個人事業主の白色申告では、主に「収支内訳書」と「確定申告書」の提出が必要です。収支内訳書は2ページ構成で、収入や経費の内訳などを記入します。この記事では、1ページ目の書き方について詳しく説明していきます。
INDEX
目次
収支内訳書を記入する前に
収支内訳書は、白色の確定申告で提出する書類の1つです。この記事では2023年の確定申告期間に提出する、2022年分(令和4年分)の書き方で説明します。
収支内訳書1ページ目 | 収支内訳書2ページ目 |
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ちなみに、収支内訳書には「農業所得用」と「不動産所得用」もありますが、これらを使うのは農業による所得や不動産所得を得ている人だけです。その他の場合は「収支内訳書(一般用)」を使います。
確定申告書類はインターネット上でも作成できる
収支内訳書や確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でも作成できます。操作が簡単なうえに、そのままオンラインで「電子申告」もできるのでオススメです。
1. 日付・所得の種類
以下のように年号や日付を記入します。左下の選択欄は、事業所得の申告を行う個人事業主は「営業等」、雑所得の申告をする副業ワーカーなどは「雑(業務)」に○をつけます。
令和0□年分収支内訳書
確定申告の対象となる期間の年号を記入します。2021年分の確定申告(2022年2月16日~3月15日に行う確定申告)では、「令和03年」と記入しましょう。
令和 年 月 日
左側の日付欄には、収支内訳書の提出日を記入します。令和4年(2022年)に提出するなら「令和4年○月○日」と書きましょう。
自□□月□□日 至□□月□□日
中央の日付欄には、確定申告の対象となる期間を記入します。個人事業の会計期間は原則1月1日~12月31日となので、「自□1月□1日 至12月31日」と記入すればOK。ただし、新規開業した年分の確定申告は「自」を開業日の日付にします(「至」は12月31日)。
2. 事業主と事業に関する情報
事業主の個人情報や、事業に関する情報を記入します。右側の「依頼税理士等」の欄は確定申告を代行する税理士が記入する部分なので、自分で確定申告をする場合は空欄にしておきましょう。
住所 | 自宅や自宅兼事務所など、事業主が住んでいる場所の住所 住民票の住所に関わらず、実際に住んでいる現住所を記入する |
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事業所所在地 | 店舗や事務所など、事業を行っている場所の住所 自宅で仕事をしている場合は「同上」と記入する |
業種名 | 営む業種の名称 例:小売業・飲食サービス業・広告業・建設業・製造業など |
屋号 | 個人事業の「屋号」(会社名のようなもの) とくに決めていなければ空欄でよい |
氏名 | 事業主の氏名 ※2021年4月1日以降は押印不要 |
電話番号 | 自宅と事業所の電話番号(自宅兼事務所なら自宅のみで可) 携帯電話の番号でもOK |
加入団体名 | 帳簿づけや確定申告に関して指導を受けた組合や協会の名称 どこからも指導や講習を受けていなければ空欄 |
依頼税理士等 | 確定申告を代行する税理士の情報 代筆する税理士が記入するため、事業主が記入することはない |
3. 収入金額
この欄では、1年の間に事業で得た収入金額などの合計を計算します。ちなみに「家事消費」とは、事業で扱う商品(製品)をプライベートで使ったりすることです。そもそも商品の仕入れなどが無い業種の場合、②の項目は関係ありません。
売上(収入)金額 | ① | 1年間の事業で得た売上(収入)の金額 |
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家事消費 | ② | 私的に使用した事業用商品などの仕入価格の合計 例:飲食業の事業主が余った食材を自分で食べる場合など |
その他の収入 | ③ | 本業以外で得た、金額の小さな収入 例:取引先からのキャッシュバック、空箱の売却代金など |
計 | ④ | ①~③の合計金額(① + ② + ③) |
※家事消費の金額は、商品などの販売価格から算出することもある
