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支払調書とは?報酬を受け取る個人事業主向けの解説

更新日: 2024/07/04
支払調書とは?報酬を受け取る個人事業主向けの解説

支払調書(しはらいちょうしょ)の活用方法などを、個人事業主向けにまとめました。支払調書には、取引先から1年間に支払われた報酬や源泉徴収税額が記載されています。じつは、支払調書を確定申告で提出する必要はなく、保存も義務付けられていません。

INDEX

目次

    支払調書とは

    いわゆる「支払調書」とは、企業などが個人事業主やフリーランスに対して報酬を支払ったときに、そのことを税務署へ報告するための書類です(正式には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」という)。個人事業主が取引先からもらうのは、そのコピーです。

    支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)とは

    報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

    • 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は法定調書のひとつ
    • 源泉徴収が行われた報酬について作成されるもの
    • 1年間の報酬の合計額や、源泉徴収税額などが記載してある

    あなたが源泉徴収済みの報酬を受け取った場合、支払側はこれについて支払調書を作成し「税務署」へ提出することになっています。つまり、あなたがもらった支払調書は、税務署に提出された原本のコピーにすぎません。参考資料として、あくまで親切心で送付してくれているわけです。

    支払調書をもらうケース

    以下のような報酬を取引先からもらっている場合、支払調書が送られてくることがあります。その仕事をした後、翌年の1月上旬~下旬ごろに送付されることが多いです。

    支払調書の作成対象となる報酬(一例)

    • 原稿料、講演料など
    • デザイン料、イラスト料など
    • 翻訳、通訳の報酬
    • 弁護士、税理士などに支払う報酬
    • テレビ、映画、舞台などへの出演料
    • コンパニオン、ホステスなどへの報酬

    報酬の支払い側は、作成した支払調書を税務署へ提出します。このタイミングで、報酬の受け取り側にもコピーを送付してくれるのが一般的です。ただ、本来的にはあくまでも支払側の善意によるものなので、送られてこないこともあります。

    支払調書は実際のところ確定申告に必要な書類ではありません。ですから、送られてこなくても確定申告はできます。

    確定申告書への添付は不要

    取引相手から支払調書を受け取っても、確定申告書には添付しなくてOKです(国税局に確認済)。国税庁のウェブサイトに申告書への添付書類の一覧ページが設けられていますが、この中にも支払調書は含まれていません。

    ただ「支払調書は確定申告の提出書類だ」と勘違いしている人も多く、稀に税務署や税理士などからも添付を求められることがあるようです。しかし、本来は添付しなくてよい書類なので、指摘されても心配することはありません。

    もらった支払調書の保存義務は?

    受け取った支払調書に保存義務はありません。とはいえ、取引先ごとの報酬額や源泉徴収額が一目で確認できる書類なので、申告書の控えや帳簿類と一緒に保管しておくと後から確認できて便利です。

    支払調書と帳簿の金額が合わないときは?

    報酬の支払側からもらった支払調書と、帳簿上の収入金額が合わない場合もあります。このような時は、まず自分の帳簿にミスがないか確認しましょう。正しく売上を記帳してあるのに支払調書と金額がズレる場合は、帳簿上の金額で確定申告をすればOKです。

    支払調書と帳簿で金額がズレるケース

    • 年をまたぐ取引があった
    • 端数処理の方法が支払側と受取側で異なった
    • 支払側が計算ミスをした

    ここでいう「年をまたぐ取引」とは、年内に発生した売上に関して、報酬の支払日が翌年以降になるような取引を指します。

    支払調書は、報酬の支払日をベースに作成する(現金主義)ことが多いです。一方で個人事業主の帳簿は、売上が発生した時点で記帳する(発生主義)のが基本なので、金額がズレることがあるわけです。

    支払調書と帳簿で金額がズレるケース - 年をまたぐ取引

    >> 現金主義と発生主義の違い

    ここまでは「報酬を受け取る側」の話でした。この次は「報酬を支払う側」の個人事業主向けに、支払調書の提出が必要なケースについて説明します。

    支払調書の提出が必要となるケース

    基本的に、個人事業主で支払調書の提出が必要になるのは、従業員を雇用している人です。従業員を雇わずに一人で仕事をしている人なら、特定の報酬を支払ったとしても支払調書の作成は不要です。

    ここでいう特定の報酬というのは、フリーランスのデザイナーへ支払うイラスト報酬などのことです。

    特定の報酬を支払った場合に行うこと

    従業員を雇用している事業主 従業員を雇用していない事業主
    源泉徴収 必要 不要
    支払調書の提出
    • 税務署 → 必須
    • 取引先 → 任意
    • 税務署 → 不要
    • 取引先 → 任意

    先述の通り、報酬の受取側(取引先)への支払調書の送付は任意で行うものです。ただ、商慣習から「支払調書は必ずもらえるもの」と誤解している人もたくさんいるので、ビジネスがスムーズに進むよう対応しましょう。

    • 支払調書の用紙は、税務署や国税庁の該当ページから入手できる
    • 作成した支払調書は、税務署へ提出する(電子申告も可能)
    • 提出期限は翌年の1月31日(原則)

    まとめ

    支払調書について、特定の報酬が生じた場合に行うことを、報酬の受け取り側と支払い側に分けて最後にまとめておきます。いずれの場合も、個人事業主を想定しています。

    報酬の受取側 – 支払調書のポイント

    • 報酬の「受取側」への送付は任意なので、届かないこともある
    • 帳簿が正しいのに支払調書と金額がズレる場合は、帳簿上の金額で確定申告を行う
    • 確定申告書への添付は不要で、保存も義務付けられていない

    報酬の支払側 – 支払調書のポイント

    • 一人で仕事をする個人事業主は作成不要
    • 従業員を雇っている個人事業主は、基本的に作成が必要
    • 対象者は原則1月31日までに税務署へ提出する(取引先への送付は任意)

    支払調書は、確定申告においてそこまで重要な書類ではありません。売上をきっちり帳簿づけしてきた個人事業主であれば、支払調書が送付されなくても特に支障はないのです。

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