「災害減免法」と「雑損控除」の違い

更新日: 2020/09/29
「災害減免法」と「雑損控除」の違い

「災害減免法による所得税の減免」を受けると、所得税が直接減額されます。「雑損控除」に比べると、対象になる人は限られますが、被害状況や納税者本人の所得によっては、災害減免法のほうが得になることがあります。

INDEX

目次

    災害減免法とは

    災害で資産の半分以上が損失したら、「災害減免法」という法律にしたがって、所得税の軽減または免除を受けられます。災害減免法が適用されれば、所得に応じた金額を所得税から直接的に差し引けます。ただし、納税者の所得が1,000万円を超える場合は、これを受けることができません。

    災害減免法は税額控除のひとつ

    「災害減免法による所得税の減免」は、所得税を直接的に減らす仕組みです。このように税金が直接的に減免される仕組みを「税額控除」といいます。一方、雑損控除などの「所得控除」は、所得を実際より低くみなすことによって、間接的に税金を減らす仕組みです。

    所得税が直接的に減免される「税額控除」

    災害減免法と雑損控除の比較

    災害減免法と雑損控除は、災害などの被害を受けたときに税金を軽くしてもらえる、という点では同じです。しかし、対象となる状況や計算方法などが異なります。

    災害減免法 雑損控除
    損害の
    原因
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    4. 盗難
    5. 横領
    資産の
    範囲
    住宅・家財の差引損失額が価額の2分の1以上であるとき 生活に通常必要な資産(住宅・家財・車両)が損害を受けたとき
    所得制限 所得1,000万円以下の人が対象 所得制限なし
    減税・
    控除額
    所得に応じた割合を所得税から減免する

    • 全額免除 → ~500万円
    • 50%軽減 → 500~750万円
    • 25%軽減 → 750~1,000万円
    いずれか多い方の金額を所得から控除する

    • 差引損失額 - 所得金額の10%
    • 災害関連支出の金額 - 5万円
    繰り越し 適用年のみ減免される その年に控除しきれない分は最大で3年繰り越せる
    対象の
    税金
    所得税にだけ適用される 所得税・住民税に適用される

    「~」は「超~以下」

    「災害減免法」と「雑損控除」は、同時に適用できないので、試算して有利なほうを選択しましょう。

    対象となる状況を比較

    災害減免法の対象になるのは、その年の合計所得1,000万円以下の人が、災害が原因で住宅・家財に大きな損害を受けたときです。「災害」とは、震災・風水害・冷害・雪害・落雷などの自然災害や、火災などの人為的災害、害虫などによる災害を指します。

    ただし、災害減免法による減免を受けるには、損害金額が住宅・家財の価額に対して1/2以上である必要があります。

    災害減免法と雑損控除の比較 ‐ 対象となる「損害の原因」

    災害減免法の対象 雑損控除の対象
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    4. 盗難
    5. 横領

    災害減免法の対象範囲は、雑損控除よりも狭く、盗難・横領による損害は対象外です。ちなみに、詐欺や恐喝に至っては、雑損控除の対象にすらなりません。

    災害減免法と雑損控除の比較 ‐ 対象となる「資産の範囲」

    災害減免法の対象 雑損控除の対象
    住宅・家財が損害を受けたとき
    (ただし損害金額が住宅・家財の価額に対して1/2以上のときに限る)
    住宅・家財・車両などのうち「生活に必要な資産」が損害を受けたとき

    災害減免法による減免は、損害金額が資産価値の半分以上でなければ受けられないので、大きな被害を受けたときに限られます。一方、雑損控除の場合は「生活に必要な資産」であれば対象になるので、比較的小規模の被害でも控除を受けられます。

    減税額・控除額などを比較

    災害減免法の特徴は、所得税が直接的に減免(税額控除)される点にあります。とくに、所得500万円以下の納税者は、適用した年の所得税を一切支払わずに済みます。ただ、雑損控除は最大で3年繰り越せるのに対し、災害減免法の恩恵は適用年のみなので、その点では劣ります。

    災害減免法 雑損控除
    所得1,000万円以下の人が対象 所得制限なし
    所得に応じた割合を所得税から減免する

    • 全額免除 → ~500万円
    • 50%軽減 → 500~750万円
    • 25%軽減 → 750~1,000万円
    いずれか多い方の金額を所得から控除する

    • 差引損失額 - 所得金額の10%
    • 災害関連支出の金額 - 5万円
    適用年のみ減免される 控除額を最大3年繰り越せる
    所得税のみ「税額控除」される 所得税・住民税への「所得控除」

    「~」は「超~以下」

    災害減免法の対象になるのは所得税のみで、住民税は対象外です。とはいえ、市県民税の申告書などを別途提出すれば、所得税には災害減免法の恩恵を受けつつ、住民税には雑損控除の恩恵を受けられます。

