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給与所得 – 給与収入から給与所得をもとめる方法

更新日: 2022/09/30
給与所得 – 給与収入から給与所得をもとめる方法

勤務先から受け取る給与・賞与などは「給与所得」に分類されます。給与所得の金額は源泉徴収票に記載されているので、大抵の場合は自分で計算する必要はありません。ただし、複数の勤務先から給与を得ている場合など、計算が必要になるケースもあります。

INDEX

目次

    給与所得とは

    「給与所得」とは、勤務先から受け取った給与・賞与などの「給与収入」から「給与所得控除」を差し引いたものです。所得税などの税金は、「給与収入」ではなく、この「給与所得」の金額をもとに計算されます。

    給与所得とは給与収入から給与所得控除を差し引いたもの

    給与所得控除」は、給与収入にだけ適用される控除です。給与収入の金額に応じて、異なる控除額が設定されています。これについては、ひとまず給与収入から差し引く計算上の金額と考えておきましょう。

    なお、ここでいう給与収入や給与所得は、いわゆる「額面」や「手取り」とは別モノです。給与に関する用語を整理すると、下表のようになります。

    給与収入 年間の給与・賞与・一部の手当などの合計金額
    源泉徴収票の「支払金額」部分
    給与所得 給与収入から給与所得控除を差し引いた金額
    源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」部分
    額面 給与・賞与・手当などの合計金額
    額面月収:給与明細の「総支給額」部分
    額面年収:1年分の額面月収
    手取り 税金や保険料が天引きされた後の、実際に口座へ振り込まれる金額
    手取り月収:給与明細の「差引支給額」部分
    手取り年収:1年分の手取り月収

    給与の「額面」には、給与収入にカウントしない手当(通勤手当・出張手当など)も含まれているのです。これについては、後ほど詳しく整理しています。

    給与所得は「源泉徴収票」で確認できる

    ひとつの勤務先からしか給与を得ていない場合、給与所得は「源泉徴収票」で確認できます。したがって、ほとんどの人は自分で計算する必要がありません。源泉徴収票は年末に勤務先から交付されるのが一般的です。なくしてしまった場合でも、再発行が可能です。

    給与収入と給与所得はどこか - 源泉徴収票

    もし2ヶ所以上の勤務先から給与を受け取っている場合、「給与収入」はすべての勤務先の分を合計して考えましょう。このような場合は、まず合計してから、後ほど説明する手順にしたがって「給与所得」を求めることになります。

    自分で計算が必要なケース

    下記のような人は、源泉徴収票で自分の給与所得を確認できません。したがって、給与所得の金額は、自分で求めることになります。

    • 2ヶ所以上の勤務先から給与を受け取っていて、確定申告が必要な人
    • 年の途中で退職して、年末調整を受けられなかった人

    いずれの場合も「給与収入」が660万円未満かそれ以上かによって、「給与所得」の求め方が変わってきます。

    ① 給与収入が660万円未満 ② 給与収入が660万円以上
    給与収入を「別表第五」にあてはめて、対応する給与所得を確認する 自分で給与所得控除の額を計算して、給与収入から差し引く

    先述のとおり、2ヶ所以上から給与を受け取っている人は、すべての勤務先から得た給与収入の合計額をこの「660万円」の基準に照らし合わせます。それぞれの勤務先から受け取った源泉徴収票の「支払金額」部分を合計して確認しましょう。

    計算方法① 給与収入が660万円未満

    「給与収入」が660万円未満の場合、自分の給与収入を国税庁の「所得税法 別表第五」にあてはめることで、「給与所得」の金額を確認できます。

    所得税法 別表第五 ※一部抜粋

    給与所得の確認方法 - 所得税法別表第五

    令和4年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(国税庁)

    表内の「給与等の金額」(赤部分)は「給与収入」、「給与所得控除後の給与等の金額」(青部分)は「給与所得」を指します。この表を見れば、自分の「給与収入」に対する「給与所得」が一目でわかるので、わざわざ計算する必要はないというわけです。

    引用

    …(前略)…給与等の収入金額が660万円未満の場合には…(中略)…所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)により給与所得の金額を求めます。

