個人事業主の青色申告では、主に「青色申告決算書」と「確定申告書」を提出します。本記事では、2023年の確定申告で提出する「2022年分(令和4年分)」の様式を例に、青色申告決算書の記入方法を解説します。
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目次
青色申告決算書の書き方
青色申告決算書(一般用)は4ページ構成で、それぞれに以下の内容を記入します。4ページ目の「貸借対照表」を作成するのは、55万円 or 65万円の青色申告特別控除をねらう場合だけです。
青色申告決算書の書き方【記入内容一覧】
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ほとんどの個人事業主・フリーランスは「一般用」の青色申告決算書を作成します。「農業所得用」と「不動産所得用」は、それらの所得を得ている個人事業主だけが使います。
青色申告対応のクラウド会計ソフトを利用すれば、日々の帳簿づけによって簡単に青色申告決算書が作れます。もし全て手書きで作成するのなら、2→3→1→4ページの順に記入するとスムーズです。
1. 日付
青色申告決算書の1ページ目には、日付を記入する欄が3ヶ所あります。上部の「〜年分」と、左端の「〜年」の年数は一致しないのが普通です。
令和0□年分所得税青色申告決算書
2022年分の確定申告(2023年2月16日~3月15日に行う確定申告)では「令和04年」と記入しましょう。
令和 年 月 日
青色申告決算書の提出日を記入します。令和5年(2023年)に提出するのであれば「令和5年○月○日」と書きましょう。
自□□月□□日 至□□月□□日
確定申告の対象期間の開始日と終了日を記入します。個人事業の会計期間は原則1月1日~12月31日なので、「自□1月□1日 至12月31日」と書きましょう。ただし、新規開業した年分は「自」を開業日の日付にします(「至」は12月31日)。
2. 事業主と事業に関する情報
事業主の個人情報や、事業に関する簡単な情報を記入します。右側の「依頼税理士等」の欄は確定申告を代行する税理士が記入する部分なので、自分で確定申告をする場合は何も記入しません。
各記入欄の書き方
住所 | 事業主が住んでいる場所の住所(自宅や自宅兼事務所) 住民票の住所に関わらず、実際に住んでいる現住所を記入する |
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事業所所在地 | 事業を行っている場所の住所(店舗や事務所など) 自宅兼事務所の場合は「同上」と記入する |
業種名 | 営む事業の種類 例:小売業・飲食サービス業・広告業・建設業・製造業 |
屋号 | 事業で使う「屋号」(会社名のようなもの) とくに決めていなければ記入しない |
氏名 | 事業主の氏名 ※2021年4月1日以降は押印不要 |
電話番号 | 自宅と事業所の電話番号(携帯電話の番号でもOK) 使い分けていなければ片方だけでも可 |
加入団体名 | 帳簿づけや確定申告に関して指導を受けた組合や協会の名前 どこからも指導や講習を受けていなければ記入しない |
依頼税理士等 | 確定申告を代行する税理士の情報 ※事業主本人は記入しない(代筆する税理士が記入する) |
3. 売上(収入)金額
1年間で得た、事業に関わる収入の合計を記入します。
この金額は青色申告決算書2ページ目の「月別売上(収入)金額及び仕入金額」に記入する「売上(収入)金額」の「計」と必ず一致します。つまり、ここには「家事消費」や「雑収入」の金額も含めるということです。
- 「家事消費」とは、事業用の商品や製品をプライベートで消費すること。飲食業者が、余った食材を自分で食べる場合などが当たる。原則として、家事消費をした商品の販売価格分の金額を収入に加える。
「雑収入」には、たとえば新型コロナ関連の給付金などが該当します。該当する収入を得ている場合は、その金額も含めて記入しましょう。
4. 売上原価
この欄では、在庫の増減と1年間の仕入金額から「売上原価(売れた商品の仕入れにかかった金額)」を計算します。プログラマーやライターなど、そもそも仕入れをしない業種なら、⑦に①と同じ金額を記入するだけでOKです。
各記入欄の書き方
期首商品(製品) 棚卸高 |
② | 1月1日時点で在庫として持つ商品の総額 年の途中で開業した場合は、その時点での総額 |
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仕入金額 (製品製造原価) |
③ | 1年間で仕入れた商品の合計金額 |
小計 | ④ | ②と③の合計金額(② + ③) |
期末商品(製品) 棚卸高 |
⑤ | 12月31日時点で在庫として持つ商品の総額 |
差引原価 | ⑥ | ④から⑤を差し引いた金額(④ – ⑤) |
差引金額 | ⑦ | ①から⑥を差し引いた金額(① – ⑥) |
製造業者などで、製造原価の計算を行っている個人事業主は、③に「製品製造原価」を記入します。その場合は、4ページ目にある「製造原価の計算」を先に記入しましょう。ただ、原価計算は義務ではないので、基本的に③は仕入金額でOKです。
5. 経費
1年間に支出した必要経費の金額を、勘定科目ごとに記入します。該当する支出がない部分は空欄で構いません。帳簿づけで自作の勘定科目を使っている場合は、㉕~㉚の欄に書きましょう。
各記入欄の書き方
租税公課 | ⑧ | 事業に関わる税金や公的な負担金 例:個人事業税・固定資産税・収入印紙代・組合費 |
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荷造運賃 | ⑨ | 商品などを顧客に届けるための費用 例:宅配便代・段ボール箱・緩衝材・包装紙 |
