個人事業主・フリーランス向けに、地代家賃についてわかりやすく解説します。事務所の賃料や管理費は「地代家賃」の勘定科目で経費計上できます。自宅兼事務所の家賃も、家事按分で一部を経費にできます。
目次
個人事業主の地代家賃とは?
事務所の家賃や管理費は「地代家賃」の勘定科目で必要経費に計上できます。自宅兼事務所の家賃についても、家事按分で一部を経費にできます。
地代家賃の具体例
- 事務所や店舗の家賃、管理費
- 自宅兼事務所の家賃の一部(家事按分)
- 20万円未満の礼金、更新料、権利金
- レンタルオフィス、シェアオフィスなどの料金
- 倉庫、トランクルームなどの賃料
- 月極駐車場などの賃料
- 土地の賃料
※ 20万円以上の礼金等は「繰延資産」として処理する
ちなみに、事務所などを借りる際の「敷金」や「保証金」は、いずれ返ってくるお金なので、支払い時には経費計上できません。(敷金等の仕訳方法は記事の後半で解説しています)
「賃借料」や「支払手数料」との違い
「地代家賃」は金額が大きくなりがちな勘定科目なので、必要以上に使っていると税務署に目をつけられてしまいます。そのため、以下のような費用については、「地代家賃」以外の適切な勘定科目を使って仕訳しましょう。
費用の例 | 適切な勘定科目 |
---|---|
機械や器具のレンタル料 | 賃借料 |
会議スペースなどの一時的な利用料 | |
不動産業者に支払う仲介手数料 | 支払手数料 |
コインパーキングなどの一時的な利用料 | 旅費交通費 |
地代家賃と「賃借料」の使い分け
「賃借料」は、パソコンやコピー機のリース料などに用いられる勘定科目です。決算書には載っていませんが、一般的によく使われています。レンタルオフィスなどの料金は通常「地代家賃」で計上しますが、一時的に利用するだけなら「賃借料」を使うのが妥当です。
地代家賃と「支払手数料」の使い分け
事務所を借りる際など、不動産業者に支払う仲介手数料は「支払手数料」の勘定科目で経費に計上します。家賃や礼金などと同時に支払う場合が多いですが「地代家賃」とは区別しましょう。
地代家賃と「旅費交通費」の使い分け
出先で一時的に利用するコインパーキング等の料金は「旅費交通費」として経費に計上します。月極駐車場などで継続的な費用がかかる場合のみ、「地代家賃」の勘定科目を使いましょう。
地代家賃の消費税区分
「地代家賃」の消費税区分は、基本的に「課税」です。ただし、支出の内容によって「非課税」の場合もあります。
課税 | 非課税 |
---|---|
|
|
住居用物件の家賃には、消費税がかかりません(非課税)。ただし、事務所利用を前提とした契約なら、消費税がかかることになっています。
土地の賃料は場合によって消費税区分が異なる
契約期間が1ヶ月以上の土地の場合、賃料の消費税区分は基本的に「非課税」です。ただし、ここで言う「土地」とは、区画分けなどの整備がされていない「まっさらな土地」のこと。区画分けがされた駐車場などの場合、賃料の消費税区分は「課税」です。
>> 消費税の課税・非課税って何? – 個人事業の消費税入門
地代家賃の仕訳方法
仕訳例① 基本的な記帳方法
たとえば、翌月分の事務所家賃(管理費込み)20万円を、普通預金からの振替で支払う場合、複式簿記では以下のように記帳します。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年9月27日 | 地代家賃 200,000 | 普通預金 200,000 | 10月分の 事務所家賃 |
複式簿記とは、55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるために必要な記帳方式のこと。単式簿記の場合は、以下のように記帳すればOKです。
単式簿記の記帳例
日付 | 地代家賃 | 摘要 |
---|---|---|
20XX年9月27日 | 200,000 | 10月分の 事務所家賃 |
仕訳例② 自宅兼事務所の家賃を家事按分する場合