    タックスアンサー No.1410 給与所得控除 – 国税庁

    計算方法② 給与収入が660万円以上

    「給与収入」が660万円を超える場合、まずは下表にしたがって給与所得控除の金額を求めましょう。その金額を給与収入から差し引けば、「給与所得」が算出できます。

    給与所得控除の求め方 – 令和2年分以降

    給与収入額 給与所得控除額
    850万円~ 195万円
    660万円~850万円 給与収入 × 10% + 110万円

    「~」は「超 ~ 以下」

    計算例

    本業の勤務先から受け取った給与収入が「700万円」、副業の勤務先から受け取った給与収入が「100万」の会社員の場合、給与所得の金額は下記のように求めます。

    700万円 + 100万円 = 800万円(給与収入)
    (800万円 × 10%)+ 110万円 = 190万円(給与所得控除)
    800万円 - 190万円 = 610万円(給与所得)

    給与収入に含まれるもの

    先述の通り、給与収入には給与や賞与のほか、一部の手当が含まれます。給与収入に含まれるものと含まれないものを、それぞれ下記のように分類してまとめました。

    給与収入に含まれる 給与収入に含まれない
    ・給与
    ・賞与
    ・残業手当
    ・休日手当
    ・職務手当
    ・住宅手当
    ・通勤手当
    ・日直手当
    ・宿直手当
    ・出張手当

    >> 給与として課税される・課税されない【一覧表】

    給与収入に含まれない手当についても、一定額以上のものについては、給与収入にカウントされる場合もあります。たとえば、通勤定期代が1ヶ月あたり15万円超にもなれば、超えた部分に関しては給与収入にカウントすることになります。

    このあたりは細かなルールが定められているので、詳しくは国税庁の資料を参考にしてください。そもそも上限を超えないように支給している会社も多いです。

    確定申告の提出書類

    ほとんどの会社員は会社の年末調整で事足りるので、自分で確定申告をする必要がありません。しかし、以下のようなケースでは確定申告が必要となります。

    確定申告が必要となる主なケース

    確定申告の義務がある人 還付申告をしたほうがよい人
    ・2ヶ所以上から給与を受け取っている*
    ・給与の他に、事業所得や雑所得などを得ている*
    ・給与収入が2,000万円を超える
    ・年末調整で申請し損ねた所得控除がある
    ・年末調整では対応できない控除がある
    (医療費控除・住宅ローン控除など)

    *上記に該当しても申告不要となる場合も

    給与所得に関する情報は、源泉徴収票を見ながら確定申告書類へ記入します。このとき、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、初心者でも簡単に作成できるのでオススメです。

    主な提出書類(会社員の場合)

    2022年分 過去の年分(〜2021年分)
    ・確定申告書(第一表 第二表)
    ・添付書類台紙
    ・確定申告書A or B(第一表 第二表)
    ・添付書類台紙

    *2022年分から確定申告書A・Bの区別がなくなった。

    添付書類が必要な場合は「添付書類台紙」に貼り付けて、申告書と一緒に提出します。ちなみに、源泉徴収表の添付は、2019年4月1日以降に提出する申告書から不要となっています。

    まとめ

    給与所得の金額は、基本的に源泉徴収票を見れば確認できます。ただ、2ヶ所以上から給与を得ている人や、年の途中で退職して年末調整が受けられなかった人などは、自分で計算しなくてはなりません。

    給与所得の概要

    課税方法 総合課税
    求め方 給与所得 = 給与収入 – 給与所得控除 (原則)
    給与収入660万円未満:給与収入を別表第五にあてはめる
    給与収入660万円以上:原則に基づき計算する
    給与収入に含まれる
    ものの例
    ・給与
    ・賞与
    ・残業手当
    ・休日手当
    ・職務手当
    ・住宅手当
    給与収入に含まれない
    ものの例
    ・通勤手当
    ・日直手当
    ・宿直手当
    ・出張手当

    普通は会社が負担するような費用(通勤費や転勤費など)を個人が負担した場合は、給与収入から「特定支出控除」も差し引けます。とはいえ、該当するケースはそう多くないので、あまり気にしなくてOKです。

    なお、給与所得は「総合課税」の対象です。ですから、その他の総合課税の所得(事業所得など)と合算した金額に対して、所得税が課されます。たとえば個人事業のかたわらアルバイトもしている人は、事業所得と給与所得の合計金額に対して所得税がかかるというわけです。

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