個人事業主が納める税金は、すべてが必要経費として扱えるわけではありません。本記事では、必要経費の観点から税金を4つに分類しました。それぞれの代表例として個人事業税・所得税・自動車税・消費税を挙げ、複式簿記における記帳例をまとめています。
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目次
どの税金が必要経費として扱える?
納付する税金には、必要経費として処理できる税金と、そうでない税金があります。個人事業主が納めることがある税金のうち、代表的なものを以下にピックアップしました。
全額を経費にできる | 一切経費にできない | 事業に関する割合 だけ経費にできる |
経理方式によって 異なる |
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個人事業税や自動車税など、必要経費として処理できる税金を納めるときは、基本的に「租税公課」の勘定科目を使います。
必要経費として処理できない税金は、仕訳不要です。もし事業用のお金を使って納付した場合には、「事業主貸」の勘定科目を利用して帳簿づけすればOKです。
消費税は経理方式によって異なる
消費税を税務署に納付するのは、納付義務がある課税事業者だけです。「税込経理方式」で帳簿づけをする場合、納付税額を必要経費に計上します。一方「税抜経理方式」の場合は、必要経費ではなく「未払消費税」など消費税特有の勘定科目で記帳します。
>> 税込経理方式と税抜経理方式の違い【個人事業の消費税】
仕訳例① 個人事業税 – 全額を必要経費にできる税金
個人事業税
個人事業税は、法定業種の”事業”に対して課される税金なので、全額を必要経費として処理できます(仕訳例③で家事按分の話をしていますが、100%事業用途のものにかかる税金も、基本的に全額を必要経費に計上できます)。
【仕訳例】個人事業税を現金で納付する場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
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20XX年8月21日 | 租税公課 100,000 | 現金 100,000 | 個人事業税納付 |
上は、個人事業税10万円を現金で納付する際の仕訳例です。ちなみに、勘定科目「租税公課」は、納める税金(=租税)だけでなく、商工会費のような公的な負担金(=公課)に対しても使用します。
仕訳例② 所得税 – 一切必要経費にできない税金
所得税、住民税、国民年金保険料、国民健康保険料、相続税、贈与税、延滞税、加算税
必要経費として扱えない税金でも、事業用の口座から納付すると、通帳に出金履歴が残ってしまいます。そこで、その使途を明確にしておくために「事業主貸」の勘定科目で処理します。
>> 所得税について詳しく
【仕訳例】所得税を事業用口座から納付する場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月21日 | 事業主貸 100,000 | 普通預金 100,000 | 所得税納付 |
上記は事業用の口座から所得税を納付した場合の仕訳例です。「事業主貸」は、個人事業に特有の科目で、事業用のお金をプライベートに使用した場合などに用います。
所得税の還付金を事業用口座で受け取った場合は?
確定申告の結果、納税ではなく還付金を受け取れるケースがあります。還付金が振り込まれる口座は任意に指定できるのですが、これを事業用口座に設定した場合は、以下のように「事業主借」の勘定科目で処理をします。
【仕訳例】所得税の還付金を事業用口座で受け取った場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月10日 | 普通預金 10,000 | 事業主借 10,000 | 所得税の還付金 |
仕訳例③ 自動車税 – 一定の割合だけ必要経費にできる税金
自動車税、固定資産税、不動産取得税、印紙税、利子税
自動車税は、事業・プライベートの両方で同じ自動車を利用している場合、事業用に使用している割合だけを必要経費として計上します。このように、明確に事業だけで使用しているといえない場合は、家事按分をします。
家事按分の割合を設定する方法はさまざまですが、今回は走行距離をもとに按分比率を算出する方法で説明していきます。
事業で実際に走行した距離が全体走行距離の40%にあたる場合、この40%を按分比率とします。納める自動車税が36,000円なら、その40%(14,400円)は「租税公課」で、残りの60%(21,600円)は「事業主貸」で記帳します。
【仕訳例】自動車税を事業用口座から振替納付する場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月31日 | 租税公課 14,400 | 普通預金 36,000 | 自動車税納付 |
事業主貸 21,600 | 家事使用分 |
事業だけで使用している自動車があれば、これにかかる自動車税については家事按分をすることなく、全額を租税公課として処理できます。ただ、少しでもプライベートで利用しているのであれば、家事按分するのが原則です。
仕訳例④ 消費税(税込経理方式の場合)
消費税については「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2種類の記帳方式があります。簡単にいうと、帳簿づけを税込価格と税抜価格のどちらで行うのか、事前に統一しておかないとダメということです。なお、免税事業者は「税込経理方式」です。
税込経理方式 | 税抜経理方式 | |
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概要 | 売上金額や仕入金額などに消費税を含めて計上する方法 | 売上金額や仕入金額などに消費税を含めず、分けて計上する方法 |
事業者 |
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税込経理方式では、納付する消費税を必要経費として処理します。本記事では、税込経理方式における仕訳例のみ紹介します。仕訳する際に使う勘定科目は「租税公課」です。
【仕訳例】消費税を現金で納付する場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年3月30日 | 租税公課 500,000 | 現金 500,000 | 消費税納付 |
基本的には、消費税の申告書を提出した日に必要経費として計上します(つまり、前年分の消費税は、当年分の必要経費になる)。ただ、前年に「未払消費税等」としてすでに計上していれば、前年分の必要経費として扱えます(決算仕訳)。
>> 消費税の課税・非課税って何? – 個人事業の消費税入門
まとめ – 税金の仕訳に関するポイント
「個人事業税」などの税金は、必要経費として処理することができます。ただし「所得税」や「住民税」のように、必要経費として扱えない税金もあります。
納付する税金を記帳する際のポイント
- 必要経費として計上できる税金の勘定科目は「租税公課」
- 必要経費として計上できない税金を納付した際、記帳する必要はない
- 事業用のお金から納付した場合は「事業主貸」で記帳すればOK
- 事業とプライベートの両方に関係している税金は、家事按分をする
- 消費税は税込経理方式なら「租税公課」、税抜経理方式なら「未払消費税等」
税金の納付方法は、税務署や銀行の窓口で現金納付する方法や、インターネット上でクレジットカード決済をする方法など、さまざまです。詳しくは以下のリンクをご参照ください。