水道光熱費 | ⑩ | 水道や電気など、事業所に必要なインフラにかかる費用 例:水道代・電気代・ガス代・灯油代 |
旅費交通費 | ⑪ | 事業上の移動にかかる交通費や宿泊費 例:電車賃・バス代・タクシー代・出張先のホテル代 |
通信費 | ⑫ | 業務上の通信や郵便にかかる費用 例:インターネット料金・電話代・切手代・はがき代 |
広告宣伝費 | ⑬ | 事業の広告や宣伝にかかる費用 例:メディアの掲載費用・HPの制作費用・チラシ |
接待交際費 | ⑭ | 取引先などとの交際費用 例:取引先との飲食代・お中元・お歳暮 |
損害保険料 | ⑮ | 店舗や商品などにかける損害保険の費用 例:火災保険・盗難保険・自動車保険 |
修繕費 | ⑯ | 固定資産を修理した際の費用 例:建物の修理費・パソコンの修理費・自動車の修理費 |
消耗品費 | ⑰ | こまごまとした備品の購入費用 例:オフィス用品・各種伝票・パソコン(10万円以下) |
減価償却費 | ⑱ | 固定資産の購入費用の一部(少しずつ経費計上する費用) 例:高額なパソコン・自動車・機械設備・建物 |
福利厚生費 | ⑲ | 従業員の労働環境改善などを目的とした費用 例:健康診断費・忘年会費・祝い金・慰安旅行費 |
給料賃金 | ⑳ | 従業員に支払う給料 ※事業専従者に支払う給料は含めない |
外注工賃 | ㉑ | 外部の事業者に仕事を依頼した際の費用 例:デザイン発注費・業務委託費用・事務代行費用 |
利子割引料 | ㉒ | 事業用に借り入れをした際の利子など 例:金融機関の支払利息・手形の割引料 |
地代家賃 | ㉓ | 店舗や事務所の賃借料や使用料 例:事務所の家賃・レンタルオフィスの月額料金 |
貸倒金 | ㉔ | 売掛金などが回収できなくなった際の損失 例:取引先の倒産で回収不能になった売掛金 |
(空欄) | ㉕~㉚ | 任意で作った科目があればここに記入する (支払手数料・新聞図書費・会議費・法定福利費など) |
雑費 | ㉛ | 他の科目に当てはまらない少額の費用 例:ゴミ処理代・クリーニング代・引越し費用 |
計 | ㉜ | 経費の合計金額 (⑧ + ㉛) |
差引金額 | ㉝ | 売上原価を除いた収入から経費を差し引いた金額 (⑦ – ㉜) |
「給料賃金」に計上するのは、従業員に支払った給与の金額のみです。事業専従者に支払った給与は、ここに含めません。専従者への給与も収入から差し引けますが、記入するのは「各種引当金・準備金等」の欄(㊳)です。
「減価償却費」の算出過程は、青色申告決算書の3ページ目に記入します。減価償却費の計算を自力で行う場合は、3ページ目の「減価償却費の計算」を先に書きましょう。事業用の固定資産を持っていなければ、この欄は記入不要です。
6. 各種引当金・準備金等
「引当金」や「準備金」に加え、事業専従者に支払った給与の金額を記入します。「引当金」「準備金」とは、ざっくり言うと「発生しそうな支出や損失に備えて、収入から除外しておくお金」のことです(貸倒引当金など)。
繰戻額等
「繰戻額等」の欄には「収入から除外しておいたけど、結局使わなかったお金」の金額を記入します。そもそも、前回の確定申告で引当金や準備金を繰り入れていない場合は、何も記入しません。
貸倒引当金 | ㉞ | 貸倒引当金に繰り入れていたが結局利用しなかった金額 1年間で貸し倒れがなかったら、前回の繰入額と同額を記入 |
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(空欄) | ㉟~㊱ | 前回繰り入れた引当金や準備金が他にもあれば記入する |
計 | ㊲ | 前回繰り入れた引当金や準備金のうち、繰り戻す金額の合計 (㉞ + ㉟ + ㊱) |
繰入額等
「繰入額等」の欄には、新たに計上する貸倒引当金などの金額を記入します。ちなみに、専従者給与もこの欄へ記入することになっていますが、これは引当金や準備金の一種ではありません。
専従者給与 | ㊳ | 1年間で事業専従者に支払った給与の合計金額 専従者が複数いる場合は、全員の給与の合計を記入する |
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貸倒引当金 | ㊴ | 今回、貸倒引当金に繰り入れる金額 2ページ目の⑤と必ず一致する |
(空欄) | ㊵~㊶ | 引当金や準備金が他にもあれば記入する 例:退職給与引当金(稀なケース) |
計 | ㊷ | 繰り入れる引当金などの合計と、専従者給与を合わせた金額 (㊳ + ㊴ + ㊵ + ㊶) |
なお、貸倒引当金の繰入額がある場合は、その詳細を青色申告決算書2ページ目の「貸倒引当金繰入額の計算」の欄に記入します。
7. 所得金額
ここまでで算出した暫定的な所得金額から「青色申告特別控除」を引いて、最終的な所得金額を計算します。控除額がよく分からない場合は、青色申告決算書2ページ目にある「青色申告特別控除額の計算」を先に記入しましょう。
各記入欄の書き方
青色申告 特別控除前の 所得金額 |
㊸ | 引当金や専従者給与を差し引いた所得の金額(㉝ + ㊲ – ㊷) 引当金や専従者給与が無い場合は㉝と同じ金額を記入する |
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青色申告 特別控除額 |
㊹ | 原則「10万・55万・65万」のいずれかの金額 ㊸の金額を超える場合は、㊸と同じ金額を記入する |
所得金額 | ㊺ | 青色申告特別控除を差し引いた最終的な所得金額(㊸ – ㊹) ※マイナスにはならない |
青色申告決算書の1ページ目に記入する内容は以上です。引き続き、2ページ目の記入方法を説明します。