店する飲食店などが、これに該当します。このような場合、免税事業者のままでは客足に響く可能性があります。

    顧客が一般消費者でも免税事業者が損をするケース

    たとえば課税事業者が、免税事業者の飲食店でかかった代金を「接待交際費」として経費計上するとします。このときの消費税は、仕入税額控除の対象になりません。よって、一般消費者を相手にするお店であっても、敬遠される恐れが少なからずあるのです。

    制度の導入スケジュール

    インボイス制度が導入されるのは2023年10月1日ですが、経過措置の期間を経て、2029年10月1日に完全移行となる予定です。経過措置のあいだは、免税事業者でも発行可能な「区分記載請求書」に記載された金額のうち、一定割合を仕入税額として控除できます。

    インボイス制度の導入スケジュール

    インボイス制度の完全移行に向けたスケジュール

    区分記載請求書の保存により控除できる割合は、上図のように80%・50%の2段階で減少する予定です。さらに、経過措置の期間が終了して、2029年10月1日以降になると、適格請求書が発行された取引だけが仕入税額控除の対象となります。

    【具体例】課税事業者にはどう影響する?

    インボイス制度の完全移行後、課税事業者が免税事業者と取引をすると、具体的にどう損をするのかを見てみましょう。

    たとえば、課税事業者である小売店が、メーカーから「10万円+消費税1万円」でハンドバッグ(商品)を仕入れました。そして、その仕入れた商品を「20万円+消費税2万円」で販売したとします。

    課税事業者の小売店が仕入れをする場合の利益

    この時点での小売店の利益は、一般消費者から受け取った22万円から、メーカーに支払った11万円を差し引いた「11万円」です。

    小売店(課税事業者)の手取りを比較

    ここからは、課税事業者である小売店の手元に残る金額(手取り)を見ていきましょう。仕入先が免税事業者の場合と課税事業者の場合について、それぞれ比較していきます。

    仕入先(メーカー)が免税事業者の場合 仕入先(メーカー)が課税事業者の場合
    仕入税額控除が適用されない場合(仕入先が免税事業者の場合) 仕入税額控除が適用される場合(仕入先が課税事業者の場合)

    仕入先(メーカー)が免税事業者の場合、小売店は仕入税額控除を受けられず、受け取った消費税2万円をそのまま税務署へ納めることになります。一方でメーカーが課税事業者の場合、小売店は仕入税額控除を受けられるので、税務署へ納める消費税は1万円で済みます。

    結果的に小売店は、免税事業者から商品の仕入れを行った場合、課税事業者から仕入れる場合に比べて、手元に残るお金が1万円少なくなってしまうのです。

    インボイス制の導入後は課税事業者になるべき?

    課税売上高が年間1,000万円以下の免税事業者でも、適格請求書を発行するため、みずから課税事業者になることは可能です。以下のメリット・デメリットを比較し、検討してみてください。

    免税事業者のままでいるメリット・デメリット

    メリット デメリット
    消費税の申告および納付が必要ない
    受け取った消費税をそのまま取り分にできる
    適格請求書を発行できない
    課税事業者から取引を敬遠される可能性がある

    当然ながら、免税事業者のままでいれば、消費税の申告や納付が必要ないというメリットがあります。顧客の動向次第では、免税事業者のままでも影響をそれほど受けない可能性もあるので、問題なさそうであればひとまず様子見でもよいでしょう。

    免税事業者のままでいるデメリットは、適格請求書を発行できないことにより、課税事業者の取引先が離れていく可能性があることです。このリスクを避けるには、課税事業者になるしかありません。

    まとめ – 免税事業者は顧客の動向に注意

    免税事業者であっても、税務署で所定の手続きをすれば、みずから課税事業者になることができます。主な顧客が課税事業者である場合は、インボイス制度の導入にともない「免税事業者のままでいることを諦めて課税事業者になる」という選択肢も、一度は検討しておいたほうがよいです。

    インボイス制度導入後、免税事業者は課税事業者になるべき?

    インボイス制度がはじまると、課税事業者が免税事業者に支払った対価に含まれる消費税について、仕入税額控除を受けられなくなります。そのため免税事業者は、課税事業者から取引を敬遠されるようになる可能性があります。

    主な顧客が免税事業者や一般消費者の場合は、インボイス制度が導入されても大きな影響はないでしょう。免税事業者や個人である一般消費者は、消費税申告をする必要がないので、そもそも仕入税額控除とは無関係だからです。

    ただし、一般消費者のなかに課税事業者が含まれることも多いので、その点は注意が必要です。普段から宛名入りの領収書を求められることが多いお店などは、免税事業者のままでいると客足に影響があるかもしれません。