「その他の収入」には、通常の売上とは呼べないような収入の合計額を記入します(雑収入)。たとえば、事業所に光回線のインターネットを開通してキャッシュバックを受けとった場合は、そのお金を「その他の収入」に含めます。
新型コロナ関連の「一時支援金」や「月次支援金」を得た場合は、ここにその金額を加算しましょう。
4. 売上原価
この欄では、在庫の増減や仕入金額から「売上原価」を計算します。売上原価とは、ざっくり言うと「売れた商品の仕入れにかかった金額」のこと。コンサル業やウェブデザイン業など、仕入れをしない業種の場合は、⑩に④と同じ金額を記入するだけでOKです。
期首商品(製品) 棚卸高 |
⑤ | 1月1日時点で在庫として持つ商品の総額 年の途中で開業した場合は、その時点での総額 |
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仕入金額 (製品製造原価) |
⑥ | 1年間の仕入金額の合計 |
小計 | ⑦ | ⑤と⑥の合計金額(⑤ + ⑥) |
期末商品(製品) 棚卸高 |
⑧ | 12月31日時点で在庫として持つ商品の総額 |
差引原価 | ⑨ | ⑦から⑧を差し引いた金額(⑦ – ⑧) |
差引金額 | ⑩ | ④から⑨を差し引いた金額(④ – ⑨) |
5. 経費
1年間に支出した必要経費の金額を、勘定科目ごとに記入します。支出のない科目は空欄で構いません。なお「ヲ」~「タ」の欄には、科目を新たに追加できます。帳簿づけで自作の科目を使っている場合は、空欄に科目名を書き入れましょう。
給料賃金 | ⑪ | 従業員に支払う給料 事業専従者に支払う給料は含めない |
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外注工賃 | ⑫ | 外部の業者などに仕事を依頼した際の費用 例:デザイン発注・業務委託費用・事務代行 |
減価償却費 | ⑬ | 固定資産の購入費用の一部(少しずつ経費計上する費用) 例:高額なパソコン・自動車・機械設備 |
貸倒金 | ⑭ | 売掛金などが回収できなくなった際の損失 例:取引先の倒産で回収不能になった売掛金 |
地代家賃 | ⑮ | 店舗や事務所の賃借料や使用料 例:事務所の家賃・レンタルオフィスの月額料金 |
利子割引料 | ⑯ | 事業用に借り入れをした際の利子など 例:金融機関の支払利息・手形の割引料 |
租税公課 | イ | 事業に関わる税金など 例:個人事業税・固定資産税・収入印紙代 |
荷造運賃 | ロ | 商品などを顧客に届けるための費用 例:段ボール箱・緩衝材・ガムテープ・宅配便代 |
水道光熱費 | ハ | 水道や電気など、事業所に必要なインフラにかかる費用 例:水道代・電気代・ガス代・灯油代 |
旅費交通費 | ニ | 事業上の移動にかかる交通費や宿泊費 例:電車賃・バス代・タクシー代・出張先のホテル代 |
通信費 | ホ | 業務上の通信や郵便にかかる費用 例:インターネット料金・電話代・切手代・はがき代 |
広告宣伝費 | ヘ | 事業の広告や宣伝にかかる費用 例:チラシ・看板・HPの制作費用 |
接待交際費 | ト | 取引先などとの交際費用 例:取引先との飲食代・お中元・お歳暮 |
損害保険料 | チ | 店舗や商品などにかける損害保険の費用 例:自動車保険・火災保険・盗難保険 |
修繕費 | リ | 固定資産を修理した際などの費用 例:パソコンの修理費・自動車の修理費 |
消耗品費 | ヌ | こまごまとした事務用品などの購入費用 例:文房具・伝票・USBメモリ・パソコン(10万円以下) |
福利厚生費 | ル | 従業員の労働環境改善などを目的とした費用 例:健康診断費・慰安旅行費・忘年会費・祝い金 |
(空欄) | ヲ~タ | 帳簿づけで使っている科目が他にあれば記入する (事務用品費・新聞図書費・支払手数料・会議費など) |
雑費 | レ | 他の科目に当てはまらない少額の費用 例:ゴミ処理代・クリーニング代・引越し費用 |
小計 | ⑰ | イ~レの合計金額(自作の科目も含める) |
経費計 | ⑱ | ⑪~⑯の合計に⑰を加えた金額 (⑪ + ⑫ + ⑬ + ⑭ + ⑮ + ⑯ + ⑰) |
