災害にあった時の経費計上や損害保険金の扱いについて

更新日: 2020/09/15
災害にあった時の経費計上や損害保険金の扱いについて

災害によって事業の資産(固定資産や棚卸資産)を失った場合、その損失額を経費に計上できます。また、損壊した固定資産を修復する際にかかる費用についても「修繕費」として経費計上が可能です。

INDEX

目次

    台風や地震の被害に遭ったら

    豪雨や台風、地震といった災害に見舞われた際、主に以下のような費用は必要経費に計上できます。

    • 固定資産や棚卸資産(商品や原材料など)が滅失、損壊したときの損失額
    • 被害を受けた固定資産の原状回復にかかる費用(補強工事含む)
    • 損壊した資産を取り壊したり除去したりするためにかかる費用
    • 土砂など障害物を除去するためにかかる費用
    • 被害を受けた従業員やその親族に対して支給する災害見舞金

    >> 災害に関する主な税務上の取扱いについて – 国税庁

    本記事では、上記のうち事業用資産(固定資産や棚卸資産)の損害にまつわる会計処理について、具体例を用いてわかりやすく解説していきます。

    生活に必要な資産への損害は「控除」

    災害による損失が必要経費に計上できるのは、事業に関係するものだけです。事業には関係のない、生活用の資産が損害を受けても必要経費にはできません。しかし、その場合「雑損控除」を受けられます。

    雑損控除と災害損失の違い

    仕訳例① 事業用資産が損害を受けたとき

    災害によって固定資産や棚卸資産が損害を受けたとき、その損失額を必要経費に計上できます。このとき、もし損害保険金によって損失額を補てんしたら、補てんしきれなかった分だけが経費計上できる金額となります。

    引用

    災害又は盗難若しくは横領により居住者の有する山林について生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

    所得税法 第51条 第3項(資産損失の必要経費算入)

    固定資産を処分した場合

    たとえば、工具器具備品として減価償却中だったデスク(未償却分は7万円)を廃棄処分したら、その7万円を損失額と考えます。この損失額は、以下のように「災害損失」で記帳します。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 災害損失
    70,000
    工具器具備品
    70,000
    災害によりデスクを廃棄処分

    例外として、一括償却資産は、必ず3年で償却します。たとえば、一括償却資産を取得した年に被災して資産を処分しても、残りの2年分をその年の経費に計上することはできません。

    棚卸資産が損害を受けた場合

    商品などの棚卸資産についても、固定資産と同様に損失額を「災害損失」などの勘定科目で経費計上します。

    棚卸資産が滅失か販売不可能と判断できる場合は「被災直前の帳簿価額の全額」を損失額とします。損壊により以前の価格では販売できない、もしくは販売するために再加工が必要な場合は、帳簿価額の再評価を行ってその差額を損失額にできます。

    損害を受けた棚卸資産の損失額はその状態によって異なる

    仕訳例② 損害を受けた資産を修繕するとき

    災害により損壊した固定資産を直すためにかかる費用は「修繕費」として経費に計上できます。修繕費とは、固定資産を修理・改良する際にかかる経費の勘定科目です。

    引用

    法人が、災害により被害を受けた固定資産(以下「被災資産」といいます。)について支出する次のような費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、次のとおりとなります。
    ① 被災資産についてその原状を回復するための費用は、修繕費となります。
    (中略)
    なお、これらの取扱いは、事業を営む個人においても同様となります。

    災害に関する主な税務上の取扱いについて (2) 復旧のために支出する費用 – 国税庁

    以下は、豪雨の影響により浸水した店舗の原状回復費用100万円を事業用口座から振り込んだときの仕訳例です。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 修繕費 1,000,000 普通預金 1,000,000 店舗の修繕費

    これだけ金額が大きいと「減価償却が必要では?」と心配になるかもしれません。ですが、今回は災害による被害であることが明らかで、かつ被災前と同等の状態に戻す原状回復が目的です。そのため、国税庁の通達に従えば、上記の仕訳でOKというわけです。

    被災時における「修繕費」と「資本的支出」

    通常、修繕費は原状回復にかかった費用しか認められず、修理前よりもグレードアップさせた場合は「資本的支出」とみなされ、減価償却をすることになります。

    仕訳例③ 損害保険金を受け取ったとき

    火災保険や地震保険などの損害保険に加入していると、被害を受けた際に保険金が支払われます。このような保険金は、原則的には課税されませんが、なかには課税の対象になるものもあります。