    「災害減免法による減免」の要件

    災害減免法による所得税の減免を実際に受けられるのは、以下の要件を両方満たす納税者のみです。

    • その年の合計所得金額が1000万円以下である
    • 災害(盗難・横領は除く)による住宅・家財の損失金額が時価の2分の1以上である

    なお、ここでいう「損失金額」は、雑損控除で言うところの「差引損失額」です。「保険金などによる補填」を差し引いた金額になります。

    差引損失額の計算式

    「災害減免法による減免」の申請方法

    災害減免法による所得税の減額や免除を受けるには、確定申告書に記入が必要です。また、「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」など、住宅・家財の損害状況が分かる書類を添付する必要があります。

    「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」などを添付する

    住宅・家財の損害状況が明確に分かる書類であれば、とくに書式は指定されていません。参考として、国税庁は以下のような「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」を用意しています。

    被災した住宅、家財等の損失額の計算書

    ただ、このような書類を一人で作成するのが難しい人は、以下の書類を用意して税務署に持参しても構いません。窓口で相談しながら書類作成ができます。

    • 住宅の取得年月、床面積などが分かるもの (売買契約書など)
    • 取得価額の分かるもの (売買契約書など)
    • 修繕費など、災害関連支出の領収証
    • 保険金の受取金額が分かる書類
    • り災証明書の写し (または、被害の状況や損失金額が証明できる書類)
    • 源泉徴収票 (給与所得者の場合)
    • 振込先金融機関の口座番号(申告者名義のもの)がわかる通帳など、印鑑

    確定申告書Bに記入する

    災害減免額の計算ができたら、確定申告書Bの第一表に、「災害減免額」の項目があるので、そこに金額を記入します。間違えて雑損控除の欄に記入しないよう、注意してください。

    令和元年分以降用 確定申告書B 第一表「災害減免額」の記入例

    被災時の住民税について ‐ 災害減免法を適用した場合

    災害減免法による減免は、あくまで所得税に対して適用されるものです。したがって、所得税の減免を申請し、かつ住民税について雑損控除を適用したいときは、住んでいる自治体に対し、別途申請が必要になります。

    上記の申請を行うには、所得税の確定申告と同様、「市県民税申告書」に記入する必要があります。提出先は税務署ではなく、市役所などの税務課です。役所やウェブサイト等で書類を手に入れて、期限(大抵は3月15日)までに提出しましょう。

    東京都大田区の例 ‐ 特別区民税・都民税申告書

    表面 裏面

    特別区民税・都民税申告書 表面
    特別区民税・都民税申告書 裏面 - 雑損控除の記入欄

    また、自治体によっては、独自に住民税の減免制度を設けているところもあります。これは雑損控除と同時に適用できる場合も多いので、詳しくは各自治体にてご確認ください。

    まとめ ‐ 災害減免法のポイント

    災害減免法と雑損控除のどちらが得かは、損害状況やその人の所得などによるので一概には言えません。結局は、実際に計算してみるのが一番です。ただ傾向として、所得が500万円を超えると、災害減免法による減免が全額でなくなる分、雑損控除の方が得になるケースも多くなります。

    災害減免法と雑損控除の比較表

    災害減免法 雑損控除
    損害の
    原因
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    1. 自然災害
    2. 人為的災害
    3. 害虫など
    4. 盗難
    5. 横領
    資産の
    範囲
    住宅・家財の差引損失額が価額の2分の1以上であるとき 生活に通常必要な資産(住宅・家財・車両)が損害を受けたとき
    所得制限 所得1,000万円以下の人が対象 所得制限なし
    減税・
    控除額
    所得に応じた割合を所得税から減免する

    • 全額免除 → ~500万円
    • 50%軽減 → 500~750万円
    • 25%軽減 → 750~1,000万円
    いずれか多い方の金額を所得から控除する

    • 差引損失額 - 所得金額の10%
    • 災害関連支出の金額 - 5万円
    繰り越し 適用年のみ減免される その年に控除しきれない分は最大で3年繰り越せる
    対象の
    税金
    所得税にだけ適用される 所得税・住民税に適用される

    「~」は「超~以下」

    「所得税に災害減免法、住民税には雑損控除」という形で税金を減らすには、「市県民税申告書」などを自治体に提出する必要があります。また、住んでいる自治体に独自の災害減免条例などがあれば、それも申請しましょう。

    災害減免法と雑損控除の両方に言えることですが、被害の証拠や計算過程がわかるものは、他の領収書などと同様に7年間保管しておきましょう。そうすれば、万が一税務調査が入ったとしても安心です。