「給料賃金」にカウントするのは、従業員に支払った給与の金額のみです。事業専従者の給与や、外部の業者に支払った報酬などは、ここに含めません。また、個人事業の経理では「事業主本人の給与」という考え方もしないので、これも当てはまりません。
「減価償却費」の算出方法については、収支内訳書の2ページ目に記入します。会計ソフトを使っておらず、減価償却費の計算を自力で行う場合は、2ページ目にある「減価償却費の計算」の欄を先に書いたほうがわかりやすいです。
>> 必要経費の一覧 – 白色申告と青色申告の経費
6. 所得金額
この欄では「収入 - 売上原価」の金額(⑩)から、必要経費の合計額を差し引いて、所得金額を求めます。「専従者」がいる場合は、さらに「専従者控除(⑳)」も差し引きます。専従者がいなければ⑳は記入せず、⑲と㉑は同じ金額になります。
専従者控除前の所得金額 | ⑲ | ⑩から⑱を差し引いた金額 (⑩ – ⑱) |
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専従者控除 | ⑳ | 専従者がいる場合に受けられる控除の金額 原則、専従者が配偶者なら86万(その他の親族なら50万) |
所得金額 | ㉑ | ⑲から⑳を差し引いた金額(⑲ – ⑳) |
7. 給料賃金の内訳
確定申告の対象期間中に支払った給料の詳細を、従業員ごとに記入します。従業員を雇っていない場合は、まるごと空欄です。なお、専従者の情報は、ここではなく「事業専従者の氏名等」の欄に記入します。
氏名(年齢) | 従業員の氏名と年齢(年齢は記入時点のもの) 4人以上雇っている場合は「その他」に残りの人数を記入する |
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従事月数 | 1年間のうち働いていた月数 (最高で12ヶ月) ※これまで働いてきた月数の累計ではない |
給料賃金 | 1年間に支払った給料の合計金額 |
賞与 | 1年間に支払ったボーナスの合計金額 |
合計 | 左に記入した給料とボーナスの合計金額 |
所得税及び 復興特別所得税 の源泉徴収税額 |
1年間に源泉徴収をした所得税と復興特別所得税の合計金額 |
延べ従事月数 | 従業員全員の従事月数の合計 例:2人が1年、1人が9ヶ月働いたら「33」(12 + 12 + 9) |
従事月数や給料賃金は、確定申告の対象となる期間中の合計を記入します。つまり、2021年分の確定申告(2022年2月16日~3月15日に行う確定申告)では、2021年中の合計を記入するということです。そのため、1人あたりの従事月数は最高でも12ヶ月です。
8. 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
税理士や弁護士へ報酬を支払っていたら、ここにその詳細を記入します。税理士や弁護士に仕事を依頼していない場合は、何も記入しません。
支払先の住所・氏名 | 報酬などを支払った税理士・弁護士の氏名(事務所名)と事務所の 住所 |
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本年中の 報酬等の金額 |
支払った報酬などの合計金額 |
左のうち 必要経費算入額 |
支払った金額のうち、必要経費に計上する金額 家事按分をしていなければ、左と同じ金額でOK |
所得税及び 復興特別所得税 の源泉徴収税額 |
報酬から源泉徴収をした所得税と復興特別所得税の合計金額 |
9. 事業専従者の氏名等
「事業専従者」がいる場合は、ここに詳細を記入します。専従者にあたる親族がいない場合は、何も記入しません。事業を手伝ってくれている親族のうち、一定の要件を満たす人が「事業専従者」に当たります。
氏名(年齢) | 専従者の氏名と年齢 (年齢は記入時点のもの) |
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続柄 | 事業主との関係 例:夫・妻・子・父・母など |
従事月数 | 1年間のうち働いていた月数 (最高で12ヶ月) ※これまで働いてきた月数の累計ではない |
延べ従事月数 | 専従者全員の従事月数の合計 例:2人の専従者が9ヶ月ずつ働いていたら「18」(9 + 9) |
収支内訳書の1ページ目に記入する内容はここまでです。引き続き、2ページ目も必ず記入します。