    引用

    損害保険金を受け取る場合も、保険料の負担者や支払原因によって課税関係が異なってきますが、保険を掛けていた人が建物の焼失や身体の傷害・疾病を原因として受け取る保険金には、原則として課税されません。
     しかし、例えば、事業者の店舗や商品が火災で焼失した場合、焼失した商品の損害保険金は事業収入(売上げ)になります。
     また、焼失した店舗の損害保険金は店舗の損失額を計算する際に、差し引くことになります。

    保険と税 損害保険 – 国税庁

    建物の焼失に対する損害保険金は課税されません。これは損失を補てんするためのものだからです。非課税の保険金が事業用口座に入金された場合には、以下のように「事業主借」で記帳すればよいです。

    災害による保険金50万円が事業用口座に振り込まれた

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 普通預金 500,000 事業主借 500,000 損害保険金

    仕訳例①で述べたとおり、損害保険金によって損失を補てんしたら、補てんしきれなかった分を経費計上します。

    あるいは、火災によって商品(棚卸資産)が消失したとします。これについての損害保険金は課税対象になります。こちらは利益を補てんする性質のものだからです。この消失した商品に対する保険金は、以下のように帳簿づけします。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 普通預金 500,000 雑収入 500,000 損害保険金(商品)

    生活に必要な資産の損害は? – 雑損控除 or 災害減免法

    災害によって、生活に必要な住宅・家財に損害があった場合は「雑損控除」か「災害減免法による所得税の軽減免除」のどちらかで、有利なほうを受けられます。所得税において、この両方を適用することはできません。

    雑損控除 災害減免法
    資産の範囲 生活に通常必要な資産(住宅・家財・車両)が損害を受けたとき 住宅・家財の差引損失額が価額の2分の1以上であるとき
    所得制限 所得制限なし 所得1,000万円以下の人が対象
    減税・控除額 いずれか多い方の金額を所得から控除する

    ・差引損失額 - 所得金額の10%
    ・災害関連支出の金額 - 5万円

    所得に応じた割合を所得税から減免する

    ・全額免除 → ~500万円
    ・50%軽減 → 500~750万円
    ・25%軽減 → 750~1,000万円

    繰り越し その年に控除しきれない分は最大で3年繰り越せる 適用年のみ減免される
    対象の税金 所得税と住民税 所得税のみ

    「~」は「超~以下」

    どちらも、“生活に必要な”住宅や家財などの損害についてフォローする制度です。事業に関係する資産の損失額については前述のとおり、必要経費に計上することが税法で定められています。

    雑損控除と災害減免法、どちらのほうが有利かは状況によって異なります。ざっくりと試算してみて、より条件の良いほうを選ぶといいでしょう。
    >> 雑損控除と災害減免法の違いについて詳しく

    確定申告の期限は延長できる?

    確定申告は、原則2月16日~3月15日の間に行うことになっています。しかし、災害のようなやむを得ない状況下では、確定申告期限が延長されることがあります。

    引用

    災害など納税者の責めに帰さないやむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出又は納付等の期限までに、これらの行為をすることができないと認められるときは、その理由がやんだ日から2か月以内に限り、その期限が延長されます。

    災害等による期限の延長 – 国税庁

    自然災害によってあちこちで道路が寸断されているなど、とても確定申告どころではない地域については、国税庁長官がその地域・期日を指定して期限を延長することがあります(地域指定による期限延長)。

    まとめ

    災害により事業の資産が損害を受けた場合、その損失や修理にかかった金額は災害があった年の必要経費に計上できます。

    経費計上できる金額 勘定科目の例
    固定資産 処分した場合 未償却分の金額 災害損失
    修繕した場合 修繕にかかった費用(補強工事含む) 修繕費
    棚卸資産 販売不可能な場合 被災前の帳簿価額全額 災害損失
    以前の価格では
    販売できない場合
    被災前の帳簿価額 - 再評価した価格 災害損失

    保険会社などから支払われる損害保険金は、原則として所得税が課税されませんが、課税対象になるものもあります。基本的には、損失を補てんする性質のものは非課税、利益を補てんする性質のものは課税と考えておきましょう。

    事業用資産に関する損害保険金の扱い

    損失の補てんになる保険金 利益の補てんになる保険金
    固定資産(建物や機械など)に対する保険金 棚卸資産(商品や材料など)に対する保険金
    所得税 非課税 課税
    仕訳 記帳するなら「事業主借」 「雑収入」で記帳

    なお、事業用資産に関して損害保険に加入している場合は、その支払った保険料を「損害保険料」として経費に計上できます。