プライベートと事業の両方に関わる支出については、「事業用に使っている」と客観的に認められる部分だけ、経費として計上できます。この仕組みが「家事按分」です。自宅兼事務所の家賃や、公私で使う月極駐車場の賃料などが該当します。
たとえば家賃が月10万円の自宅で、床面積の30%を事業用のスペースとして使っている場合は、月々3万円を経費にできるということ。なお、残りの7万円は、事業主の個人的な支出を表す「事業主貸」の勘定科目で処理します。
上記の例の場合、複式簿記では以下のように記帳します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年9月27日 | 地代家賃 30,000 | 普通預金 100,000 | 10月分の家賃 |
事業主貸 70,000 | 10月分の家賃 (家事按分) |
仕訳例③ 年をまたいで家賃を前払いする場合
翌年の家賃を前払いする場合、原則的には、その金額を今年の経費としては扱えません。そのため、支払い時には家賃をまず「前払費用」という資産の勘定科目に計上します。「前払費用」は、ざっくり言えば「支払ったけどまだ経費には計上しないよ」という意味の勘定科目です。
たとえば、2025年12月に2026年1月分の家賃10万円を口座振替で支払う場合、ひとまず以下のように仕訳をします。
12月時点での記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2025年12月27日 | 前払費用 100,000 | 普通預金 100,000 | 翌1月分の 事務所家賃 |
そして翌年1月になったら、「前払費用」として仕訳しておいた10万円を、以下のようにして「地代家賃」に振り替えます。日付は1月中であればOKですが、こういう場合は月末の日付で振替仕訳をしておくのが一般的です。
翌年1月時点の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2026年1月31日 | 地代家賃 100,000 | 前払費用 100,000 | 1月分の事務所家賃 |
しかし実際のところ、家賃を前払いする場合は、特例的に支払い時に経費計上できるケースがほとんどです(短期前払費用の特例)。これは、年をまたぐときでも同様なので、上記はあくまで原則的な仕訳方法として理解しておきましょう。
「短期前払費用の特例」にもとづいて、支払い時に経費計上する場合、下記のように仕訳すればOKです。
12月時点での記帳例(短期前払費用の特例)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2025年12月27日 | 地代家賃 100,000 | 普通預金 100,000 | 翌1月分の 事務所家賃 |
仕訳例④ 敷金・礼金・仲介手数料などを支払う場合
新たに事務所などの物件を借りる際の費用には、「地代家賃」として経費にできるものとそうでないものが混ざっています。また、敷金や保証金などは、返ってきた際に再度仕訳をする必要があります。
たとえば、事務所用の物件(家賃は月々10万円)を借りる際、敷金・礼金・仲介手数料がそれぞれ家賃1ヶ月分だった場合は、以下のように仕訳をします。なお、翌月分の家賃も同時に支払ったものとします。
事務所を借りる際の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2025年3月23日 | 地代家賃 200,000 | 普通預金 400,000 | 4月分の事務所家賃 礼金 |
支払手数料 100,000 | 仲介手数料 | ||
敷金 100,000 | 敷金 |
上記の例では、翌月分の家賃と礼金のみ「地代家賃」に計上しています。仲介手数料は「支払手数料」として経費に、敷金は「敷金」などの勘定科目で資産に計上しましょう。
また敷金に関しては、退去時などに返還された金額を改めて仕訳します。たとえば、敷金10万円のうち6万円がクリーニング費用などに使われ、残りの4万円が返ってきた場合は以下のように記帳します。
敷金が返ってきた際の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2027年4月11日 | 普通預金 40,000 | 敷金 100,000 | 敷金の返還 |
修繕費 60,000 | クリーニング費用 |
上記のように、敷金のうちで物件の原状回復などに使われた分は「修繕費」という勘定科目で経費に計上できます。
敷金・礼金・保証金などの仕訳方法を詳しく
確定申告書類の書き方(地代家賃の内訳)
確定申告で提出する決算書には「地代家賃の内訳」という欄があります。白色申告では「収支内訳書」の2ページ目、青色申告では「青色申告決算書」の3ページ目にあります。
収支内訳書(白色申告) | 青色申告決算書(青色申告) |
---|---|
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この欄には、それぞれ以下のような内容を記入します。なお「収支内訳書」も「青色申告決算書」も、ここで記入する内容は同じです。
記入欄 | 記入内容 |
---|---|
支払先の住所・氏名 | 大家さんや不動産会社の住所と名前 |
賃貸物件 | 借りている物件の用途(事務所、店舗、駐車場など) |
本年中の貸借料・ 権利金等 |
「権更」…本年中に支払った礼金や権利金、更新料の合計金額 「賃」……本年中に支払った家賃などの合計金額 |
必要経費算入額 | 本年中に支払った家賃、礼金などのうち経費にする金額 (自宅兼事務所などの場合は、按分した後の金額) |
「必要経費算入額」に記入するのは、支払った賃料、礼金、更新料などの合計額です。敷金や保証金は、そもそも経費にならないので記入しません。また、仲介手数料についても、基本的に「支払手数料」の勘定科目で仕訳をするため記入は不要です。
地代家賃に関する疑問まとめ【Q&A】
- 自宅で仕事をしている場合も家賃を経費にできる?
- 自宅件事務所の場合は、家賃を家事按分して、事業用に使っている割合だけを経費に計上できます事業専用の物件でない限り、全額を経費にすることはできません。
- 地代家賃と賃借料の違いは?
- 一般的に「地代家賃」は土地や建物の賃料、「賃借料」は機械や器具などのレンタル料を指します。家賃や管理費は「地代家賃」で仕訳しましょう。
- レンタルオフィスの賃料は地代家賃?賃借料?
- 継続的な契約なら「地代家賃」、一時的な利用なら「賃借料」で仕訳するのが一般的です。ただ、少額であればどちらで仕訳しても大きな問題はありません。
- 駐車場代は「地代家賃」に入る?
- 事業用の駐車場代は地代家賃に含まれます。ただし、出先で利用した駐車場の料金は「旅費交通費」に分類するのが一般的です。
- 敷金や保証金も「地代家賃」に含められる?
- 敷金や保証金は「地代家賃」では仕訳せず、いったん資産計上します。退去時に返還されなかった金額については、「修繕費」などの勘定科目で経費計上できます。
まとめ
事務所・店舗・駐車場などを借りる際の費用は、「地代家賃」として経費に計上します。仕訳の際に気をつけるべきポイントは以下のとおりです。
地代家賃の重要ポイント
- 賃料だけでなく、管理費や礼金、更新料なども「地代家賃」に含めてOK
- 地代家賃の消費税区分は基本的に「課税」
- 自宅兼事務所などの家賃は、適切な割合なら「家事按分」ができる
- 敷金や保証金など、いずれ返ってくるお金はひとまず資産に計上する
- 敷金の返還時に修繕費用などが引かれたら、その金額を経費にする
- 翌年の賃料を前払いする場合は「前払費用」として資産に計上する
- 前払いした家賃は、基本的に支払った日付で「地代家賃」に計上してOK
なお、以下のような費用には「地代家賃」以外の勘定科目を用いるのが妥当です。
地代家賃に当てはまらない費用 | 該当する勘定科目 |
---|---|
会議スペースなどの一時的な利用料 | 賃借料 |
機械や器具のレンタル料 | |
不動産業者に支払う仲介手数料 | 支払手数料 |
コインパーキングなどの一時的な利用料 | 旅費交通費 |
確定申告で提出する決算書には「地代家賃の内訳」を記入し、税務署のチェックを受けます。会計内容を明瞭にするためにも、必要以上に「地代家賃」の勘定科目を使わないよう注意しましょう。